劇場公開日 2006年2月11日

「野獣刑事というよりも無謀刑事といったキャラのクォン・サンウ。無骨なプロポーズも参考になりました。」美しき野獣 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0野獣刑事というよりも無謀刑事といったキャラのクォン・サンウ。無骨なプロポーズも参考になりました。

2020年10月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 刑務所の出所シーンでは『親切なクムジャさん』と同様、豆腐のエピソードが登場する。さすがに肝心の豆腐を忘れただけあって、カンジン(ソン・ビョンホ)は善人にはなれなかったようです。野性味あふれるチャン刑事(クォン・サンウ)もあり得ないほどの暴力を使いますが、なんといってもこの悪人カンジンはマスコミ向けには善人を装い、出所後間もないのにムネオのように政治家になろうとするほどなのです。悪人というのは何故こうも政治家になりたるのか、一般庶民には理解しがたい感覚ですねぇ。

 『マルチュク青春通り』ではブルース・リーに憧れる高校生役だったクォン・サンウでしたけど、この映画ではそのキャラがそのまま大人になったような雰囲気でした。どことなく70年代の松田優作のイメージを倣ってるのか、キレ方や寂しさ、優しさが同居したような表情をしているし、タバコを吸う前に必ず舐めたり、ライターの火がなかなか点かない不器用さなど、ちょっとした仕草もいい味出しています。なんだかんだ言っても彼の主演映画は全て観ていることに気がついた・・・

 一方のユ・ジテは悪役のイメージを脱ぎ捨て、法と正義に燃えるクールな検事役。彼もまた仕事一筋で家庭生活では不器用さを発揮しています。冷静さを保たなければならない職業ですが、野獣刑事とタッグを組んだことにより、悪への対処も徐々に熱くなりがちな性格へと変化していく様子が上手く表現されていました。

 法と正義を武器にしてもカンジンのような悪には無力なのか。歯車が狂わなければ起訴まで持ち込むことが出来たんじゃないかと苛立ちさえ覚えますが、2人がそれぞれ孤立してるかのような職場環境やヤクザの巧妙な根回しが彼等を苦境に立たせてしまう社会派要素も満載。「パシリヤクザのドンジクが弟だって知らなかったんかい!」とつっこみたくもなるものの、その後の裁判や銃撃戦のシーンでは震えがくるほど心を揺さぶられてしまいました。韓流映画嫌いの男性にもオススメの映画。

【2006年2月映画館にて】

kossy