ハード・トゥルース 母の日に願うことのレビュー・感想・評価
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巨匠マイク・リーにしか紡ぎえない有機的な人間模様
この主人公は強烈だ。目覚めと共に怒りを爆発させ、買い物中でも、美容室にいる時でさえ周囲への攻撃が止まらない。まるで何かが視覚に入る前からすでに攻撃の準備が整っているかのよう。もしもあなたにとってこれが初めてのリー作品なら大きな衝撃を抱くはず。でも逆に巨匠リーをよく知る人は、一向にやまない口撃に笑みすら浮かべ、「この女性の心理では何が起こっているのか」と探究モードが起動していくことだろう。リー作品には脚本がない。キャストは皆、監督との数カ月に及ぶ共同作業でシチュエーションを与えられ、それに対する即興演技を練り上げ、徐々に作品としての一つの流れが形作られていく。だからこそ彼の映画は、有機的な感情の交錯こそが全ての要となるのだ。『秘密と嘘』以来となるマリアンヌの突き抜け方は相変わらず素晴らしい。何一つ”答え”が提示されないのもリー作品でおなじみ。暗転と同時に、突き放された余韻がズーンと沁み渡る。
人物づくりの即興性に注目
ロンドンやNYでは去年の秋に上映されていた作品。今回日本の宣伝では触れていないようですが、この映画の最大の注目ポイントは、その人物像。
この映画に写し取られているのは、撮影スタジオやロケ現場に俳優と監督が行って、そこで長い議論と即興的な演技、カメラテストを繰りかえしながら「その場で」作りあげられた登場人物たちと言葉・表現。それを精密な脚本に起こしてカメラを回すので、「即興的な演技」「アドリブ撮影」ではないんですね。あくまでクラシカルな映画作りです。しかし、そこに映っているものは俳優たちの個性と人生が色濃く反映したその場かぎりの姿、という面白さ。
だからこの映画は、なんということのない話であって、主人公は終始ぶつぶつ文句を言っているだけなのに、画面は『ドライブ・マイ・カー』のようにスリリングです。半ばドキュメンタリーでもあり、半ばフィクションでもある。その緊張の糸を切らないように、音楽はきわめて抑制的にしか使われていません。
これを単にハリウッドのよくある感動家族ドラマと考えると、その正体をとらえそこなってしまいます。俳優と俳優の関わり方の迫真性に、ぜひ注目してください!
不安が全ての元凶だよな。。
孤独は何よりも人を傷つけるのかもしれない。
パンジーは心配事で頭が一杯。
でも不安をぶつける場所がない。
行き場を失った鬱憤がいつの間にか口撃となって他人を傷つけて、自分も同時に返り討ちにもあってしんどい日々。
多分、どの人も何かしら大変な日々を送っているけど、そのしんどさを分かち合えるから元気に生きていけるんだなと思った。
パンジーの鬱憤は、本人にもコントロールできず、全方向に無差別に発射されてしまい、他人を傷つけてしまう事で自分も傷つけてしまう。本人もとてもしんどいと思う。
でもあの口撃は正直一緒にいるのが辛い。
他人なら距離を距離を置けるけど、家族は逃げ場がなくてみているだけで辛かった。
あの家族のその後が気になるわ。
しかし、監督80代、人生集大成の時期に撮られた作品だと思うとなかなか感慨深かった。
怒り
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