劇場公開日 2025年11月28日

「坂本龍一の「教授」たる所以」Ryuichi Sakamoto: Diaries アベちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 坂本龍一の「教授」たる所以

2025年12月5日
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鑑賞方法:映画館

「Funeral」と題した坂本龍一が自分の葬儀で流す為に作ったプレイリストを聴いている。
収録内容はドビッシーやバッハ等音楽を始めた時から親しんだクラッシック、盟友デヴィッド・シルヴィアンの「Orpheus」有名曲ではエリック・サティ「ジムノペディ」ニーノ・ロータ「太陽がいっぱい」等が入っている。坂本龍一はYMOでのテクノポップや、日本と世界のありとあらゆるミュージックシーンで共同作業した楽曲や自身を象徴する著名な映画音楽、ピアノ曲などを溢れる程持っているが、葬儀で流す楽曲は自身の感性に影響を与えた作曲者たちの音の数々ってところが坂本龍一の「教授」らしさなのかも知れない、。
「教授」という愛称は高橋幸宏が坂本龍一に初めて会ったとき、彼が東京藝術大学の大学院生であると聞き「大学教授にでもなるの?」と尋ねたことがきっかけのようだ。映画内でもあるように2人は兄弟のように親しかったと高橋の妻が話していた。2023年1月、坂本より2ヶ月先に高橋は逝去された。
NHKスペシャル「Last Days 坂本龍一 最期の日々」の方は放映当時見ていた。他の坂本龍一追悼の番組と併せ、Blu-rayにも保存していた。今回この映画を観た後、テレビ版の方も見直した。この番組で国際エミー賞のアート番組部門で最優秀賞を受賞した監督の大森健生(若さに驚く)は映画化にあたり「坂本龍一の驚くべき量と質の記録、音楽史の資料を前に、59分の番組では収まりきらない。坂本さんを描き尽くせない。完全版も作らなければ」という思いがつのったとのことのようだ。特に音楽家としての坂本龍一をちゃんと伝える為にもっと音楽も使いたかったとのことなので様々な楽曲、坂本が拾った自然の音を多用している。明らかに映画作品としての深みが増した。又映画では東日本大震災の津波のリアル映像を使っている。これは坂本自身が深く関わった社会活動を後世にも残す意味合いも込めてのようである。
亡くなれる2日前、ターミナルケアに入った後の2023年3月26日。4人の子どもたたち一人一人と話し別れを告げたその同じ日、東北ユースオーケストラの定期公演をスマホで視聴し、自らの楽曲をベットで酸素マスクを付けながら指揮のポーズをとり、吉永小百合の朗読を聞き最後のひと言(震災で亡くなった子供の亡骸は祖父が見つけてくれた)に「やばい」と声を発し涙ぐむ姿に胸を打たれた。撮影は次男である空音央(ドキュメンタリー映画Opusも監督した)であった。
死に向き合うひとりの人間はその瞬間までに何ができるのか?坂本龍一は最期まで音楽を生み出し続けた。「芸術は長く、人生は短し」合掌。

アベちゃん
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