スキャナー・ダークリーのレビュー・感想・評価
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【今作は、物質D(death)が蔓延する近未来、覆面麻薬捜査官がいつの間にか物質Dの依存者となって行く様をロトスコープ技法で描いたシニカルハードSF作品である。】
■近未来。社会には「物質D」というドラッグが蔓延していた。
覆面麻薬捜査官のフレッド(キアヌ・リーヴス)は、ジャンキー、ボブ・アークターを演じながらネットワークの奥に潜入するが、やがてジャンキーとしての自分を監視する事態に陥る。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作では、フレッドを演じたキアヌ・リーヴスを始め、ジャンキーのジム・バリスを演じたロバート・ダウニー・Jr、アーニー・ラックマンを演じたウディ・ハレルソン、ドナ・ホーソーンを演じたウィノナ・ライダーを始め、ロトスコープ技法で描かれている。
勿論、ジャンキーが見る世界を表現するためである。
近作では、「化け猫あんずちゃん」で使用されている。
・今作の原作はフィリップ・K・ディックの「暗闇のスキャナー」である。ご存じの通り、フィリップ・K・ディックは、ハードSFで著名であるが、ドラッグを常用していたために、作品のクオリティに波がある。
勿論、バッド・トリップ状態にあれば小説など書けない筈であるが、今作は微妙な所である。
個人的には、今は一切辞めているが、登山をやっていた頃にネパールに行っていた頃には、大麻(ハシシ)は時折吸っていた。
が、絶対にやってはいけないのは、LSD、コカイン、マリファナである。常習性があり(煙草も、ハッキリ言って麻薬である。私は一切吸わない。酒は物凄い量を呑むが・・。)
今作で描かれる錠剤の「物質D」は、明らかに後者である。
<今作のエンドロールで流れる、麻薬により廃人になった人達の名前が次々に流れるテロップは恐ろしい。今作は、効果的な、麻薬撲滅キャンペーン映画なのである。
麻薬業界は、作って、売って儲けるというサイクルで出来ている事はご承知の通りである。今作でも、”ニューハウス社”が、麻薬常習者を捜査しながら、一方では麻薬を栽培していた、というシニカルなシーンが描かれている。
その罠にはまったのが、キアヌ・リーヴス演じる覆面麻薬捜査官のフレッドなのである。>
ぼんやりとした世界観が最高
印象として「寝られる」をつけましたが、コレは決して悪い意味ではありません。
逆に今作ではそれが醍醐味だと思います。
なんと言いますか……この浮遊しているような、ぼやけているような。
不思議な世界に浸ることができて、すごく濃密な体験が出来ました。
主人公のボブは、潜入捜査官としてジャンキー達と生活をするも、やがては自分を見失っていき、壊れていく。
一見するとただただ主人公が成長しない、堕ちていくだけの作品に思えますが、何故かすごく面白いです。
あと前編アニメーションであるところも、独特な雰囲気を醸し出していて非常に素晴らしい。
『トレインスポッティング』を彷彿とさせるように、麻薬の恐ろしさを描く映画としても傑作なのかなと思います。
“Slow death“ やってみたかった!
先ず何故わざわざアニメにしたのかが疑問なのですが、多分こういう映像をやってみたかったのではないかと思われます。多分大変過ぎたんでて、その後あまり似たような作品が作られなかったのである意味唯一無二です(あ、「ゴッホからの手紙」っていう俳優の動きを油絵でアニメにしたっていう、もっと狂った所業の作品はありますが)。
ドラッグを使ってトリップしてる感じが良く出来てる不思議な作品ですね。冒頭の虫が身体中這ってるのは気持ち悪いですけど、きっとドラッグやってる人ってあのように感じるんでしょうね。怖い怖い。
何となくですがキアヌ・リーブスはこういう実験的な作品にでるの好きそうですよね。ウィノナ・ライダー、ロバート・ダウニーJrと中毒ガチ勢がしっかり脇を固めてます。特にロバート・ダウニーJr ってアイアンマン前の映画ですが、なんとも楽しそうにやってますね。これまた何となくなのですが、ウッディ・ハレルソンって見た目とは逆であまりドラッグやらなさそう。いや実際の所は知らないんですけど。何となく。
もう全然バッドエンドと言っても良い展開ですけど、こういうのハマる人にはハマるだろうなぁっと思って観てました。
終始ドラッギーでくらくらする((+_+))
フィリップ・K・ディック原作の映画は相当作られてるけど・・・
これは今までの中で一番原作に忠実な映画化じゃないかと思う(^O^)/
まずロトスコープっていう、実写で撮影した絵をなぞってアニメーションにするという途方もない手間がかかる手法で作ってることで、この話の持つドラッギーさがうまく表現できてると思う。
麻薬中毒者が体中虫が這いずり回る幻覚を見るところから始まるのは相当なインパクトがあって(・∀・)イイ!!
その後の会話も頭がおかしくなってるから、何を言ってるのか全然的を得ないという、観てる方が混乱してくる(;´∀`)
麻薬取締官のボブ・アークターが人前に出る時に着るスクランブルスーツという被り物を着て、常に色んな人間の顔が入れ替わるスーツを見せることでさらに混乱度合いは倍増(;・∀・)
その上司ですらお互いの素顔がわからないという徹底ぶりで、こんなスーツを着た奴が2人もいたらもう何が何だか(-_-;)
実はそのボブ自身が「物質D」という超強力な幻覚作用をもたらし、末期になると自分が誰なのかさえもわからなくなるという麻薬を常用していて、捜査官なのにその中毒患者である自分を監視しているという設定には頭が・・・((+_+))
急に意味不明な言動をとったり、急に目の前の人物が虫に変身したり、自分で自分を監視する任務と言い、さらにそのスクランブルスーツと言い・・・さらにこのロトスコープの映像を掛け合わせるとそりゃあ観客の頭もちんぷんかんぷん(@_@;)
麻薬中毒患者と共同生活をしているドナという女がいて、実は彼女こそがボブの上司で物質Dの出所を捜査している捜査官。
物質Dを製造しているのは麻薬中毒患者の更生施設の「ニュー・パス」という事実を突き止め、そこには中毒患者しか入れないため、ボブを利用してそこに送り込もうとしていた。
ところがドナも自分が誰に利用されてるの分からない。
ボブはニュー・パスに送られて農場で作業をしていると、青い小さな花を見つける。
もう脳に障害を持ってるボブには全く自覚がない。
これは確かどこかで見た覚えが・・・
施設の仲間にこの花を送ってやろうと思って靴下の中にそれを入れる。
つまりこの青い花こそが物質Dの原料。
果たしてこれで物質Dの製造元として摘発できるのか・・・
ここで映画は終わり。
観てるだけでくらくらするし、頭がこんがらがってくる。
長い映画じゃないんだけど、中毒患者同士の怠惰で要領を得ない会話を聞いてるともう・・・(-_-;)
この映画は単館上映だったらしいけど、薬物中毒の恐さを世の中に知らしめる上でも価値がある映画だと思う。
万人にはお勧めできないけど、見た目も中身もここまでドラッギーな映画は観たことない。
大傑作です( ゚∀゚ノノ゙パチパチパチ
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