「彼女の内に秘められた狂気」RED ROOMS レッドルームズ オパーリンブルーさんの映画レビュー(感想・評価)
彼女の内に秘められた狂気
カナダの裁判所は出入りする際に、飛行機に乗る時のようなセキュリティチェック受けるのね…。日本にはまだ導入されていないけど、性善説に基づいた社会の限界に近づきつつある日本でも必要な手続のような気がする
19歳17歳13歳…(そんな感じだったかな?)
少女への残虐行為を行ない、その映像(スナッフフィルム)を、Red Roomと言われる闇サイトで公開した罪に問われている被告の裁判
主人公ケリー・アンヌは毎回傍聴人として参加してるが、日本だったら傍聴希望者多数で抽選になりそうなものだけど…?
序盤、とにかく法廷劇が長い
被告が防弾ガラス越しに登場し、つまらなそうに椅子に腰掛ける。判事の挨拶、検事と弁護士の長々とした冒頭陳述…。ここらへんは本筋には関係ないので、真剣に観なくてよい
テレビモニターが複数箇所、法廷内に備え付けられてるあたりも日本には無い。冒頭陳述で被害者となった少女達の普段の様子を物語る動画が流れ、被害者の母親らしい女性の嗚咽が法廷に響く
最後に殺害された13歳の少女の殺害動画だけ見つかっていないという点が、この映画のストーリーのキーになる
弁護士の一言一言をメモする熱心な傍聴者マニアや、ジャーナリスト(?)たち
プリズングルーピーのクレマンティーヌは、被告が犯人ではないとテレビ取材に熱弁をふるう
対してケリー・アンヌは終始冷めた目線で被告のみを見つめる
対する被告は法廷内の全てに興味すら持たず、つまらなそうな顔で座っている
スナッフフィルムを法廷で、証拠として上映する段階で、限られた関係者のみへの上映にすることが被害者関係者の嘆願で決定し、傍聴人たちは法廷外に追い出される
クレマンティーヌは何とかして見たいと法廷の扉の前をうろつき、音だけでもと耳をすます
動画の少女らしき命乞いの言葉と悲鳴が漏れ聞こえてきて、ショッキングな映像を目にした関係者らしき人が卒倒し、担架で担ぎ出される
そのあたりから、それまで淡々とした表情を浮かべていたケリー・アンヌの心の様が波のように溢れ出てくる
都会のタワマンの上階に独り住む、モデルという華やかな職業をもつ彼女が次第に暴走し始める
(ちなみに主人公、綾瀬はるかさんに似てませんか?細面で無駄のない、彫像のような顔立ち)
観客が想像だにしない方向に暴走し、我々はひとつの狂気を観るのである
被告が彼女に向けた視線は、カメラを通して我々にも向けられ、彼の熱望はひとつの欲望の頂点――殺意として放たれて、観客は総毛立つ
続くエピソードも、これまた観客の想像の遥か上。
“深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている”――ニーチェの格言を思い出した
流血シーンなど無いのに心底ゾッとするとどなたかがレビュー書いていらして、心得て鑑賞しましたが、まさにソレ
ただ分かりやすい流血・残虐シーンを期待して見に行くと、ガッカリすることでしょうね
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