アラーの神にもいわれはないのレビュー・感想・評価
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そんな死に方するの
東京国際映画祭で観た。
これは強烈に良かった。すごい。日本ではなかなか作れないタイプの題材、画風。
そもそもアフリカ大陸の少年兵の実態とかまず分からないから。しょっぱなから銃を持った小学生ぐらいの子供が出てくる。で、銃を持った子供達同士で仲良くなるんだけど、戦闘であっけなく死ぬのよ。
気が強い女の子は歩くのもう嫌!から道案内ボーイと口論になり両方ともヒートアップして銃を向けあった結果、ボーイが撃った弾丸で死ぬ。本当、こんなことで死ぬというやるせなさ、このあっけなさ。この展開は日本のアニメではなかなかできないよな。
主人公はヒロインっぽいポジションの女の子と仲良くなるんだけど、この子も戦闘で撃たれてあっけなく死ぬ。
戦闘で勝てたことを大人は喜ぶばかりで子供が死んだことを「もう忘れてる」。主人公の少年が悲しむひまもない。
そもそも足の悪い母ちゃんが死んだことで胡散臭い占い師ニキに連れられ遠くのおばさんの元へ行くことになる話なんだが、この冒頭からして悲しい。
すごいカラフルで色を沢山使っており綺麗なんだが、出てくる現実が悲惨過ぎてそのバランスがすごかった。
目的地につけば金が手に入るよみたいなことを言われて少年は大金持ちになったら…という空想をするのだが、この空想が個人的には一番悲しいポイントだった。
沢山の銃に囲まれていい車に乗るんだよな。妄想すら銃ありきで。めちゃくちゃ明るい色彩でごきげんな曲が流れていて。
この悲しさったらねえよな。
胡散臭い占い師ニキは子供を売る悪人なんじゃないかと疑っていたが最後まで少年を守ってくれた。そこは良かった。
冒頭に早速市街地で撃たれて倒れる場面はばあちゃんのペンダントが守ってくれた展開だろ?と予想しそのとおりになってくれてホッとした。ベタであろうと今作ではホッとするわ。
終盤に海で泳ぐ場面があり、やっと銃で戦わなくて済む場所に来れたのかと安心した。マジで銃で死にまくる映画だから。
ラスト、おばさんはすでに病気で死んでいた。しかし、4冊の辞書を残しており主人公はこれを形見として受け取る。
君はここまでどうやって来たんだ?ということを大人から問われて辞書を駆使しながら主人公が語りだす、こうやって生きてきたんだ、というところで終了。
戦争映画は大概悲惨なもんだが、この映画の内戦って、同じ国の中で黒人同士で殺し合い子供も巻き込んで死ぬという、かなり救いがない展開で。明るい色彩、楽しい音楽、そして鮮やかなアニメーションでなければ見れなかったと思う。
この映画を作ってくれたことに感謝だ。日本ではまず作れないし、作ろうと発想する人すらほとんどいないだろう。
混沌する西アフリカで銃を手にした少年
1990年代の内戦激しい西アフリカで少年兵となった孤児ビライマを描く。
母の死をきっかけに、隣国リベリアに住む叔母を頼ることにしたビライマ。だが行く先々で武装勢力と遭遇し、生き抜くために自らも銃を取らざるを得なくなる様子や、利権や民族・宗教が絡んだ西アフリカの混沌ぶりが凄まじい。当然ながら生死に関わる凄惨な描写が出てくるが、絵柄は色彩鮮やかなポップ調で描かれているため、そこまで見苦しくはない。
銃を発砲するビライマだが、彼の弾丸で人が死ぬ描写を見せなかったのは、戦争とはいえ彼を殺人者にしたくないという監督の良心みたいなのを感じた。また、ビライマの保護者的存在で、うさん臭さ満載ながらも言葉巧みに敵から彼を守り自らも守っていく呪術師のヤクバがいいスパイスとなっている。実際の戦争でもこういった人物が生き残るんだろうなあ。
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