劇場公開日 2025年11月15日

「全国の学校で上映してほしい」はだしのゲンはまだ怒っている タマムシさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 全国の学校で上映してほしい

2025年11月29日
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子ども時代を広島県内で過ごした。
毎年8月6日は平和学習のための登校日。
講堂で「はだしのゲン」の実写版映画を観たり、美しいメロディーに《空に太陽が輝くかぎり 告げよう世界に 原爆反対を》という歌詞が印象的な「夾竹桃のうた」を合唱した。また小学校の各教室の後ろの本棚には漫画「はだしのゲン」が並んでいて、床に座り込んで読んだ。
それらは全国の学校共通の取り組みかと思っていたが、そうでないと知ったのは大人になってから。

子どもながらに、「はだしのゲン」を通じて原爆の恐ろしさ、戦争の悲惨さを痛烈に感じたし、二度と繰り返してはならない、繰り返さない、と心に誓った。その想いは、今も変わらない。

この作品が、作者である中沢啓治さんの実体験をもとに描かれたものだということを、今回、初めて知った。
そう思って読むとますます、作者が伝えたかった想いがリアルに胸に迫るだろう。

そんな「はだしのゲン」が、教育上不適切だとして、広島の学校の本棚から撤去されていっているという。なぜなのか?

世界で唯一、実戦で原爆投下された被爆国から世界へ伝えるべきメッセージが、本作には散りばめられている。
右とか左とか、保守とかリベラルとか、、、そういう次元の問題ではない。
これは、戦時中に生きた一人の少年の眼を通して被曝の実態を知ることのできる貴重な教材だ。
本作を観て改めて、漫画「はだしのゲン」を読み直したくなった。

日本の未来をつくっていく子どもたちの心に、戦争未体験の大人である私たちが、説得力を持って不戦の種まきをすることは容易ではない。
この映画を、全国の小中高校で上映してほしいと、心から思った。

映画の中で、被爆経験者として、「(漫画で描かれていることが)本当と思わない人がいるけど、そんなことはない。事実は、あの絵以上ですから」と証言した方も、もうこの世にいない。
原爆を体験した人の声を聴き、映像に残すことの大切さを痛感した。

余談ですが、講談師の方のセリフの「なにか、白いもんが落ちてるきよるよ」の“きよる”の部分が広島弁のイントネーションとだいぶ違ってて違和感を感じたので、できたら直してほしいな〜と思いました。

ひげしっぽ