「負債からの解放?」旅立ちの時 ohxrさんの映画レビュー(感想・評価)
負債からの解放?
クリックして本文を読む
この映画、旅立ちの時という題だが主人公ダニーが自分で決断するシーンは少ない。音楽学校への進学も自分から強くは主張せず、肝となる旅立ちも自分から言い出さずに家族に背を押される形で果たされる。彼が最も自分を主張するシーンはガールフレンドに自分の複雑な環境を自ら打ち明けるところだろうか。
彼の家族も過激な反戦活動を行っていたとのことだが、作中では政治的な主張や行動をすることはなく逃亡生活を営んでいる。母親は銀行強盗を行おうとするかつての仲間に、大人になるようにと忠告する。かつて青臭い理想のために行動したのは自分が子供だったからと言わんばかりである。
対照的なのがダニーのガールフレンドであり、彼女は自分の両親について、善人ぶっている、他人に関心がない、と辛らつな評価をしている。反面、過激な行動に走ることはなく、数年もすれば自分の仕事や家庭に関心が退行していくのだろうと思わせる。
母親はダニーの進学話を機に、連絡を取っていなかったダニーの祖父に世話を頼むなどこれまでの負債と向き合っていくことになる。個人的にはこのあたりが映画のハイライトではないかと感じた。
総じてこの映画からはイデオロギー的な活動に対する冷めた目線が感じられ、最も印象に残ったのは活動により要らぬ負債を抱え込んだ夫婦が子供を解放しようとする姿であった。
コメントする