「落ちるのは目に見えるものだけでなく。」落下の王国 4Kデジタルリマスター ぱいらさんの映画レビュー(感想・評価)
落ちるのは目に見えるものだけでなく。
最初にこの映画についてだが、鑑賞後に円盤の価格を調べたところ2万くらいする。映画の配信が当たり前の世の中でこれだけプレミアが付くとなると大体配信などない。この作品もその一作。私の周囲にも本作を知らない人ばかり。
それで持って私もこの作品の再上映告知トレーラーがYouTubeのホームに現れるまで存在も知らなかった。トレーラーには凡そ2006年制作のものとは思えないレベルの美麗な映像美が広がっていて、こんなオーパーツを誰も知らんとは流石に内容に難があるだろ………と、疑ってコメントを見れば絶賛の嵐。
何がどうなってるのか分からずデヴィッド・リンチ的ななんかやろ、と先入観マシマシで鑑賞に望んだ。
いや、え?嘘だろこれ?
と目を疑りたくなるような映像美の暴力がそこには広がっていた。見渡す限り妥協一切なしの美術品。衣装、風景、役者、小物、カメラワーク、レンズの絞り具合等など全部がまぁ"綺麗"だった。綺麗すぎる。
しかも本編はほぼCG無しと聞いて本当に隙が無い。そりゃ構想に20数年かかるし撮影も4年かかるわけだ。
それを逆手に脚本にギミック練り込まれていたりするし、マジで神様が今ここに存在させたかのような奇跡のような映画。
その上凄いのは画だけでなく音響周りも。戦闘シーンや日時シーンもサウンドの扱いが巧妙で、1歩引いたカメラワークが多い本作でも一気にこの世界に引き込め魔力があった。
それでいて脚本は万人受け志向。
とにかくこの作品の登場人物たちは落ちるし落とすのだ。それはものであったり、本人であったり、目に見えないものだったり。それを死にたがりの主人公が少女(アレクサンドラ)に作り話をしながら自分の価値観を、、、というのが大筋。
映像が迫真すぎて脚本があまり話題にならないのも致し方ないが、見た人を勇気付ける多幸感も兼ね備えたとんでもない怪作。とっ散らかってるようにみえて物凄く整頓されているのだ。
正直売れてもいいと思うのに、多分おそらく制作体制でのこだわりが強すぎて有名にならなかったのだろう。お陰で版権問題がつきまとっていると予想される。
そのせいで見る機会が限られ過ぎている一作だが、是非全員に見て欲しい力作。
また何度も見たいと思える魅力もある。もしもう一度見られたらまた見たい。
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