笑えない世界でものレビュー・感想・評価
全2件を表示
思い切った配役でした
他作品の名前を出してしまうのは大変恐縮ですが、少し前に見た「愛されなくても別に」と同種のテーマを扱った作品だと思いました。
このような重いテーマを描くには、非常に魅力的な女性キャストの登場が不可欠なのでしょう。
主要キャストの2人を中心に描くことに決め、彼女たちの親との対峙も直接には描かなかったのが良かったです。予算やキャスト面での制約はあったのでしょうが、それでもそこまで思い切るのは大変難しいと思うため、評価したいと思います。長野の冬の風景も美しく描かれ良かったです。
ストーリーには、さすがにやや無理のある部分もあったかと思います。クズ工場長の経営する町工場があまりに劣悪な環境すぎて、凛と出会うまでの間、優花が勤め続けられた気があまりしない、というのがひとつでした。
また彼女ら2人、終盤シーンで希望へ向けて歩き出すとはいえ、あまりに着の身着のまま状態で出てしまったように見えました。その日の晩以降の当面の期間、どう乗りきっていくのか想像し難い、というのがもうひとつです。クズ工場長のような人物にまた出会ったりせずに、希望への一歩を踏み出せたのか、非常に心配に思いました。
優しい花は凛と咲く
タイトルと、「この映画に共感する人がいませんように」というコピーに惹かれて。
想起したエグみはなかったが、その分リアルだった。
僅かないぢめ描写と、起床の様子や部屋の状況で必要な情報が掴める導入が上手い。
登場人物は主役2人と工場長のみで、あとはいじめっ子3人、エキストラもほぼ映らないミニマムさ。
予算の面もあるかもしれないが、工場長含むメインキャラの狭い世界には合っていた。
工場長をはじめとした“世界”の理不尽に対し、主役2人が絆を深めるというベタな話ではある。
でも、徹底したリアルさがチープさを感じさせない。
所々に良心が覗いた気がしたし、居酒屋ではどつき漫才にすら見えたが、工場長はやはりクズ。
事あるごとに「殴る」と言う優花も実行には移せず、ありがちな刃物を持ち出すシーンもない。
あくまで優花と凛の静かな交流を軸とし、表情や台詞の温度感がしっかり奥行きを与える。
役者やカメラなどへの信頼がないと、ここまで削ぎ落とした演出は出来ないのではないか。
最後は「笑えない世界でも」から「笑える世界なら」になったような、微かな好転で締める。
凛が本当に喋れたのかが曖昧なのも好み。
ほとんどに字幕は付けてくれてたが、そうでない文字が非常に読みづらかったのは難点。
BGMは安易だが、使用が抑えてあり気にならない。
主演2人が魅力的だったし、特に凛の徐々に変化する表情や態度の塩梅がとても自然。
工場長も嫌な役をしっかりこなしながら、「喋れないなら言え」とか、最後のキャバクラでクスリ。
情報と描写の取捨選択も適切で、余白を残しながらこの尺の中で上手く纏まっていた。
個人的には、工場長より凛の母の方がクズ。
全2件を表示

