劇場公開日 1947年2月11日

「見所は、超有名な「光る牛乳」と、温い結末の二つです」断崖 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5見所は、超有名な「光る牛乳」と、温い結末の二つです

2021年7月30日
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ヒッチコックのアメリカでの4本目

これは流石にアカデミー賞に縁遠いヒッチコックが作品賞を穫っただけある面白さです!
ヒッチコックの映画を観た!という満足感があります
イギリス時代のヒッチコック作品のような味わいがあります

アメリカでの1本目のレベッカでヒッチコックに気にいられたのかジョーン・フォンテインがまたも主演で、アカデミー主演女優賞を受賞しています

24歳、当時はもう結婚適齢期の終盤の年齢です
このチャンスを逃したらもう後がない
その風情が容貌と抜群の演技力で説得力が半端ありません
疑惑を深めていく後半も良いですが、ジョニーの手管でどんどん恋に落ちていくところの表現力は唸ります
冒頭の一等客車でリナが詠んでいたのは児童心理学の分厚い本なのに簡単に落とされてしまうのです
ヒッチコックの小道具の使い方もさすがです

見所は、超有名な「光る牛乳」と、温い結末の二つです

ジョニーが毒を入れたかも知れない牛乳をお盆に乗せて二階のリナの寝室へ階段を登るシーン
ジョニーと階段は黒く沈んだ闇の中ですが、コップの牛乳だけは、闇の中で白く光っているのです
疑惑の牛乳に私達観客の視線を集中させる見事なテクニックです
豆電球を仕込んで撮影したとのことです

ケーリー・グラントは37歳
映画デビュー10年目
「赤ちゃん教育」、「ヒズ・ガール・フライデー」、「フィラデルフィア物語」と人気がブレイクしてまだまだ二枚目で売り出したい時なので映画会社から悪役NGで横槍が入って、あのような温い結末になってしまったそうです

ヒッチコックは、本当はリナが毒殺され、犯人はジョニーで「私が最後の犠牲者になる」と書かれた母宛ての手紙で終わるつもりだったそうです
もしこの結末だったら最高傑作のひとつになっていたかも知れません

ともあれケーリー・グラント本人には責任は無く、演技もヒッチコックの眼鏡に叶い、本作の後も「汚名」、「泥棒成金」、「北北西に進路を取れ」と出演してお気に入り俳優となります

本作では「赤ちゃん教育」、「ヒズ・ガール・フライデー」のスクリューボール・コメディで見せた軽妙さを、ジョニー役に監督が上手く引き出しています

恒例のヒッチコックカメオ主演は、中盤で本屋から出てきて推理作家のイソベルとバツッタリ出会うシーンの直前、ポストに投函している後ろ姿の男でした

断崖は写真の裏にタングミアの海岸とありました
英仏海峡に面した断崖絶壁です

日本の2時間ドラマのクライマックスが断崖絶壁のそばで行われるのは、松本清張原作、野村芳太郎監督の「ゼロの焦点」が由来でしょうが、ではそのゼロの焦点の断崖絶壁の由来は?
もしかしたら本作の断崖だったのかも知れません

あき240
こころさんのコメント
2022年5月1日

あき240さん
あの暗闇で白く「光る牛乳」に、そんな仕掛けが 👀
ヒッチコック監督のカメオ出演、見逃してしまいました 💦
ラスト、同感です。今なら間違いなく本来の脚本で撮られるでしょうね。
端正な顔立ちのケーリー・グラントが、結構怖かった。。

こころ