「自分が確立していると思っている人を崩壊させることは、彼女にとって最大の愉しみだったのではないだろうか」RED ROOMS レッドルームズ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
自分が確立していると思っている人を崩壊させることは、彼女にとって最大の愉しみだったのではないだろうか
2025.10.14 字幕 イオンシネマ京都桂川
2023年のカナダ映画(118分、G)
裁判を傍聴するトップモデルの異常行動を描いたスリラー映画
監督&脚本はパスカル・ブラント
原題は『Les chambres rouges』、英題は『Red Rooms』で、ともに「赤い部屋」という意味
物語はの舞台は、2022年9月のカナダ・モントリオール
トップモデルとして活躍しているケリー=アンヌ(ジュリエット・ガリエビ)は、モントリオールを震撼させていた「連続殺人事件」の裁判の傍聴に訪れていた
事件は、ダークウェブ上にて「赤い部屋」というサイトを開いた犯人が、そこで3人の少女の殺人をリアルタイム配信したというもので、それは違法な有料コンテンツとして、視聴すらも違法状態となっていた
その事件の被告人はルドヴィク・シュヴァリエ(マックスウェル・マッケイブ=ロコス)で、彼を有罪にするために検察のヤスミン・ジュケイド(Natlie Tannous)が証拠を突きつけ、弁護士のフォルタン(Pierre Chagnon)が応戦するという構図になっていた
裁判長のゴドブー(Guy Thauvette)は陪審員に注意喚起をしながら裁判を円滑に進めていく
そんな中、ケリー=アンヌは裁判よりも被告人と被害者カミーユの母フランシーヌ(Elisabeth Locas)の動向を観察していた
彼女はモントリオールのタワーマンションに一人で住んでいて、会話のほとんどはAIアシスタント・グニエーヴル(声:Ginette Dery)だけで、時折マネージャーのルシー(Nadia Verrucci)と仕事の話をするぐらいだった
動画を観ながらエクササイズをしたり、こだわりのスムージーを飲んだり、ストレス発散はスカッシュで汗を流していた
さらにBTCをはじめとした暗号資産の取引を行いながら、オンラインポーカーでカモを見つけては金をむしり取っていく日々を繰り返していた
ある日のこと、ケリー=アンヌは裁判の傍聴者の女性(のちにクレメンティーヌと判明、演:ローリー・ババン)と関わることになった
地方からヒッチハイクでモントリオールに来て、シェルターを利用しながら野宿をしていると知ったケリー=アンヌは、彼女を自宅に招いて泊める
そして、日課のような野宿から傍聴という行動をともにしていく中で、ケリー=アンヌが「問題の事件映像の内容を知っていること」がバレてしまう
興味本位で観たいというクレメンティーヌを諫める彼女だったが、仕方なくそれを見せることになった
だが、その動画を見てしまったクレメンティーヌは傍聴に行けなくなってしまう
そんな折、彼女の代わりにレポーターの取材を受けたことで、クライアントからの契約打ち切りを喰らってしまう
さらに、カミーユのコスプレをして裁判に潜り込んだケリー=アンヌは追い出されてしまい、ルシーからも契約解除を突きつけられてしまう
だが、彼女は動じることもなく、ある行動にシフトしていくのである
映画は、いまだに見つかっていないカミーユの動画を所得しようとするケリー=アンヌが描かれ、それをオークションにて落札する様子が描かれていく
21.5BTC(当時のレートで約6000万円)ものお金を投入してそれを得るのだが、彼女はそれをフランシーヌに匿名で無償提供を行う
それが裁判の決め手となったようだが、カミーユの部屋にコスプレで侵入してセルフィーを撮ったり、母親にそれを先に見せようとするなど、かなり悪質で異常な状況が描かれていく
彼女がどうしてそれを行ったのかは明確に描かれないものの、彼女の言葉を借りれば「すべてはゲーム」ということなのだろう
被告人が新たな証拠を突きつけられて態度を変える様子を観たかったとか、立場が逆転する様子を観たかったとか、様々な理由があると思うが、一番はクレメンティーヌのような何も知らないのに自説を唱えて決めつけを行うバカに対する「むしり取り」が動機のように思えた
2本目の動画を観たくないという彼女に無理やり見せるとか、一切心の交流を行わないところも徹底していて、さらに自分の人生もゲームだと考えている
そう言った側面が強調されていて、彼女自身もダークウェブで「Red Rooms」を作ってしまう側の人間であることがわかる
ある意味、ヘマをした被告人を追い詰めることに快楽を覚えていて、人格が崩壊するのを見届けることを趣味としているように思える
彼女にとっては、人格をひっくり返すほどの衝撃を与え、その起因者となることに無償の喜びを感じていて、それ以外のことには興味がないのだろう
そう言った意味においてぶっ飛んでいるのだが、ぶっちゃけFBIよりも有能すぎて、生活には困らないんだろうなあ、と感心した
いずれにせよ、かなり特殊な映画で、普通の人が楽しめるタイプの映画ではないと思う
おもに人間観察が趣味で、その崩壊が好きな人向けの作品であり、その心理ドラマの展開をワクワクしてしまう人向けなのだろう
そう言った意味では自分好みではあるものの、ある種の固定概念が崩壊していくさまは面白いと思う
実生活において影響を与えてそれを観たいとまでは思わないが、多くの人のなかに「マインドチェンジの瞬間を眺めたい」という願望はあると思う
それゆえに、ある程度の需要があるのかな、と感じた
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