「ヒッチコックの名作のリメイク」ダイヤルM 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
ヒッチコックの名作のリメイク
1998年(アメリカ)監督:アンドリュー・デイヴィス
1954年公開のヒッチコック作品「ダイヤルMを廻せ」のリメイク。
《一体、愛はどこに?》と、悲しくなる映画でした。
このリメイクはミステリーと言うより痴話喧嘩の類いですね。
謎解きの楽しさ、スリル、爽快感は皆無です。
改変、改悪の悪い例です。
金に困っている夫が、資産家の妻の遺産を目当てに「妻殺し」を依頼します。
オリジナルでは、
殺人依頼を、昔の知人=大学の同窓で顔見知り程度の素性の悪い男
リメイクでは、
殺人依頼=妻の浮気相手の画家
新進の画家である青年(ヴィゴ・モーテンセン)は、妻(グウィネス・パルトロー)と、
熱愛中で、2人は愛し合ってるように見えます。
洗練されて美しくお似合いの2人。
将来を約束された才能の持ち主のボーイフレンドと、
慈善活動に励む一方で、画家の良き理解者である妻。
毎日逢引きして毎日ランチを共にするほど、お互いを必要としている。
そんな妻の浮気相手に、よりによって「殺人依頼」をする?
(ありえません)
夫(マイケル・ダグラス)は、妻と愛人を一度に片付けたかったのだろうか?
私が画家の立場なら、邪魔なのは、夫・・・。
マイケル・ダグラスを完全犯罪で殺せば、愛するグウィネスとその資産が自分の物になるのですもの。
だから妻殺しを浮気相手に依頼する
この改変が改悪だと思います。
強盗が邸宅に侵入する「鍵」
この「鍵」のトリック。
リメイクでもここは踏襲してたのですが、
ヒッチコックは正当防衛ではなく、故意に殺した故殺を疑われ死刑を宣告される妻(グレース・ケリー)の、
無実の証明(同時に、夫の妻殺しの計画の証明)につかっていました。
そして、警部が探偵のように種明かし役でしたが、
リメイクではグウィネスが鍵のトリックを発見する探偵役です。
ラストはまったく驚きの展開。
このリメイクのキャッチ・コピーは、
「愛さえも殺しの道具」
そう来ましたか!!
しかしこの映画がそこそこ観れる映画なのです。
カメラワークの巧さ(俯瞰から写す映像の美しさ)、
出演者の魅力。
若くて洋服の着こなしが抜群でスタイルが良くでモジリアニのモデルのように
ミステリアスなグウィネス・パルトロー。
ボヘミアンと野卑を兼ね備えた魅力=ヴィゴ・モーテンセン。
嫌味な男なら専売特許のマイケル・ダグラス。
そして存在だけで嬉しい「名探偵ポアロ」のデヴィッド・スーシエ。
テンポも脚本も演出も悪いけれど出演者の魅力で、それなりでした。