劇場公開日 2025年10月10日

「牛とマリ=リーズが可愛い。」ホーリー・カウ あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 牛とマリ=リーズが可愛い。

2025年10月12日
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鑑賞方法:映画館

仏語タイトルは「VINGT DIEUX」、ブルゴーニュあたりの俗語で「なんてこった」という意味になるらしい。カンヌの「ある視点」に出品するにあたりタイトルを同じ意味合いの英語「Holy cow」に置き換えた。牛つながりということ。
舞台になるジュラはフランス東部、ブルゴーニュ=フランシェコンテ地方にある。小説と映画の「ショコラ」で有名なコート=ダールのほん近く。でもあんなおとぎ話のような可愛い街並みは登場せず、泥臭い農場や工場ばかりが映し出される。
二十歳ぐらいという設定なのかな、仕事もせず、父親のチーズづくりも手伝わず、ダラダラ日々をおくっていたトトンヌ青年が、父親が死んでしまうことによってチーズづくりにチャレンジする姿を描く。ただコンテストの賞金目当てという動機も不純だし、チーズ工房の息子のクセに何も知識がない、豆腐でいえばにがりを入れなきゃ固まらないということさえ知らない、原材料の牛乳は盗んでくる、といった無茶苦茶でそりゃあうまくいくわけないよね。でもなんか清々しい感じがして後味は悪くないです。
そういや映画の宣伝ではケン・ローチを思わせるっていうものがあったけどなんでそうなるかな。私の連想したのは根岸吉太郎の「遠雷」でした。農業青年の苦悩っていうところかな、もっとカラッとしてるけど。
妹ちゃんは言動は可愛らしいけど顔がとても大人びていて。可愛いのはトトンヌの彼女であるマリ=リーズの農場の牛と、マリ=リーズ本人。体つきがガッチリしていて欲望に素直な感じがとても良いです。演じたのはマイウェン・バルテルミーという新人女優さんで今年のセザール賞をもらいました。女性のrevelation賞というもので私の理解では「今年もっともビッと来た新人」というイメージかな。同感です。

あんちゃん