「無知との遭遇」アンダーカバー 二つの顔を持つ女 映画イノッチさんの映画レビュー(感想・評価)
無知との遭遇
この映画を観るまでは、スペインのテロ組織の存在すらも知らなかった
命がけで、人生を賭して行う『潜入捜査』とは・・・
以下のセリフは、最初と最後の2回出てくる
そこに監督の思いが込められていると感じた
家族や友人とも疎遠になり、
いつ終わるのかも不明で、四六時中、撃たれる恐怖におののく日々
死んでも殉職とは見なされず、犠牲は闇の中に
しくじれば刑務所へ行くし、バレると殺される
成し遂げても称賛さえない仕事
秘密を知るたった1人のサルセド・アンヘル(ルイス・トサル)警部が
もし、死んだり裏切ったりしたら全てが水の泡なのに
あまり知らない上司から提案されて、
即座に決断できるほど信用できるのが不思議だ 若気の至りか?
上に行けば行くほど、官僚化し、
自身の出世のことしか考えず、部下を平気で駒として扱う
もっと上は、絶対的に信じられない『国家』
警備隊に向かって「お前らも犬だ」と叫ぶメンバーだが
確かに、政府が進める「原子力発電」に反対するのは、
当然の正統な行為だと思うし、それを結果的に擁護する警備隊は犬そのもの
バカな発電は即刻止めるべきなのは、日本でも同じだ
今の政治の闇が明らかになると、絶望感に陥り
諦めるか、あるいはテロに走る輩がいるのも、少しは分かる
テロ組織 ETA(バスク祖国と自由)が59年間で殺した人数は850を越すという
彼等が行った残虐行為は許せないし、やり方も間違っているけれど
国や政府等が犯してきた罪は、その何万倍にも及ぶのだ
カロリーナ・ジュステ演じる潜入名アランチャは、監督の名前と同じ!!
自分とオーバーラップさせていたのかな
実話での潜入捜査官が実際に使っていた偽名も「アランチャ」(アランサスとも呼ぶ)
偶然すぎない?
劇中での本名はモニカ・マリン 彼女の鬼気迫る演技に拍手を贈りたい
車検証でケパにバレそうになるシーンはドキッとしたが
隠しマイクを部屋に設置している際に、ケパが訪ねて来るシーン
ETAの人物ファイルのコピーを撮ってる最中に、ケパとポロが戻るシーンも
これが実話に基づいた作品だと分かっているからこそ、半端なく緊張した
次第にケパ・エチェバリア(イニーゴ・ガステシ)に心を開き一線を越えてしまうが
それをマイクで拾ったアンドレア
彼女がすかさず音声を切ったのはさすが! 男好きの彼女は察しがいいし
同じ女性としての思いやりでもあったと思う 6年間もご無沙汰なんだもんね
その後、刑務所職員を襲ったことをケパが自慢気に話すのを聞いたモニカは
風呂で、全ての汚れを洗い流すかのようにゴシゴシと体をこする
その後も、首にキスされた直後に嫌そうに拭き取るシーンも印象的
モニカが安心できた唯一の相手は、飼い猫だったけど
公衆電話で実家に電話したモニカは、
とんちんかんな受け答えをする母親の元気な声を聞きながら
無言で泣くシーンは、胸が締め付けられた
セルヒオ・ポロとケパが捕まった後の検証現場で、
捜査官がモニカの猫を探すため、「スア」と呼ぶことで、
モニカが警官だったことが、そこで2人は気づくという結末が粋だね
1991年 :潜入START
1997年 :ケパ・エチェバリアと、出会う
1999年06月:セルヒオとケパはモニカの活躍で逮捕される
2011年09月:自分がスペイン旅行した際には、まだETAは活動していたなんて
2011年10月:最終的なテロ活動の中止を宣言
2017年04月:完全武装解除を行った
2018年05月:組織の完全解散を正式に発表し、59年にわたる活動に終止符を打つ
2019年 :バスクチーズケーキが日本で流行る ケパ釈放
2029年 :セルヒオ・ポロ刑期終了予定
