「「総集編」ではなく、死滅回游への導火線」劇場版 呪術廻戦「渋谷事変 特別編集版」×「死滅回游 先行上映」 こひくきさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 「総集編」ではなく、死滅回游への導火線

2025年11月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作を「総集編映画」だと思って劇場に足を運んだ人は、きっと面食らっただろう。情報を整理してくれるわけでも、物語をわかりやすくまとめてくれるわけでもない。むしろ、これまでの“呪術廻戦”を理解したい人ほど置き去りにされる。なぜなら本作は、「整理」ではなく「再燃」のために作られているからだ。

編集の手つきは、物語を要約するものではなく、感情を再構築するものだ。五条封印の喪失、虎杖の絶望、宿儺の覚醒。MAPPAはそれらを時系列ではなく、感情の波として再配置している。観客の脳ではなく、神経を刺激する編集。テレビ版の「理解」より、劇場版の「熱量」を優先した明確な意図がそこにある。

要するに、『渋谷事変 特別編集版』は“総集編”ではない。死滅回游へ観客の情動を連れて行くための助走装置だ。説明を削ぎ落とし、余韻と痛みだけを残す構成によって、観客を「わかった」ではなく「続きを見たい」という衝動に導く。いわば、シリーズの“感情温度”を維持するための作品である。

構成上も、終章ではなく前章──。五条の封印で終わるのではなく、乙骨と伏黒、そして宿儺という次の主軸を暗示して幕を下ろす。テレビアニメ第3期「死滅回游」への橋渡しとして、感情を中途半端なところで切ることで、観客の内部に“未完の熱”を残す。あえて消化不良にする勇気こそが、シリーズの継続性を支えている。

本作を総集編だと思って観れば意味不明。だが、「死滅回游の前夜祭」だと理解して観れば極めて戦略的な構成だ。MAPPAと東宝は、作品の終わりではなく、体験の継続をデザインしている。理解を求めず、情動を点火する──現代アニメシリーズにおける新しいカタチを見たように感じた。

こひくき
ゆきさんのコメント
2025年11月9日

カッコ良いレビューですね!
ほほ〜う。
唸りました。
まるで(もしや?!)製作サイドの方のような解説と熱量に納得の嵐です!
こひくきさんのレビューを拝読し、本作を思い出しながら、より次作への期待が高まっている午後です♪

ゆき
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