落下の王国 4Kデジタルリマスターのレビュー・感想・評価
全108件中、1~20件目を表示
癒しと希望の物語が、彩度と緻密さを増した映像美でよりパワフルに
オリジナル版の日本での劇場公開は2008年だが、製作は2006年なのでもう20年近くも経つのかと感慨深い。当時から映像美が絶賛されていたが、このたびの4Kデジタルリマスターで精細度はもちろん、彩度もより豊かに鮮やかになり、世界遺産を多く含む雄大な景観や荘厳な建築群が一層美麗に迫ってくる。
美しいビジュアルが持つ表現力が強化されたおかげで、ケガで入院した病院で出会う青年スタントマン・ロイとルーマニア移民の5歳少女アレクサンドリアが、ロイの即興で語る冒険物語を通じて関係性を変化させていく過程もよりヴィヴィッドに感じられるようになった。優れた物語には人を癒し希望をもたらす力があることを、病院内の現実と空想の物語世界を行き来しながらわかりやすく示してくれる。
アレクサンドリア役のカティンカ・アンタルーは1997年生まれで、愛らしい表情とぽちゃっとした体型も本作の魅力に貢献。キャリアは2011年と12年の短編2本のあと途絶えているが、引退してしまったのならさびしい。ターセム・シン監督は2015年製作の「セルフレス 覚醒した記憶」以降ブランクがあったが、インドで起きた悲劇的な実話に基づく2023年製作の「Dear Jassi」が高く評価されているようだ。こちらも日本で鑑賞できるようになることを期待する。
堕ちることは、究極の解脱?
とうとう見た。圧倒的な映像美とロイの妄想と願望が入り混じった奇想天外な物語にあっという間に引き込まれる。
この作品が公開当時にどうしてコケたのかが全くわからない。
ロイがモルヒネ欲しさに、少女のために物語をひねり出す。ロイの歴史的な知識の浅さのせいもあって、時空を超えたキャラクターが登場する。Fateシリーズのように召喚したと思えば、すんなり話に入っていけるし、奇想天外な物語の方が、5歳の少女の心を掴みやすい。
ロイの強い願望が物語の背骨となっているから、主人公はやたらと強いし、美しい姫君との出会いも少年マンガのように劇的。
物語が奇想天外な上に、世界中の奇景を舞台に進行していくから、スクリーンからとてつもない磁力が発せられる。最高潮のところで、ロイが眠ってしまったとすると、「そこで、話しを止めないで」と、アレキサンドリアのように思ってしまう。
ありとあらゆる落下シーンを悪夢として体験する自分にとって落下することの恐怖はわかっていながらも、落下シーンは美しく感じる。
堕ちることとは、義務からの解放も含めて、究極の解脱なのかもしれない。
幻想と現実が溶け合う美しい“物語”の旅
『落下の王国』は、とにかく“映像そのものが物語を語っている”作品でした。スタント事故で絶望の中にいるロイと、腕を骨折して入院している少女アレクサンドリア。ふたりの出会いから始まる物語は、ロイが語る冒険譚をアレクサンドリアが自分の想像力で再構築するという、独特の視点で進んでいきます。
広大な砂漠、美しい水辺、色彩豊かな衣装。どれもCGではなく実際の世界各地で撮影されているので、空想のはずなのに「本当にどこかに存在していそう」と思わせる説得力がありました。特に少女の“空想”そのものが映像化されているという構造は、何度見ても魅了されます。
ロイにとって物語は逃げ場所でしかなかったけれど、アレクサンドリアはその言葉を純粋に受けとめ、彼の傷ついた心に寄り添っていく……そんなふたりの関係が、静かに胸に響きます。
見終わったあとも、彼らの“物語”がずっと心の中で続いているような、余韻が残る作品でした。映像美と人間ドラマの両方を求める方には、ぜひ一度触れてほしい一本です。
エンタメ性あり、衣装とロケーションが素晴らしい
20年前に見てたらインド直行してた
あまりリバイバルものを見ようと思ったことはないのだが、思い入れのあるナミブ砂漠っぽい映像が盛り込まれていたのと、旅好きとしてきっと楽しめるのではと鑑賞。
映像、綺麗だった。写真集ならすごく美しいだろう。衣装と世界遺産のコントラストも良かった。MV集のようにも感じた。
設定、面白かった。語りの物語の映像化、キャラがところどころはちゃめちゃなのもよい。
ストーリー、は正直特段面白いわけではない。ラストへの盛り上がりに感情移入できてたらもう少し心が動いたかも。
かと言って旅行記として楽しむには知らない景色すぎる。実写なのかCGかも区別がつかない。ただ一番綺麗!と思った、ダーウィンが落ちるシーンの場所はインドの階段井戸、チャンド・バオリらしい。実際の写真を見てみると、ここであんな幻想的な映像撮ったのがすごすぎる、と思える。インドが多い模様。でもナミブも良かったし、一つ一つ場所の答え合わせできたらもっと楽しめるのかも。
しかし。。結果だいぶ寝た。確かに今日は寝不足でしかも直前にお腹いっぱい食べてしまった。でも、もう一度見るかというとまあいいか、写真集の中の何ページか見逃しただけ、という感覚。(勿論寝てる間に面白い展開を見逃してる可能性はある)でもこの世界観を少し覗くことができたので満足。
20年前のこの感性は素敵だと思う。今、もっと刺激的なこの時代の感性で捻りのある話の展開とともに同じような映像撮っていたら多分ドンピシャ刺さっていた気がする。
最後エンドロールの撮影クルーだけ凝視。
南アフリカ、インド、英国、バリ、フィジー、中国、ルーマニア、パリ、プラハ、イタリア、スペイン、チリ/ブラジル/アルゼンチン、あと2ヶ国位あった。
なぜかナミビアはなかった。。南アフリカクルーが撮ったということか?
実在と子供の王国
物語に入る最初のシーン、青い空、赤い砂漠、白い塩の画面三分割の構図で一気に引き込まれました。自然美と世界遺産の建造物の幾何学的な構造美。そしてその画面に華を添える衣装。映画はやはり映像を観るものだといこうとを再認識します。
この映画はトーキー時代のスタントマンが主人公ということから想像出来るように、CGが創り出すヴァーチャルではない、実在の力を魅せつけることがモチベーションだと思います。公開から20年近く経ったことにより、その意図は古びるどころか、ますます力強いメッセージになったのではないでしょうか。
ストーリーは極めてシンプルで流れがやや単調になりがちなのですが、主役のインド系少女のあまりにも自然な演技に魅入られるので、私はまったく飽きるようなことはありませんでした。この映画を支配するような子役の演技とそれを最大限に活かした演出も出色です。
夜中の作り話
子供の頃 よく寝る前にレコードをかけて
本を読んでもらっていたが
何度も同じ本を読み聞かせするうちに
父は自分でアレンジ加えて 全く違う話に
してしまうことがよくあった。
いつも、寝かせるためのお話なのに「続きは?もっと!!」に
なってしまう〜
この作品を見て それを思い出した。
この作品 タイトルはしっていたが
公開時リアタイしなかったのは何故なのだ?
難解でめんどくさそうだからか?
面白いではないか!
好きだ!
パンズラビリンズを、思い出すダークファンタジー
でも、ちゃんとハッピーエンドになっている
映像を仕事にする人間は見ておいた方がよい
何故、公開時見なかったか、ひたすら後悔。
こんな良い作品を上映してくれる
「サツゲキ」さん。感謝。
子役の女の子が良かった。
数々の世界遺産でロケされ、その映像は迫力満点。個々のストーリーは突然出てきてさらに次に飛んでいく感じで、一応流れはあるのだが私にはこれからどうなるのかというワクワクドキドキの映画ではなかったように思う。
その中で舞台回しの中心人物である子役の女の子の同じ入院している若い男性への純粋な質問や話しぶり(英語)が良かった。孫の年齢に近いので。
石岡瑛子とターセムシン
このコンビに勝るものを探す方が難しいってくらい大大大好きです!
文句なし。
こんなに話題になって評価されて、初期からこのコンビを尊敬していたファンとして嬉しすぎます!
美術館で是非、石岡瑛子&ターセムシン展してください!!
隠れがちな背景に想いを馳せると…
作品の背景に色んなことが隠れているような気がして、パンフが欲しかったんだけど残念なことに売り切れだった。
設定が1915年だそうで、主人公が再起不能とも言える大怪我を負った映画のスタントマン。同じ病院に手の骨折で入院しているのがルーマニア移民の女の子。この2人の病院のベッドでの交流が愛くるしい。
この時期の映画産業は前途洋々らしく、そんな希望ある時代に大怪我を負って生きる気力を無くしつつある主人公と、もしかしたら母国での生活苦から生きる為に移民となって渡って来た少女の交流…死にたい男と生きたい活力の少女の対比があるとしたら、一緒に紡ぐシンプルなストーリーも実に多面的に見ることができそうだ。それこそが鮮烈な色彩となって映像に現れている気もする。後半の妄想は男の負のイメージに傾き悲劇に終わりそうになるが、少女の生きる活力がアメージングを起こす。終始落下の恐怖に付き纏われていた妄想は、最後水中から跳ね上がって救われるのだ。明るすぎるほどの少女の胸の内には悲惨な過去を思い描くことができる。もし、現実を生きる延びるための必死な想いを、映画という虚構の愉悦に挫折した男が感じることになるとすれば…。2人の妄想は健気で心打つのではないだろうか。
1915年と言う設定とも相俟って、CGを使わない驚愕の映像が圧巻で、石岡瑛子氏のコスチュームがそれに全く負けていないことに二度驚愕。勿論挿話の中にはスタントが散りばめられている。
15年前の初見の感動はなかった
15年前、大学生の時にTSUTAYAでレンタルしてたやつを借りてみて、「これは傑作だ!!」と思っていた作品。自分史上トップ5にはいると思っていた。再上映の話を聞きつけ観覧。期待値が高すぎたのか、私が年を取ってしまったのか、あの時感じた感動はそこになかった。少し残念でした。
圧倒的な映像美は素晴らしかった。これは一切衰えていなかった。きれいだなぁーって感じ。深夜のバーで音無しで流れてたら最高の酒の肴になる映画だと思う。
一方で、ストーリーが全然感情移入できなかった。おとぎ話、作り話だからしょうがないんだけど、脈絡のない白昼夢を見せられている感じだった。
直近、こんな気持ちになった映画が一つあった。「君たちはどう生きるか」だ。作画、映像は素晴らしいが、話が脈絡がなさすぎて、「(宮崎駿も旬を過ぎちゃったなと)少し残念な」気持ちになったあの映画。
映像自体の工夫はいっぱいあって面白い。病院に出入りするいろんな人々がお話の登場人物になってるし、鍵穴の光からお話の象が見えてたり、女の子が左目と右目で指を交互に見るシーンとか、作り込まれた面白い映像はたくさんある。結婚式のシーンとか美しすぎてハゲた。
きっと、自分の感性が変わっちゃったのかな。そう思うことにしよう。
20年近く経っても色褪せないチョー名作。
当時マイベスト作品の1本だった。
ミニシアターだったからか周囲に作品名を告げても?な人が多く、かつどんどんマイベストが上書きされていったこともあり、しばし記憶から遠ざかっていた。
ドラキュラやザ・セルで衣装を担当していた石岡瑛子さんが参画していることは鑑賞の大きなモチベーションだった。
スタントで怪我をし入院しているロイの心境を反映させた壮大な叙事詩を、チャーミングで感情豊かな演技が魅力のアレクサンドリアが病院やその周辺の人々を頭の中で出演させ物語を描く世界を映像化。
世界遺産をはじめとした世界中のどこかを舞台に圧倒的なスケール感で描かれる。そこにひときわ存在感を放つ石岡瑛子さんの衣装。スクリーンで鑑賞すれば、その熱量や感動はひとしお。特に引きの映像にはため息が漏れる。
壮大で豪華絢爛な映像美とロイが活躍していたサイレント映画の隆盛期の対比によって映画の原初体験から、この作品のような究極の発展形が体験できる。
公開から約20年。当時の衝撃のままに今年一番の作品になりました。
全108件中、1~20件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。





