「あと何回、満月を見るだろう」Ryuichi Sakamoto: Diaries manabuさんの映画レビュー(感想・評価)
あと何回、満月を見るだろう
ポール・ボウルズの小説の一節の朗読から始まる。
私たちは、いつ死ぬかわからないから、 人生を枯れることのない泉のように思ってしまう。
でも、物事はすべて、ほんの数回しか起こらない。 実際のところ、本当にごくわずかな回数しか。
教授は「死刑宣告」を受け、この言葉の重みを、音楽で表現し、壮絶な生を全うする。
画中、曲が奏でられるが、特にPiece for Illia(イリアのための曲)のバイオリンの旋律はあまりに美しくも悲しく、涙が自然と頬をつたった。
シェルタリング・スカイの静謐なピアノも、音が消えていく余韻が素晴らしい。
最晩年に作曲されたオーケストラは森や雲そのものといってもよい。
映画ではとりあげていないが、NHKの番組で生物学者の福岡伸一さんと「ロゴス(論理)」と「ピュシス(自然・生命)」の対比について話されていたのを思い出した。
音楽のロゴスを極めた教授が、ピュシスに憧れると。
ニューヨークの自邸の庭、雨ざらしにしたピアノの前で雨音を慈しむ教授の姿が目に焼き付いている。
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