「現実を歪曲するメンタル」藤本タツキ 17-26 Part-1 PJLBNさんの映画レビュー(感想・評価)
現実を歪曲するメンタル
PartIIを先に観ての鑑賞。Part IIとは違って原作をほとんど覚えてなかったが、それが功を奏した。最初の2作「にわとり」と「佐々木くん」は特にタイトルが話の流れのなかで効いてくる作りで、藤本タツキの短編の核の「シチュエーション」アイデアと、ノンストップな映画的ストリーテリングがうまくまわっていて楽しい。
基本的にはどんなにファンタジーや奇想天外なシチュエーションも、作者の日常ともいえる精神からみる、高い位置からの「冷めた視線」が、それを日常に変換する。そして、むしろ個々のキャラクターの素朴な日常的なメンタルが、狂った現実を歪曲していく、そんな物語が特長的だ。
「にわとり」の宇宙人も、変身して人を食うという設定ながら、まるでただの人間として感じ、考えているため、不思議に共感できるように見えるし、奇跡を起こす「佐々木くん」も、危機的な現実をまるで言い訳のように言いくるめることで変えてしまう。これは物語がそうであるというよりも、それぞれのキャラクターのメンタルが、まさに現実を歪曲していくさまを見ている感じだ。
「恋は盲目」も、単にギャグとしてみればそれまでだが、異常なまでの主人公の想いによって、現実がどんどん巻き込まれていくような話になっている。「シカク」も、殺し屋としてのスキルや吸血鬼であることの設定を無視して、とことん生きるのが下手くそで、思い込みの激しいメンタルが、現実を変えていく姿が描かれる(主人公の声を演じる花澤香菜は声優本人がそのようなキャラクターとして知られているのでこの役はそのままと言っていい)
藤本タツキの物語は、その意味でとことんキャラクターの心理劇でもある。もちろんそこに感情移入するかしないか、の選択は視聴者に委ねられている。アニメ化した映画監督たちは、そこを意識したうえであえて「冷めた視線」を意識したように見える。とくにエンディングの音楽が美しく響いていた。
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