「藤本タツキの初期衝動に溢れる短編集、その2」藤本タツキ 17-26 Part-2 フレンチクローラーさんの映画レビュー(感想・評価)
藤本タツキの初期衝動に溢れる短編集、その2
やはり目玉はルックバックの原型と言える「妹の姉」だが、他も光る
■「人魚ラプソディ」★2
美少年に海底のピアノを弾かせる絵の美しさ、人肉を食べる美少女人魚との交流に漂うゆるやかな緊迫感など、個々の要素は強い。しかし着地点とその絵面が呆れてしまう程しょうもない。アニメになって尺が伸びた分、内容の薄さが一層強調されてしまった気がする
■「目が覚めたら女の子になっていた病」★3.5
シンプルなTSエロで解決部分も弱い。物語の薄味さを画面の楽しさでフォローするアニメ化の手際が光っており、比較的短尺なのでダレる事もない。実質的にトランスジェンダーを扱う作品なので倫理面はこれで大丈夫なのかと不安を感じる部分もあり(多分ギリセーフ?)。人によって好みは分かれそうだが評価したい一本
■「予言のナユタ」 ★3
世界の迫害から人外の妹を守るというテーマ、シンプルな葛藤を維持しながら状況のスケールアップで楽しませる作風など、藤本タツキの初期作品群の集大成のような内容。妹の得体の知れなさが不気味で可愛い。kevin penkin氏の劇伴も良いがアニメ化としてはやや凡庸
■「妹の姉」★4
ルックバックの原型と言える作品。妹が描いた自分の裸婦画をデカデカと校内に飾られてしまった姉、という抜群のフックから不器用な姉妹愛に落とし込む爽やかな一作。アニメーションの出来そのものが頭一つか二つ抜けており、ルックバックの後に中途半端なものを見せられないだろうという制作側の矜持みたいなものを感じる。「ルックバック」「さよなら絵梨」等のチェンソーマン以降の短編と比較した際、人が死なない事は美点と言えるかも。佳作
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