「揺れ動く性的嗜好」クルージング himabu117さんの映画レビュー(感想・評価)
揺れ動く性的嗜好
1980年製作、公開当時は話題にはなったけど、興行的にはイマイチ。それもうなずける、今見ても、かなり過激な描写。男、男、男、そりゃアレルギー起こす人出るでしょう。それはさておき、内容は、十分鑑賞に耐えうる、人間の性の曖昧さと悲しさ、万国共通。
1980年当時は、タブーな世界
今でこそ、you tubeやネット検索で、その世界を知ることはできますが、
映画が作られた、1980年当時は、同性愛当事者しか知らない世界。
いや、当事者でもこの映画の過激な世界があるとは、知らなかったのでは。
それくらい、ショッキングな、男同士の世界。
それも、かなりハードなゲイ。
日本と違って、キリスト教的教えの強い国。
同性愛はご法度なお国。
まあ、法律的に罰を受けるというわけではないですが。
日本ほど、寛容ではありません。
そんな、ニューヨークのアンダーグランドで起こる、殺人事件。
潜入捜査官アルパチーノが、男だけの世界に。
ミイラ取りがミイラに
そんなことを感じさせる、ラストではあります。
おおよそ人間には、同性愛的要素があると。
それが、多いか少ないか、あるいは気づかないとか。
それは、どうでもいい問題なのですが。
大事なのは、同性愛、異性愛ときっちりと区分けしたがること。
人間百人いれば、百通りの性的嗜好があるということ。
おとり捜査で、男同士の世界に潜入した主人公。
そういう状況では、自分の同性愛的部分に気づく、あるいはめり込む。
十分にありえるでしょうね。
もとの世界に戻って、異性愛に戻るという人もいるし。
そうでない人も。
環境が、性欲を同性に向けさせ、その環境が変わると、異性愛に戻り。
そのくらい、性的傾向なんて、わからない、いい加減なもの。
性欲だけが肥大化するゲイの世界
とにかく相手を探して、ゲイの世界をさまよい歩く。
男の性欲って、愛がなくてもOK.
とにかく、目の前の性欲だけを満足させたい。
そんな、ニューヨークの男だけの世界がこれでもかこれでもか。
鑑賞に耐えないと思う人も。
それは、しかたないよね。
それをこえて、キリスト教国のタブーの世界を描いた作者に拍手。
アルパチーノが、またいい。
役者だなとつくづく感心する。
自らの性的嗜好が揺れ動く、そんな様を抑えた演技で。
さあ、あなたの性的嗜好は、この映画鑑賞で揺れ動くでしょうか。