「父と子の愛情物語と思ってたら・・・」北京ヴァイオリン ジョニーデブさんの映画レビュー(感想・評価)
父と子の愛情物語と思ってたら・・・
前半、息子が一流のバイオリニストに成長していく過程を描いた、いわゆるサクセスストーリーものかと思って見ていた。
その後も、そのような方向には進んでいくが、結局この映画は、息子に対する父親の深い愛情と、最初はそれがうざかった息子も、次第にその愛情を感じ取るようになっていく、父と子の絆がテーマだったと言うことがわかる。
後半、この父と子は血の繋がっていない親子だということがわかる。父が、バイオリンの先生に指導してもらおうと自宅に乗り込んで身の上話をした際、先生の奥さんが泣いていたシーンがあったが、その時は、息子が2歳の時に母親がなくなったので可愛そうと泣いていたのかと思っていたが、それがこの伏線であったという演出には感心した。
この映画は2002年の製作で、2008年北京オリンピックの前ということで、 今はなくなったかもしれない古い北京の街並みが見られるのもこの映画の見所のひとつである(最初に出てくる故郷の水郷のような街並みもよい)。
ただ、ラストのチュン(息子)が選択した行動には納得できない。サクセスストーリーに徹していればすごく気にいった作品になっていたので、ちょっと残念である。コンクールは今回だけじゃないとしても、父やバイオリンの先生を悲しませる結果になってしまったのではないか。北京駅で父とリリと最初のバイオリンの先生、それに通行人の前で素晴らしい演奏する姿はホロリとくるほど感動的で、父も息子の気持ちを理解し涙を流すが、本当に父親が好きで、親孝行したいと思うならコンクールに出るべきだったのではないか。前半、こんな父親だったら嫌だなと思っていたのに、後半、その父親にどっぷり感情移入してしまった私の率直な感想です。