くり返しの今日をあなたとのレビュー・感想・評価
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🎦きっと、うまくいくと🎦哀れなるものたちの狭間で
映画単体の評価で言うと前半のループ描写はかなり口説く辟易する。中盤からその原因追求とそのループからの脱却がテーマになりだすと俄然面白くなる。しかもそれは一筋縄ではいかない。科学的ループからの脱出がテーマではなく予定調和を前提とした仏教説話的なループがベースになるからだ。それが分かるのにはかなり終盤まで引っ張られてしまうので、その間のギャグ調のテイストが合わないと鑑賞にはかなりのストレスがかかる。映画内で極めて特徴的なのが主人公ジャリンポン・ジュンキアットのファッションである。ロココ調のバストを強調したファッションとその対照的な下半身のファッション、バルーンパンツの組み合わせはかなり目を引く。ここまで来るとあるアイコンに辿り着く。それは🎦哀れなるものたちのエマ・ストーンのファッションである。この二つの物語に共通するのは女性解放の歴史と手段を前者は仏教説話的な輪廻と予定調和的な宿命からの脱却を、後者はキリスト教的な直線的世界観からの創造主と被創造者の自立の物語とそれを支えるヨーロッパ的な放浪譚・ビルドゥングス・ロマン的などの特性に対し、仏教的なループからの脱却はアートマンの存在が大きい。アートマンと言うと、熱心なヒンズー教徒(インド・マハーラーシュトラ州ナーグプル出身で、シンド人家庭に生まれとある)でありながら、仏教的、ニーチェ的な思想の作品を多く作っているラージクマール・ヒラーニ監督作品の🎦PKや🎦きっと、うまくいくなどにも通じる、宗教的呪縛からの脱出と言うテーマともリンクする。女性解放史の観点や社会的弱者の現状打破をそれぞれの思想・宗教的背景をベースに極めてエキセントリックな映像表現・シナリオ設定で語る三監督の共通点が図らずも本作品をきっかけに見えてきた点は面白かった。もう少し全体を整理し物語に汎用性をもたらすと世界水準の監督になれるのではないだろうか?まだまだローカル感が否めない。
あと最後にこれはネタバレのひとつにもなるが、ヨーロッパの博物館学を学んだ主人公たちの展示物が何回も倒れ破損する現象はやはりリアリティに掛ける。のちにまさかとは思ったがネジが締まって無いのが原因と言う事で一つの現象のピースが解決していくのは本末転倒である。アレをネタにしたら鼻白んでしまう。そこはもっと専門的に徹底すべきディティールと言えよう。
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