世界のレビュー・感想・評価
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静かで淡々とした描写
北京のテーマパークという一見華やかな舞台で働く人々の日常が細やかに描かれている。
華やかなテーマパークと、そこで働く人々の間の満たされない現実。
しかし、登場人物たちの心の内はなかなか掴みきれず、最後まで感情移入するのが難しいと感じる人もいるだろう。
エンターテイメントを求める人には物足りなく感じるかもしれないが、中国が抱える「希望」と「不安」のコントラストを感じる作品。
劇中に挿入されるアニメーションは独特な演出はやや唐突に映る。
北京の郊外にあるテーマパーク。世界中の有名な建造物のミニチュアが立...
狭い世間、狭い世界。しかし、そうした世界公園も広大な中国の中にあった
基本はタオとタイシェンの恋愛関係を軸に回りの人たちの喜怒哀楽が絡んでくる物語。数年後に控えた2008年の北京オリンピックに向けて、巨大なテーマパークの宣伝を兼ねているようにも思えるし、現代中国の心理をも象徴しているともとれる。しかし、人間関係はドキュメンタリータッチで捉えながらも定点カメラのロングショットも多いし、編集による切り返しやモンタージュなどはほとんどなく、誰が喋ってるのかもわからないほどの後向きの構図のおかげでわかりにくかった。こうした背景映像を重視した作風はテオ・アンゲロブロスのイメージにも似ていますが、決定的に違うのは細かいカット割りが多いことだ。
「これがアートなんだよ」などと言われると返す言葉も見つからなくなるが、もっと内面を抉る描写がほしいところ。自分の服に火をつけたシーンは凄かったが、結局どうなったのかわからずじまい。ラストの二人はどうとでも解釈できますが、未来あふれる世界を描き出すには暗すぎる。同僚の結婚式の乾杯シーンがよかっただけに残念だ。
タオの元彼に嫉妬するタイシェンだが、浮気もしている。工場で事故死した若者のエピソードは唐突すぎる。貧しい人々を描くにはもっと別の方法もあると思うのですが、それよりも、日本が作ったというところに作為的なものを疑ってしまいたくなる・・・ラストの『東京物語』も・・・
【2006年3月映画館にて】
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