劇場公開日 2002年12月28日

「社会問題に深く切り込む丁寧な演出と、若手のフレッシュな感性が相まった秀作」SWEET SIXTEEN ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0社会問題に深く切り込む丁寧な演出と、若手のフレッシュな感性が相まった秀作

2019年12月30日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ケン・ローチの作風は00年代に入って若手のフレッシュな感性も相まって新たな魅力を獲得した。もうすぐ16歳のリアムを主人公に据えた本作も、その代表格といえるだろう。

ローチ作品の主人公はそれぞれ深刻な事情を抱えているが、今作は息子が母のために何かしてあげたいという思いが全編を通じて痛いほど伝わってくる。しかし彼は環境という名の「檻」から這い出るチャンスをつかむことができない。また、彼の倫理観の中では母への思いの方が先行し、自分が売ったドラッグで誰かが不幸になるジレンマからあえて目をそらしている。つまり、目をそらすだけの葛藤が、まだ彼の中に存在するということだ。それは「救い」のようにも思える。

こうしたドラマが丁寧に構築され最後まで目が離せない。そして運命の瞬間。我々はまたも「どうして!?」というやるせない余韻を抱え、こうした案件が多数巻き起こる現代社会について深く考えさせられるのである。

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牛津厚信