劇場公開日 1991年3月9日

「【生きるべき人生と、病ゆえに死に直面した人生を見事に描いた、アキ・カウリスマキ監督の人間性肯定映画。余命短き殺し屋の最後の行動は、じんわりと心に沁みます。】」コントラクト・キラー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【生きるべき人生と、病ゆえに死に直面した人生を見事に描いた、アキ・カウリスマキ監督の人間性肯定映画。余命短き殺し屋の最後の行動は、じんわりと心に沁みます。】

2022年9月2日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD

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幸せ

■ロンドンの水道局で働くフランス人アンリ・ブーランジェ(ジャン・ピエール・レオ)。
 真面目に働いて来たのに、民営化を理由に、突然解雇された彼は自殺を図ろうとするが死にきれず、新聞広告で知った殺し屋コントラクト・キラーに自分の殺害を依頼する。
 しかしその夜、彼はカフェで出会った花売り娘マーガレット(マージ・クラーク)に恋をしてしまい・・。

◆感想<Caution! 内容に触れています。>

・アキ・カウリスマキ監督お得意の短ショットで、物語はサクサクと進む。
ー このテンポ感を良しとするかどうかで、評価は変わると思う。-

・突然、解雇されたアンリ・ブーランジェは異国の地で、首を吊ろうとするが失敗。で、殺し屋に自分を殺す様に依頼するが・・。

・元ザ・クラッシュのジョー・ストラマーがガンガンに演奏するバーで出会った花売り娘、マーガレットに一目ぼれしたアンリは、生きる目標を見出していく。
ー この辺りのストーリー展開は、アキ・カウリスマキ監督ならではの、情緒観を抑えた描写で映し出される。-

・だが、殺し屋は確実に、アンリ・ブーランジェに近づいていて・・。
ー この殺し屋が癌に罹っており、余命幾ばくもないシーンも実に淡々と描かれている。-

<ラスト、アンリ・ブーランジェを彼の望み通り追い詰めた殺し屋が取った行動・・。
 今作は、アキ・カウリスマキ監督作品の中では、異色に分類されるのであろうが、人間性肯定の軸はブレておらず、密かに好きな作品である。>

NOBU