「辛い現実を華やかな舞台劇で上書きする」蜘蛛女のキス regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
辛い現実を華やかな舞台劇で上書きする
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ウィリアム・ハートがオスカーを獲った1985年版は未見。なので比較しようがないが、本作は原作小説とそれを翻案したブロードウェイ・ミュージカルがベースになっているとの事。
1980代初頭まで軍事政権下だったアルゼンチンは、学生や運動家が次々投獄、迫害されてきたが、中にはモリーナのような同性愛者も含まれる。実はモリーナが投獄された理由は他にもあるが、刑務所の同室に収監されたバレンティンとの関係の変化を描く。
現実はあまりにも辛い。だから華やかな舞台の世界を現実逃避の手段とするモリーナ。政治犯だろうと同性愛者だろうと、妄想では誰しもがスターになれる。その舞台世界のアイコンとして登場するJ.Loは流石の存在感だが、バレンティン役のディエゴ・ルナ、モリーナ役のトナティウも素晴らしい。
ミュージカル劇はストーリーが哀しければ哀しいほど際立つと云われるが、そういう意味で本作は相性が良すぎた。今回観たTIFF上映作の中でもトップクラスの満足度。
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