落下の王国 4Kデジタルリマスターのレビュー・感想・評価
全236件中、1~20件目を表示
魂を救う物語の力
子どものころ、海外の昔話を収めた絵本全集が家にあり、毎晩寝る前にそれを読むのが日常で一番の楽しみだった。「落下の王国」は、そんな物語の原体験を思い出させる作品だ。
撮影での大怪我と恋人との別離に絶望した主人公のロイは、骨折で同じ病院に入院していた少女アレクサンドリアに即興の物語を語って聞かせ、彼女の気をひく。彼女に病院の薬棚からモルヒネを持って来させ、服薬によって自らの命を絶つためだ。
少女の名前からの連想だろうか、アレクサンダー大王についての語りから入ってゆく物語世界の絢爛なビジュアルは、ロイの現実の暗さとは対照的だ。主要な登場人物は現実でアレクサンドラと面識のある人々の顔をしているので、あの壮大な光景は彼女が想像したものだろう。これが本当に素晴らしい。
本作自体、ロイの物語のごとく明確な脚本がなかったため出資者が集まらなかったそうだ。ターセム監督は自己資金を投じて、CMの仕事をしたロケ地で少人数で少しずつ撮るなどしつつ、4年に渡り20か国以上でロケを行なったという。そんなインディペンデントな作品とはとても思えない映像のスケール。
石岡瑛子の衣装が、この物語の世界観を決定づけている。昔の寓話らしい雰囲気があり、それでいてどこか近未来的に見える瞬間もある。エキゾチシズムが漂い、非現実的で、この感覚は異国のおとぎ話の楽しさそのものなのではと思う。タージマハルにもコロッセオにも負けず、壮大な背景を引き立て物語のイメージを牽引する強さは、石岡瑛子ならではだ。
そうした映像のインパクトに負けず劣らず驚いたのが、アレクサンドリアを演じたカティンカ・アンタルーの愛らしさだ。いや、なんだこのかわいさは。こんなかわいい子からお話をせがまれたら、ロイみたいな下心がなくてもいくらでも語ってしまいそうだ。
重要な役どころをあんなに自然に演じていたのに、当時全く演技経験がない5歳の子どもだったというから驚く。パンフレットのプロダクションノートを読むと、監督の演出の妙だなと思った。カティンカが女優としての自意識を持たないうちにアドリブで撮影する、彼女の勘違いも演出に生かす(モルヒネのEを3と勘違いするエピソードは実際のカティンカの勘違いから生まれた)など。是枝裕和並に子役の活かし方が上手い。
ラストの、サイレント映画のスタントシーンのラッシュで流れるナレーションは、撮影から数年経ったカティンカがなんと即興で当てたものだそうだ。いや、すごい。もう1回観たい。
観る前は宣伝のイメージだけで、もろアート系の難解な映画だったら寝てしまうかも、などと思っていたのだが、よい意味で予想を裏切られた。ロイの即興とアレクサンドリアの想像が織りなす美しいおとぎ話、さらにその背景には、絶望に堕ちたひとりの青年の再生の物語があった。
ロイの語る物語が魅力的なのは、その裏に死をこいねがう彼の心があるからだという気がした。足が不自由になった彼は、アレクサンドリアを惹きつけ、言うことを聞かせなければ死ねない。「アラビアンナイト」のシェヘラザードとはある意味真逆の動機だが、死を希求する心が物語に命を宿らせるというのは皮肉めいていて、なんだか切ない。
ところが、アレクサンドリアとやり取りをしながら物語を紡ぐことで、物語の展開もロイ自身の心も変化してゆく。少女の無邪気さに心を開き、悲劇を頑なに拒む彼女の純粋な思いに触れ、彼は生きる力を取り戻すのだ。
ターセム監督は、自身の失恋がきっかけで、20年ほど構想中だった本作の製作に動き始めたという。ロイの失恋は、監督の経験を反映させたものだ。
モノクロ映画のスタントのコラージュシーンは、ロイのスタント俳優としての復活を想像させると同時に、この映画を作ることによって失恋の痛手を癒した監督の心から溢れる映画愛、現代の映像表現の礎となった先人へのリスペクトをも感じさせる。物語の筋と直接関係ない映像なのに何故かぐっときた。
ロイはアレクサンドリアとのやり取りによって紡ぎ出した物語に救われ、「これを作らずには息もできませんでしたし、私は生きていけませんでした」と語るターセム監督は「落下の王国」という物語に救われた。
本作の圧倒的な映像美は、言葉よりもはるかに雄弁に物語の持つ救済の力を語る。この印象と感動は、映画であればこそ。
癒しと希望の物語が、彩度と緻密さを増した映像美でよりパワフルに
オリジナル版の日本での劇場公開は2008年だが、製作は2006年なのでもう20年近くも経つのかと感慨深い。当時から映像美が絶賛されていたが、このたびの4Kデジタルリマスターで精細度はもちろん、彩度もより豊かに鮮やかになり、世界遺産を多く含む雄大な景観や荘厳な建築群が一層美麗に迫ってくる。
美しいビジュアルが持つ表現力が強化されたおかげで、ケガで入院した病院で出会う青年スタントマン・ロイとルーマニア移民の5歳少女アレクサンドリアが、ロイの即興で語る冒険物語を通じて関係性を変化させていく過程もよりヴィヴィッドに感じられるようになった。優れた物語には人を癒し希望をもたらす力があることを、病院内の現実と空想の物語世界を行き来しながらわかりやすく示してくれる。
アレクサンドリア役のカティンカ・アンタルーは1997年生まれで、愛らしい表情とぽちゃっとした体型も本作の魅力に貢献。キャリアは2011年と12年の短編2本のあと途絶えているが、引退してしまったのならさびしい。ターセム・シン監督は2015年製作の「セルフレス 覚醒した記憶」以降ブランクがあったが、インドで起きた悲劇的な実話に基づく2023年製作の「Dear Jassi」が高く評価されているようだ。こちらも日本で鑑賞できるようになることを期待する。
映像の面白さは現実世界の奇観を凌駕したか
初公開からほぼ20年を経てこれほど評価が上がった映画も珍しいし、4K版のリバイバル上映が連日満席になっているのも素直に凄いことだと思う。石岡瑛子の尖りまくった衣装を筆頭に、再評価されるのも当然ではあるのだが、正直なところ、ちょっと借り物感が強すぎないかという気はする。世界各地の奇観をめぐって撮影された映像の壮麗さが目を引くのはわかるのだが、たまたまそのいくつかに旅行したことがある者として言うと、映像のマジックに見惚れるというより、本当にすごい景色を見つけてきて、そのまま撮影している印象なのだ。もちろんロケーション選びと石岡瑛子要素によって誰も見たことがない映像を作ろうという意図はわかる。ただ「この景色を映画ではこんな風に見せるのか!」という驚きはなくて、しかもほとんどの景色は世界的な観光地であり、例えばクライマックスの城でのバトルの舞台に日本の姫路城とか高野山とかなんなら宮島とか平安神宮とか浅草が選ばれていたら、われわれはどう感じただろうかと思ってしまう。たぶん日本の観光地に石岡瑛子の服を着たアイツらがいればオモロカッコよくて笑ってしまう気がするが、同時にトンチキなエキゾチシズムも感じるのではないか。象徴的なのがバリ島のグヌン・カウィ寺院をバックに儀式としてケチャが行われている場面で、ケチャが持つ文化的な文脈は完全に無視した上でのそのまんまのケチャなので、わあヘンな芸能があって面白い!そのままやってみて!という植民地的見世物精神だと言われてもしょうがないとは思うのだ。考えたらターセムは『ザ・セル』でもダミアン・ハーストの輪切りアートをそのまま再現していて、少なくとも独自のビジョンを持った映像の魔術師というより引用とアレンジの人であり、ときには盗用スレスレなんじゃないかという気がしてくる。少なくともこのやり方はこの20年で世界的に許容されなくなってきており、大なり小なり時代の狭間だったからこそ実現できたアプローチだった。本作は有り体にいって、有名な世界遺産と奇観のパッチワークだ。とはいえ映画表現に引用はつきものだし、あれもこれもダメだと言いたいわけではなく、ただあまりにもターセムのやり口はひねりのない借用なんじゃないかという疑念があるという話。物語的には弱い部分があって、それを映像の凄さと映画愛(これについても思うところはある)で補っているような作品であるだけに、手放しに絶賛はしづらいし、実際映像的な部分での興奮が現実での記憶や体験に勝ることはなかった。と、こう書くともはや「俺はあそこもここも行ってますマウント」と思われることも承知していて、「いや、すごい映画だしすごい映像なのはわかった上で、ターセムという映像作家の本質を考えたいんです」なんだけど、それも言い訳として感じ悪く取られるとは思う。だから一切改行せずに文字を詰め込んで読んでくれる人を限定するような書き方をしています。そこはちょっと腰が引けている自覚はあって申し訳なく思っているのですが、ただこの映画がきっかけになって、見た人の気持ちが映画の中にとどまるよりもさらなる世界へと広がっていったらいいなと心から思っています。
アレクサンドリアは愛らしい。
見る人を選ぶ作品
死にたくなる
みんなこの映画を観ればいいのに *追記:4Kも観たい!
作品紹介などちゃんと読まずに、CGをほとんど使ってなくて地球上の美しい景色が観られる…くらいの認識で観に行った。
結果は、凄かったーー!
観て良かった。
面白かった。
こんな凄い映画、誰にも撮れないって…だが私の周りにはこの映画に興味を持って観に行く人がいない。
素人の私が言うのも申し訳ないが、画作りが凄くいいなーと思った。画面が最近の映画に有りがちなユラユラ揺れないのも良かった。病床でのロイと少女アレクサンドリアのシーンが、毎日違う角度から撮られていたのも良かった。
天才が集結して感性のままに作りたいものを作るから、自主制作で作ってやったぞー!っていう。映画愛と、関わる人たちへのリスペクトも感じた。
うまくいかない事もあるけど、諦めずに映画の力を信じてやっていこうよ…っていう…それは全ての人へ通じるメッセージ。
少女役の子の凄さが観てるうちにわかってきた。天才子役とかそんな言葉では表現出来ない、この子は凄い!最後までこの物語を引っ張っていき、エピローグではタイトルじゃないけどこの子の全てに落ちたーーー。
猿にも泣かされた。あのウルウルした瞳…CGじゃないんだよね、「この映画では動物に無理させてません」ってエンドロールにあったよね、英語だったから知らんけど💦💦
追記*
最終上映日が迫って来てるので、思い切って友達Aに勧めてみたらCさんと二人で観てくれた!(大丈夫かな〜とちょっとドキドキ)
私も皆さんのレビューを読んで気付きも有り、2回目観なきゃと再びゴー。
結果は、、、
二人とも「観て良かったー」との言葉と感謝までされた。よっしゃ、これで信者が二人増えた…違うかっ。「子供がとっても可愛いぃ、演技が上手い!」と、アレクサンドリア大絶賛でした。
私も2回目はアレクサンドリアの見てるものや、何気ない仕草や話し方…「やっぱりこのシーン大好きだ」と確認出来た。
何でだろう?と考えたら、やっぱり自分の子供時代に通じるものがあるからで。光が光であって、影が影だった「あの頃」なんだよー…って、何言ってるか分からないですね。ともかく、より解像度が上がって楽しくて、ザワワも来たし、1回目より泣けた。ロイも美男子なだけでなく深みがある目をしてるのに気付いた。
当地域でも4Kリマスターでやってくれたらもっと盛り上がって、口コミでもっとお客さん入ると思うので是非「4K」やって欲しい!!パルコ浦添はこの映画をほっといてはいけないと思う。
芸術を感じ取れてこそ映画は何倍も面白くなる
大人の自暴自棄に幼子が巻き込まれていいはずがない、と思いつつやはり夢も愛も失った彼にとって少女が希望の光のように感じたんだろうなぁ。芸術的な風景と衣装、カメラワーク、派手さはなくとも目に焼き付くような描写は素晴らしいんだと思います。自主制作とは思えないくらいの壮大な作品。ただ、何度も見たいかといえば私にとってとはそれほどじゃなかったです。私に芸術を感じ取れる能力があまり備わってなかったのかも。その芸術を感じ取れてこそ映画は何倍も面白くなるのでしょう。また違う時に見たら感想も変わるかもしれない。
少女の願いと想像の世界がロイの命を救う、彼女のための物語がいつの間にかロイ自身を奮い立たせるものになった。やっぱり物語はハッピーエンドじゃなくっちゃね!
芸術的な作品の視聴には鑑賞者の理解力と感性が必要…。
複数のお知り合いがSNSでおすすめをしていたので興味を持ち三が日から鑑賞へ。
作中でほとんどCGを使わず、実際の世界遺産などを舞台に世界中のロケ地を使って撮影し、2006年に上映された幻の作品の4Kリバイバル、という前情報は入れて行ったのですが、それ以外のストーリーなどの情報はほとんど入れずに鑑賞。結果的にはあらすじくらいは頭に入れてから観に行くべきでした。
主軸となるストーリーがあるのですが、劇中のお伽話のシーンとその御伽噺を語る現実のシーンが細かく入れ替わるので、本筋を理解していないと今スクリーン内で何が起きているのか理解しきれずに置いて行かれてしまうような瞬間がありました。
でも現実の世界遺産を色取り取りに切り取ったその映像美は圧巻で、何が起きているかわからないのに涙してしまうような瞬間もありました。
終演後、レビュー解説を見てストーリーを理解し改めて感動。アーティスティックな作品を楽しむには鑑賞者の理解力と感性が求められると痛感しました。
ストーリーを理解してからもう一回観れば、全く違う印象になると思います。
眼をみはる美しさ
映像美もよかったが脚本の方が気に入った
映像美が話題になっていた本作。20年近く前に作られたものだからちょっと粗いのかなと想像していた。そもそも撮影されたロケーションがすごいなと思っていたが、撮影アングルが確かにきれいだった。6人の男たちが謎の位置に配置されている構図はなかなか芸術的。たしかにこの映像美は話題になる。
でも、個人的には脚本がよかった。打ちひしがれて、人生に希望を見いだせない男が、1人の少女に即興の物語を語り聞かせていく。若干わかりづらいところもあるが、1人の男が救われていく流れがいい。
そしてタイトルの「The Fall」だ。所々で「落下」というタイトルを思い出させるシーンが出てくる。ちゃんとその意味を納得できる脚本がよかった。そして、最後のレトロな映像たち。映像美もすごいが、再生の物語としてちゃんと記憶に残る映画となった。
手元に残したいお守り映画
ずっと気になってた映画。
観ることができて嬉しい。
怪我と失恋で絶望している男性と、純粋な少女。
純粋ゆえ無知な幼い少女を操って死ぬための薬を入手しようと画策する男性。
純粋無垢な少女の要求に絆されて結局ハッピーエンドにしていく展開は大っっっ好きです。
無理矢理でもいい。ハッピーエンドが観たいんだこちらは!!!!
正しく観たい映画でした。
涙ながらにハッピーエンドを求める少女とのやりとりに泣いてしまったよね。
純粋って残酷だけれど、だからこそ絶望の中の希望を見出せるんだと思う。
良い映画でした。
映像が、画面が、どこを切り取っても綺麗。
飾れるようパンフレットに穴があいてるのも良いね。確かに飾りたくなる。
初回限定版パンフレットは公開3日目なのに買えませんでした。甘くみていました。
あとはDVDやらディスク化してもらいたいんですが…
ありがとうありがとう
前情報ほぼなしのまま鑑賞! 主人公の女の子の仕草や表情、行動が5歳...
前情報ほぼなしのまま鑑賞!
主人公の女の子の仕草や表情、行動が5歳の子どものリアリティでていて良かった!!
どの指の足触っているでしょうかゲームのときのウソ、本当は「果樹園での手伝いはやめさせるように」と医者が言っているのに、お母さんにウソをつくところ…5歳ながら色んなことを考えていて、そして優しくて、それだけで涙が出そうになったよ😭
全体を通して、主人公の目線をそのまま映し出していたけど、説明が少なすぎるわけでもなく、見やすかったなぁ
叙述詩に関しては、もちろん画がものすごく綺麗だったけど、結構シュールなシーンが多くて飽きなくておもろかった😂だんだんと、2人で作っていくお話になるのが、よかったなぁ
薬棚から落ちるシーンで、時計仕掛けのオレンジを彷彿とさせるかんじの断片的な映像が出てくるんだけど、そういう映像が私は好きなのでめちゃくちゃよかった!あのシーンだけもう一回みたい〜
自分次第で希望や救いも描ける
落下の物語
石岡瑛子さんの展覧会で衣装+柱や壁でこの映画のワンシーンを観てから観たいと思っていました。殆ど内容は知らずにみたのですが、カルト的人気といったようにきいていたので、勝手にパンズラビリンスみたいな映画を思っていたのですが、もっと素直な話でした。素直であたたかいお話。
衣装はとても素晴らしかったし、映像も綺麗でしたが、もう少し短くできたんじゃないかな、とかわかりやすすぎるお話に後半個人的にすこしばかりつまらなく感じてしまいこの点数にしました。
今回観た映画館で特典があったのですが、入場時点に渡すのではなく、席につき予告編が終わりそうな頃にスタッフがひとりひとりに渡しにきていたのが珍しかったです。
今回観たキネカ大森さん多分恐らく初めていきました。
PONTAパスのauウィンターなんとかで1200円だったのもあって選んだのですが、デパートの上の映画館でロビーは狭いのですが中が結構大きい。席に段差ないがスクリーンが上にあり(スクリーンが大きい)首を上にしてみるタイプ。
あとなんかスタッフさんたち基本そこまで愛想ないんだけど、こうおっとりと丁寧な方々たちだなあと思いました。全員にそう感じたからそういう雰囲気の映画館なのかもしれないなあ
全236件中、1~20件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。









