「日本人でも共感しやすい青春物語」ひとつの机、ふたつの制服 Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)
日本人でも共感しやすい青春物語
高校生が感じる受験へのプレッシャーや学歴や学校名によるレッテル貼りをして格付けしようという社会的価値観や文化は、科挙の影響下にあった東アジア各国に共通したもので、当然その中の一つに入っている日本から見ても台湾の状況を何ら違和感なく受け止めることができる。
地方都市に行けば男子の「一高」と女子の「一女」がそれぞれのトップ校で、みたいな価値観は日本でも普通であろうし、教室の黒板に「共通テストまであと⚪︎⚪︎日」とか書いて、その周りに必勝だの加油(がんばろー)などと書かれていているのもお馴染みの光景に思える。
そんな中、同じ「一女中」でありながら、昼間部と夜間部で制服そのものは同じ緑であっても、胸の刺繍の色が昼は太陽の黄色、夜は月の白と区別されており、否応なしにコンプレックスが助長されるようになっている。
口ではみんな一緒だ、平等だと言いつつも、確実に格差は存在し、その格差は、生徒たちの家庭環境や経済力に起因しており、結果的に学力差という形で表れてくる。もちろん、日本でも、在学生の家庭の平均収入額が断トツに大きいのが東京大学であるというのは周知の事実だ。
しかしながら、その格差は常に固定されているものではなく、努力によって逆転も可能だというのもアジア的な発想にも思える。
共通試験の結果、小愛がどこの大学に入れたのかをあえて明示しないのも、そんな大学の名前なんかで彼女の人生にレッテルを貼るんじゃない、というメッセージなのだろう。
なお、『夜校女生』という中国語の原題、 "The Uniform" という英語タイトル、そして『ひとつの机、ふたつの制服』という邦題を比べて焦点の当て方の違いが興味深い。
