RED ROOMS レッドルームズのレビュー・感想・評価
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Toast
殺人の様子をダークウェブで見た事をきっかけに犯人にのめり込んでいく女性を描いた作品という事で気になっており、滑り込みではありますがなんとか鑑賞。
特典は本国版チラシでした。
スロースタートだなぁと思った序盤から徐々に徐々に怪しい方向へ向かっていき、ヒトコワをこれでもかってくらい見せつけてくれてゾクゾクしっぱなしでした。
3人の少女を殺し、その上ダークウェブにその模様の動画を上げたシュヴァリエという男の裁判に毎日のように通うケリーの様子を淡々と映していきますが、その淡々さがどんどん気味の悪いものになっていくという変化が興味深い作品でした。
明らかにシュヴァリエの推し活をしているであろう過激的なクレマンティーヌとふとしたきっかけで仲良くなるのですが、よくよく観てみると路上で寝泊まりしながら裁判を待っているケリーも大概だなと思いつつも、明らかに言動が尖りまくってるクレマンティーヌに目線がいってしまうのも妙でした。
TVのワイドショーに電話で突撃してシュヴァリエの無罪を証明しようとしたり、インタビューでもガンガン自分の発言をひけらかしたりする中で、何故かシュヴァリエの殺害動画を持っていたケリーがどんどん映像を見せていくところで違和感が確信に変わりゾッとしました。
目を覆うクレマンティーヌとは対照的にジッと見つめるケリー、もう辞めようと止めようとするクレマンティーヌを無視して2本目の動画を流し出すなどネジの外れた行動をし出してこれまた冷や汗もんでした。
そこから一歩引いて裁判に通うのも辞めたクレマンティーヌなんかお構いなしで裁判に通い続けるケリーはもはや恐怖もんです。
法廷に犯人の好みであろうブロンドの髪に青い瞳、しかも制服を着て突入していく様子は流石にゾワゾワゾクゾクしました。
最初からその格好ではなく、青のカラコンを装着し、矯正装置まで装着してニッコリはヤバすぎました。
めっちゃ嬉々としてやっているケリーには恐怖を覚えました。
ただ被告のシュヴァリエはそれを上回っていくものでして、今まではずっと俯いていたのにケリーのその姿を見た瞬間に目をギョロッとさせ、しかも手をウネウネさせて誘き寄せていたりとでヤバかったです。
3本目の動画を手に入れるためにダークウェブでのオークションに突撃し、仮想通貨全ブッパで手に入れた瞬間の静かに勝ち誇った顔は彼女の本性をソロっと出したなぁと思いました。
仕事も何もかも失いながらも手に入れての笑みは何故だか不思議と輝いていました。
若干オチは分かりづらく、被害者の自宅に侵入してみたり、部屋を覗き込んでみたりともう一悶着あるのかな?と思いましたがスッと終わって行ったので、ある程度ケリはつけて欲しかったなぁと思いました。
それでも全編飽きずに1人の女性の静かに狂った様子を眺められるのは最高でした。
末恐ろしや末恐ろしや。
鑑賞日 10/20
鑑賞時間 16:15〜18:15
いまいち
頭の中だけの惨殺シーン
一種のパラフィリア? 凡人の自分には失うモノが大き過ぎちゃって… ...
好奇心が彼女を狂わせる
75点ぐらい。高評価♪
動機を教えてくんなまし。
あらすじ
高層マンションを所有し、モデルの傍らオンラインポーカーで稼ぐ女。
彼女は、拷問・殺人の経緯を録画しダークウェブ上で公開した罪で逮捕された男の裁判の傍聴のため連日裁判所に通っていた。
彼女の目的は、何故この裁判に執着するのか。
最終的に主人公が行ったことは劇中判明するのだが、
達成のための行動がエキセントリックすぎて、ストーリー中の個々のパートで何をしたいのか、何が最終目的なのか、動機は何なのかさっぱりわからない。
閉幕後もそれは判然としない。動機はまるで不明のまま、ゆえに最後まで行動と目的は一致しないのだ。
動機があって目的と行動が一致すると物語としてはスッキリしたと思う。ただ、そうするとここまで印象的な作品にはならなかったとも思う。
なので、これはこれで良いのだ。
カナダ映画ということで漠然と英語のつもりで見に行ったところ
冒頭「Les chambres rouges」の表示。おぅフランス語だったか。
ということで、フランス語圏のケベック州の作品なのでほぼフランス語です。(聞き取れないのでちょっとがっかり。)
ちょっとネタバレ
あくまで個人的解釈ですが
主人公の彼女は、傍聴で仲良くなった女の子(犯罪者に惚れるグルーピー)の対角にいる絶対的正義マンで
ゆえにグルーピーの彼女の目を覚そうとするし、全財産を賭けてでも証拠を手に入れようとするし
奇行に走ってまで罪を認めない被告人を揺さぶろうとする。(でも失敗に終わる。)
ってことじゃないのかなぁ。(やり方は度を越しているけれど。)
さっぱり訳がわからん
自分が確立していると思っている人を崩壊させることは、彼女にとって最大の愉しみだったのではないだろうか
2025.10.14 字幕 イオンシネマ京都桂川
2023年のカナダ映画(118分、G)
裁判を傍聴するトップモデルの異常行動を描いたスリラー映画
監督&脚本はパスカル・ブラント
原題は『Les chambres rouges』、英題は『Red Rooms』で、ともに「赤い部屋」という意味
物語はの舞台は、2022年9月のカナダ・モントリオール
トップモデルとして活躍しているケリー=アンヌ(ジュリエット・ガリエビ)は、モントリオールを震撼させていた「連続殺人事件」の裁判の傍聴に訪れていた
事件は、ダークウェブ上にて「赤い部屋」というサイトを開いた犯人が、そこで3人の少女の殺人をリアルタイム配信したというもので、それは違法な有料コンテンツとして、視聴すらも違法状態となっていた
その事件の被告人はルドヴィク・シュヴァリエ(マックスウェル・マッケイブ=ロコス)で、彼を有罪にするために検察のヤスミン・ジュケイド(Natlie Tannous)が証拠を突きつけ、弁護士のフォルタン(Pierre Chagnon)が応戦するという構図になっていた
裁判長のゴドブー(Guy Thauvette)は陪審員に注意喚起をしながら裁判を円滑に進めていく
そんな中、ケリー=アンヌは裁判よりも被告人と被害者カミーユの母フランシーヌ(Elisabeth Locas)の動向を観察していた
彼女はモントリオールのタワーマンションに一人で住んでいて、会話のほとんどはAIアシスタント・グニエーヴル(声:Ginette Dery)だけで、時折マネージャーのルシー(Nadia Verrucci)と仕事の話をするぐらいだった
動画を観ながらエクササイズをしたり、こだわりのスムージーを飲んだり、ストレス発散はスカッシュで汗を流していた
さらにBTCをはじめとした暗号資産の取引を行いながら、オンラインポーカーでカモを見つけては金をむしり取っていく日々を繰り返していた
ある日のこと、ケリー=アンヌは裁判の傍聴者の女性(のちにクレメンティーヌと判明、演:ローリー・ババン)と関わることになった
地方からヒッチハイクでモントリオールに来て、シェルターを利用しながら野宿をしていると知ったケリー=アンヌは、彼女を自宅に招いて泊める
そして、日課のような野宿から傍聴という行動をともにしていく中で、ケリー=アンヌが「問題の事件映像の内容を知っていること」がバレてしまう
興味本位で観たいというクレメンティーヌを諫める彼女だったが、仕方なくそれを見せることになった
だが、その動画を見てしまったクレメンティーヌは傍聴に行けなくなってしまう
そんな折、彼女の代わりにレポーターの取材を受けたことで、クライアントからの契約打ち切りを喰らってしまう
さらに、カミーユのコスプレをして裁判に潜り込んだケリー=アンヌは追い出されてしまい、ルシーからも契約解除を突きつけられてしまう
だが、彼女は動じることもなく、ある行動にシフトしていくのである
映画は、いまだに見つかっていないカミーユの動画を所得しようとするケリー=アンヌが描かれ、それをオークションにて落札する様子が描かれていく
21.5BTC(当時のレートで約6000万円)ものお金を投入してそれを得るのだが、彼女はそれをフランシーヌに匿名で無償提供を行う
それが裁判の決め手となったようだが、カミーユの部屋にコスプレで侵入してセルフィーを撮ったり、母親にそれを先に見せようとするなど、かなり悪質で異常な状況が描かれていく
彼女がどうしてそれを行ったのかは明確に描かれないものの、彼女の言葉を借りれば「すべてはゲーム」ということなのだろう
被告人が新たな証拠を突きつけられて態度を変える様子を観たかったとか、立場が逆転する様子を観たかったとか、様々な理由があると思うが、一番はクレメンティーヌのような何も知らないのに自説を唱えて決めつけを行うバカに対する「むしり取り」が動機のように思えた
2本目の動画を観たくないという彼女に無理やり見せるとか、一切心の交流を行わないところも徹底していて、さらに自分の人生もゲームだと考えている
そう言った側面が強調されていて、彼女自身もダークウェブで「Red Rooms」を作ってしまう側の人間であることがわかる
ある意味、ヘマをした被告人を追い詰めることに快楽を覚えていて、人格が崩壊するのを見届けることを趣味としているように思える
彼女にとっては、人格をひっくり返すほどの衝撃を与え、その起因者となることに無償の喜びを感じていて、それ以外のことには興味がないのだろう
そう言った意味においてぶっ飛んでいるのだが、ぶっちゃけFBIよりも有能すぎて、生活には困らないんだろうなあ、と感心した
いずれにせよ、かなり特殊な映画で、普通の人が楽しめるタイプの映画ではないと思う
おもに人間観察が趣味で、その崩壊が好きな人向けの作品であり、その心理ドラマの展開をワクワクしてしまう人向けなのだろう
そう言った意味では自分好みではあるものの、ある種の固定概念が崩壊していくさまは面白いと思う
実生活において影響を与えてそれを観たいとまでは思わないが、多くの人のなかに「マインドチェンジの瞬間を眺めたい」という願望はあると思う
それゆえに、ある程度の需要があるのかな、と感じた
好奇心の暴走
惨殺な殺人事件に興味を持ち異常に惹かれた
モデルの女性が事件にのめり込み、取り憑かれていく。
好奇心の暴走。
拷問殺人動画を配信するサイト赤い部屋を
見て、何度も傍聴席にいくとはね。
異常だ。
魅せられた女性は度をこしていく。
犯人と目が合い手を振られたり
被害者の家に忍び込み写真を撮りまくる。
限度を超えておかしい。
思想心理とアディクションの映画。
見るものを挑発的にスリラーしていく。
ダークウェーブに侵入してイカれた
手法で真犯人を追い詰めるとはね。
ポーカーで感情的になる相手の息の根を
じっくり止めるのが楽しいの言葉が
鑑賞後も怖い位じわじわくる。
めちゃカッコいいカットバックがある
3人の連続幼女殺人鬼の裁判がはじまる。被害者でも加害者でも、その親でも、弁護人でも、裁判長でもなく傍聴する女にフォーカスされる。その女を追う。高い知能で高級マンションに住みWebの世界で生計を立てる隙のないモデル。この女はこの女でとても怪しい。で、「いったいこの事件とこの女にどんな接点があるのだろう?」という一点でずっと引っ張っていくサイコサスペンス。確かにこれはあまりないタイプ。
事件は鬼畜だけど一切その映像は出てこず(声は聞こえる)、自然と3つの事件の収録映像で1つだけない、という事実にフォーカスされて、、
まあ後半のいっちゃってるアレとアレのカットバックがみもの。あと音楽。法廷でやべえのがいるっというので帰り道に増村の「妻は告白する」を思い出した。でもこっちは傍聴人というのが新しいですね
グロい映像無し。その点は安心してください。
人気モデルの抱いた“好奇心”の先にあるもの
【イントロダクション】
連続殺人犯の裁判を傍聴するファッションモデルの抱く“好奇心”の行く末を追う、カナダ発のサイコスリラー。
主演を務めたジュリエット・ガリエピは、実際にモデルとしてのキャリアも持つ。監督・脚本は、短編・長編フィクションでカナダの映画祭で度々注目を集めてきた鬼才、パスカル・プラント。
【ストーリー】
カナダ、モントリオール。人気ファッションモデルのケリー=アンヌ(ジュリエット・ガリエピ)は、モデルとして順調なキャリアを積み、タワーマンションで優雅な生活を送っていた。隙間時間はオンラインポーカーで収入を得ており、ストレス発散はジムでのテニス。
そんな順風満帆な生活を送っている彼女の新しい日課となったのは、10代の少女達を拉致、監禁、拷問し、その様子を“赤い部屋(RED ROOMS)”と呼ばれるディープウェブ上で配信して収益を得ていたとして起訴されたルドヴィク・シュヴァリエ(マクスウェル・マケイブ=ロコス)の裁判を傍聴する事だった。他に類を見ない凶悪な殺人事件は世間の注目の的となり、“シュヴァリエ事件”としてマスコミは連日報道した。
裁判初日。検察と弁護側は、冒頭陳述で双方の意見を主張し、陪審員に公平な判断を求める。 FBIは事件で配信されていた3件の犯行映像の内、2本の映像を入手して提出していたにも拘らず、弁護側は犯人が映像内で目出し帽を被っていた事から、シュヴァリエの犯行を否定した。見つかっていないのは13歳の少女カミーユ・ボーリュー(エリザベス・ローカス)の映像であり、彼女の母フランシーヌは証言台でシュヴァリエの犯行を訴える。ネット上には彼のカルト的なファンも存在し、細身で弱々しい印象を与える風貌の彼の犯行を否定する意見もあった。しかし、被害者である少女達の遺体が、彼が以前住んでいた住宅の裏庭から発見された事もまた事実である。
閉廷後、マスコミが傍聴者への取材に押し寄せ、ケリーも取材を受けるが、取材陣はすぐさまシュヴァリエ擁護派のクレマンティーヌ(ローリー・ババン)に殺到する。彼女は「目出し帽から見える目だけでシュヴァリエかどうか判断する事は出来ない。映像も現代ならいくらでも捏造出来るフェイク映像に違いない」として、涙ながらにシュヴァリエの無罪を主張した。
帰宅後、ケリーはフランシーヌとカミーユについて調査を開始する。
後日、限られた裁判の傍聴席を確保する為、裁判所近くの路上で眠るケリーにクレマンティーヌが話し掛けてきた。共に裁判を傍聴し、昼食を共にしたケリーは、クレマンティーヌがヒッチハイクと公共バスでモントリオールまで来ており、僅かな資金を節約する為に路上生活を送っている事を知る。
裁判が加熱の一途を辿る中、ケリーは宿のないクレマンティーヌを自宅へと招き、彼女と日々を過ごすようになる。シュヴァリエの無実を信じるクレマンティーヌに、ケリーはあくまで冷静な姿勢を崩さず、距離を置いて接する。
裁判も佳境に入った頃。その日はいよいよ問題となっている犯行映像が公開される日であった。しかし、映像の残虐性から裁判所は傍聴者への映像の鑑賞を制限すべきと判断し、ケリーとクレマンティーヌ達は追い出されてしまう。何とかして映像を見たいクレマンティーヌに、ケリーは密かに入手した犯行映像を見せる為、自宅へと戻るが…。
【感想】
一般人(本作のケリー=アンヌはかなり特殊な部類ではあるが)あるいは善人が、猟奇殺人犯と関わり魅了されるというケースは、現実でも例が見られる。パンフレットでも挙げられているが、凶悪犯に魅了された人物が、彼らと手紙や面会でコンタクトを取ったり、獄中結婚するというケースもある。
映画において最も有名なのは、トマス・ハリス原作、ジョナサン・デミ監督による『羊たちの沈黙』(1990)だろう。ジョディ・フォスター演じるFBI捜査官が、猟奇殺人によって終身拘束となっている精神科医ハンニバル・レクター博士(アンソニー・ホプキンス)に助言を求める中で、彼から異常な愛情を向けられながら事件の真相に迫っていく。以降、こうしたジャンルは世界的に人気となり、数々の作品が世に送り出され、サイコスリラーの定番ともなった。
本作は“ダークウェブ”という通常の検索エンジンでは見つからないネット裏に潜む匿名領域、犯行映像の“ライブ配信”と“ビットコイン”送金による所謂“投げ銭”と呼ばれる収益活動、“オンラインカジノ”や“ネットオークション”、更には最近何かと話題の“AI”といった、現代社会ならではの現象、用語が混じり、唯一無二の個性を持って描かれている。
パンフレットにて監督のパスカル・プラントも語っているが、主人公のケリー=アンヌはスティーグ・ラーソン原作『ミレニアム』シリーズに登場する“ドラゴンタトゥーの女”ことリスベットを彷彿とさせる高い知能とハッキング技術を有している。
演じたジュリエット・ガリエピは実際にモデル活動の経験がある他、俳優以外にも映画監督としての一面も兼ね備えており、持ち前の高い身長と相まって知的でスマートな印象が求められるこの役に抜群の説得力を与えている。
モデルとしてホームページのトップに掲載される程の人気、オンラインポーカーで感情に流されずに統計的な勝率を頼りに勝ちを重ねて副収入も十分、ストレスはテニスで発散と、何から何まで順風満帆。しかし、そんな満たされた生活の中だからこそ、彼女は次第に刺激に飢えていったのではないだろうか。好奇心を満たす事に執着し、それが自身にとって思いもよらなかった破滅をも招くとも知らずに、危険な道を突き進んでいく。
そんな彼女と対照的に描かれるクレマンティーヌ役のローリー・ババンは、小柄で大きな瞳、シュヴァリエに恋心を抱いて彼の無実を信じて擁護するという、「信じたいものを信じる」という人間の愚かさと未熟さを見事に体現してみせる。経済状況も良くない身でありながら、ヒッチハイクや公共バスを使って田舎からモントリオールまでやって来て、野宿をしながら裁判の傍聴をするという熱の上げっぷりである。
そんなクレマンティーヌに、知的で成功者であるケリーは何故肩入れしたのであろうか。シュヴァリエの裁判に向けたように、自分とは正反対の意見を持つ相手に対する“好奇心”故だろうか(しかし、ケリーは密かに入手した2件の犯行映像から、特徴的な青い瞳と姿勢のシュヴァリエを既に犯人だと断定しているのだが)。
あるいは、クレマンティーヌに信じたいものを信じていたかつての無垢な自分を重ねていたのだろうか。
前半は冷めた瞳で無感情に描かれていたケリーが、クレマンティーヌとの一件や裁判を傍聴する過程で自身の順風満帆な生活に亀裂が生じる中で、次第に好奇心や恐怖、怒りや喜びといった感情を露わ、あるいは取り戻していく姿が素晴らしい。特に、オンラインポーカーで不利な状況下から大逆転し、オークションでカミーユの映像を入手した際の喜びの表情は本作の白眉だろう。
裁判初日の冒頭陳述をフルで見せる手法も良い。ともすれば睡魔を誘いかねない演出ではあるが、あの映像によって我々観客も共に裁判の行く末を見届ける覚悟を抱かせられる。何より、本作を鑑賞しに訪れた我々もまた、“好奇心”に突き動かされて来ているのだから。
ところで、私はクライマックスに至るまで、ケリーこそが事件の真犯人ではないかと疑っていた。高身長でスレンダーな体型は男性に見せる事も可能だろうし、モデルという職業から姿勢や歩行のクセを演出する事も可能である。高いハッキング能力から、犯人の濡れ衣を着せるに相応しい相手を見つけ出し、シュヴァリエを「スケープゴート」にしたのではないかと思っていた。特徴的な青い瞳も、作中で彼女がカミーユに扮装する際に見せたように、カラーコンタクトをすれば造作もない。目元周りも女性ならばメイク技術があれば男性らしく見せる事も可能だろう。
そして、自らが仕立て上げた稀代の殺人犯がどう裁かれるのか自らの目で見届けようと、裁判の傍聴に足を運んでいたのだと思った。自身とは正反対の立場であるクレマンティーヌに優しくするのも、自らが仕立て上げた「スケープゴート」に感情移入する哀れな女を間近で見たかったのだと思った。そして、そんなクレマンティーヌこそが“好奇心”から事件の真相に辿り着いてしまい、ケリーの新たなる犠牲者になって幕を閉じるのだと。
【好奇心を満たすとは】
本作において重要となるのが“好奇心”である。ケリー=アンヌもクレマンティーヌも、行く末こそ違えど、どちらも好奇心に突き動かされた人物だ。ケリーはハッキングまでして事件の真相を求め、クレマンティーヌはシュヴァリエの無実を信じて田舎から飛び出してきた。
最終的に、クレマンティーヌはケリーから見せられた映像でシュヴァリエの犯行を確信し、自らの無知さを恥じて残りの裁判の傍聴を断念して帰宅する。ラストでは彼の「元グルーピー」として番組出演し、自らを恥じて被害者への思いを語る。彼女は、自らの好奇心から学びを得て、“戻る”あるいは“正しい方向へ進む”事が出来たと言える。
しかし、対するケリーは、結果的に事件を解決に導きこそすれ、好奇心に突き動かされた結果、順風満帆な生活を手放す事を余儀なくされた。ニュースで報じられた以上、今後もモデル業および顔出しによる芸能関係の活動は完全廃業しなければならないだろう。
そうなると、当面はオンラインポーカーで生計を立てるしかない。しかし、そのポーカーですら、以前のように統計学に基づいた冷静な勝負が出来るかは怪しい。何故なら、彼女はカミーユの映像を入手するオークションの際、足りない軍資金を補填する為に、統計的な勝率を無視してベットし、勝利する快感を得てしまったのだから。この「勝率の低い勝負に賭ける」というのもまた、好奇心を満たす事に繋がるだろう。ラストで無人のタワーマンションの自室の窓が開け放たれていた様子が何とも不穏である。
実は、監督のパスカル・プラントは、パンフレットのインタビューにて「映画には必ずしも『メッセージ』は必要ないも思う。啓発ではなく、体験する為に映画館に行く」と語っているので、解釈は我々観客一人一人の判断に委ねられている。ケリーの姿がどう映るかも、観客の価値観や人生経験に委ねられているのだ。
しかし、それでも私が本作からメッセージを受け取るならば、「好奇心との向き合い方」「好奇心を制御する事」だと解釈する。
ケリーは自らの高い知能と慎重さから、社会の闇に足を踏み入れても命を落とす事はなかったが、世の中には「知らなければ良かった事」も往々にしてある。そして、それが自らの命を脅かすものである事もだ。
ドイツの哲学者、フリードリヒ・ニーチェの著書にあるように《深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ》という事だろう。深淵に足を踏み入れるには、それ相応の覚悟が必要であり、無闇な好奇心は自らの破滅を招くのだ。
ところで、ケリーの行いは、結果こそ見れば一種の善行と呼べるはずなのだが、果たして彼女は本作における「ヒーロー」だったのだろうか。彼女は自らの知的好奇心を満たす事に執着していたに過ぎない。それでも、見つかっていなかったの映像やビットコインの送金履歴といった事件の真相を明らかにする情報をフランシーヌに提供したのは、せめてもの情けだろうか。しかし、フランシーヌの自宅に侵入し、カミーユの部屋で彼女に扮装した自身の写真を撮る姿は、狂気以外の何ものでもない。彼女はどこまでも、「好奇心の奴隷」だったのかもしれない。
【総評】
“好奇心”に突き動かされる事の危険性、連続殺人犯に共感する必要など事を描く(ラストでそれまでの強気な姿勢のシュヴァリエが簡単に陥落した様子から、凶悪犯を魅力的に描く意図が無いのは明らか)の本作は、そのメッセージ性について観客それぞれが解釈出来る作りとなっている。
個人的に、パスカル・プラント監督の描き方は非常に魅力的だと感じたので、今後どのような作品を描くのか楽しみである。
嫌なもの見せられた
異様なサスペンスが持続する
何が主人公を突き動かすのか
ストーリーと画作りはサイコスリラー、音楽/効果音はホラーテイスト
特に効果音は雰囲気があってとても良いです。
すでに起きた殺人事件の裁判を中心にして話が進みます。
主な登場人物は3人、作中に追加で酷い目に合う人はいないのですが、ずーっと雰囲気が怖いですね。
ただ、怖いのは雰囲気だけなのであくまでもサイコスリラーというジャンルには収まったままかなと思います。
狂気に突き進む主人公を訥々と描いているので、気持ち的な遊びがなくてずっと緊張を強いられる感じです。
んで、結局主人公は何がしたかったのかな…
真相を見届けたかっただけ?それにしては大層な額を使ったり、違法行為も厭わなかったり。
結果、本当に彼女はただの傍聴人であり、純粋に事件の真相を欲していただけという点に狂気が凝縮されています。
カミーユのビデオを見るシーンで赤い光を浴びるさまは、まさにRED ROOMSそのものに成り代わったということでしょうか。
個人的に一番怖かったのは、カミーユの自宅に侵入して彼女の部屋で自撮りをするシーン。
あれは何だろう、戦利品的な?
母親にUSBメモリ(恐らく動画が入っている)を提供したのは、事件解決に向けたせめてもの良心だったのか、それとも裁判で早く真実を詳らかにするためのブースター的なものだったのか…
犯人よりもヤバいやつ
少女連続誘拐殺人事件の容疑者を巡る裁判を描いたサイコサスペンス。この事件に並々ならぬ“好奇心”を抱いて熱心に傍聴に通う女性が主人公。
容疑者を有罪とする決定的な証拠がないまま裁判が進む中で、謎に近づこうする彼女の行動はどんどんエスカレート。彼女自身が一番のサイコだよ。
普通にいい話じゃ客こないからなあ☁️
猟奇殺人犯の裁判を傍聴することにハマって狂っていくモデルの話。実際は狙いがあってやってる行為であり、全く狂ってない。
冒頭、演歌みたいなテーマ曲に合わせて、主人公のモデルが登場。イスから転げそうになる。
劇中、犯人が殺人現場を中継した動画の存在がキーになるが、こちらは観客には音声のみ、ゴア描写はなし。ただし、カメラに顔を向けた犯人の目指し帽から覗く目がのちのちキーになる。
ラストまで観ての感想としては、普通にいい話やん!てこと。いや、そんなわけない。まあ、平凡な内容かな?ってこと。
トークショーは配給会社の人と、ゲストの角由紀子さん。
配給会社の人が犯罪者に対する推し活の映画だと、だから狂っていく主人公に共感できる、みたいにアピールしてたけど、全然違うと思った。
思ってる方向に観客の感想を煽動して盛り上げたいのはわかるけど、そういうの苦手なんで、こちらはお先に失礼します。
全35件中、1~20件目を表示












