めぐり逢う大地 : 映画評論・批評
2002年12月2日更新
2002年12月14日よりシネマスクエアとうきゅうほかにてロードショー
メロドラマを軸に近代の夜明けを描く
19世紀半ばのニューヨーク。スコセッシの「ギャング・オブ・ニューヨーク」では、キャメロン・ディアスが「サンフランシスコに行きましょう」とディカプリオを誘う。「あそこには金が埋まっているのよ」。一方、ゴールドラッシュに沸くカリフォルニア。ウィンターボトムの「めぐり逢う大地」では、貧しいアイルランド移民が自分の妻と娘を一握りの砂金と交換していた……。
トマス・ハーディの「カスターブリッジの市長」を基にしたこの映画は、一握りの砂金で成功した男の物語。「キングダム・カム」という町に君臨する男のもとへ、かつて棄てた妻と娘が訪ねてくる。男は今度は愛人を棄てて元妻と再婚し、豪邸に住まわせる。だが時代は金鉱採掘から大陸鉄道の時代へと大きく変わろうとしていた。男の<キングダム>は崩壊し、娘は鉄道技師と旅立っていく。この映画はメロドラマを軸にしながら、生と死が交錯する<近代の夜明け>を描くのだ。
と同時に、これは悲しき移民の歌でもある。冒頭でファドを歌っていた愛人が、ラストに新しい町を「LISBOA」と名付けたときはほろりとした。「サイダーハウス・ルール」を降板したウィンターボトムは、ハーディの世界を完璧にアメリカに移植し、「文芸映画」のお手本を示した気がする。
(田畑裕美)