劇場公開日 2003年8月2日

ハルク : 特集

2003年8月1日更新

映画、小説、SF、アメコミ、ゲームとさまざまな分野で活動中の大森望氏が映画 「ハルク」をチェック! 「ハルク」とはいったいどんなモノなのか。なぜ、今、「ハルク」が作られなければならなかったのか。そこには深い理由があった?!

なぜ、今、ハルクなのか?

大森望

■怪獣映画か、大魔神か?CGIで魅せるハルク

画像1

でかい、でかい、でかすぎる。なにしろ最大身長5メートルですからね。変身後のハルクが米軍相手に大暴れするパートはほとんど怪獣映画。恋人役のジェニファー・コネリーになだめられて人間サイズに戻るところは大魔神ですか?

実写のハルクっていうと、20年ぐらい前に放送されてたTVシリーズ「超人ハル」の印象が強いせいか(主役のビル・ビクスビーがハルクに変身すると、全身緑色に塗ったボディービルダーのルー・フェリグノに交替)、CGI巨大ハルクには最初のうち違和感があったけど、アメコミ的には(なぜか一緒に巨大化する伸縮自在パンツまで含めて)これが正解かもしれない。

■アン・リーが監督する必然性

アン・リー監督(左)
アン・リー監督(左)

アメコミヒーロー映画では、長く二枚看板だったスーパーマンとバットマンのDCコンビに替わって、最近はマーヴル勢の天下。集団物の「X-メン」は別にして、「スパイダーマン」「デアデビル」「ハルク」と並べれば、“地味系ヒーローの時代”と言えるかもしれない。実生活では悩みの多い等身大のヒーローたち。もともとこれは、1960年代前半にスタン・リーが(DCに対抗すべく)始めた路線で、その第一号が「ファンタスティック・フォー」なんですが、アン・リー監督の家族映画「アイス・ストーム」(97)で、トビー・マグワイア演じる長男のおたく少年がいつもこのコミックを読んでいたのを思い出せば、台湾出身の彼が「ハルク」を撮ったのはむしろ必然だったかもしれない。

コマ割りされたアメコミの絵が作中にインサートされた「アイス・ストーム」に対して、「ハルク」では、実写の画面をコマ割りするという香港映画的な荒技でコミックらしさを演出。登場人物たちの過去と人間関係はじゅうぶんな時間をかけて丹念に描く一方、けれん味たっぷりの技巧を駆使して観客を飽きさせない。

最終的にはニック・ノルティ演じるマッドサイエンティストな父親との対決に話を収束させるのもアン・リーらしいところ。おお、これは「巨人の星」の星飛雄馬VS一徹か――と思いながら見ていたら、まさかこんなものすごい対決になろうとは。もしかして、ジョージ・ブッシュ親子に対する辛辣なメッセージ?

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画評論

「ハルク」の作品トップへ