「女主人公たちを縛り続ける「故郷」という異界」ボルベール 帰郷 aiaisanさんの映画レビュー(感想・評価)
女主人公たちを縛り続ける「故郷」という異界
「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」のペドロ・アルモドバル監督の新作。どうしても前2作の流れから期待してしまうが、前2作とは異なる流れの作品である。それは、前2作に見られた「現代という時代性」がないからだと思った。
物語は、主人公ペネロペ・クルスが生活する都会と故郷である田舎(ラ・マンチャという町だそうである)を往復する形で描かれる。この田舎が、まさに時が止まったような田舎で、それこそ幽霊が出てもおかしくないような、「異界」的な舞台として描かれているのである。この田舎町は、監督自身の故郷であるそうである。
ペネロペ・クルスたち女主人公が巻き込まれる物語の渦が流れ去った後に残るのは、この「異界」としての田舎の不気味さである。しかし故郷の田舎町は、その閉鎖性と神秘性と不気味さにより女主人公たちをそこに縛り付け続ける。その描き方は、ほとんどホラー映画である。
それにしても、ペドロ・アルモドバル監督はどんな女性よりも女性を描くことが上手な監督である。「うーん、女って、こういう生き物なんだ」と納得してしまった。
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