劇場公開日 2025年9月20日

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「当たり前の日常がある」ふたりのまま 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 当たり前の日常がある

2025年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

子育てする同性カップルや、不妊治療に悩む同性カップル、4組の日常を追いかけたドキュメンタリー作品だ。4組が抱える課題をパーソナルなレイヤーで捉えているのが素晴らしく、社会を俯瞰するような視点を持とうという意識よりも、当たり前の日常と愛情がここにはあるということにカメラを向けている。
精子提供で待望の赤ちゃんを授かり、親たちと一緒に子育てするカップル、シングルマザーとその娘と一緒に暮らそうと試みる人、高校生の子どもがいるカップルも出てくる、そして、赴任治療が上手くいかないカップル。それぞれの抱える悩みは違っていることも当たり前。しかし、共通しているのは、こうした家族は今の日本で不可視化されやすいということ。
だからこそ、この映画は当たり前にある日常にフォーカスしている。ここには当たり前の生活と家族の愛があるということが何より、伝え高ったのだと思う。
特定生殖補助医療の法案について多少触れられているが、この法律に限らず同性カップルは社会的な法制度に守られないことが多い。それを前景に描くことはしていないが、そうした社会的な背景がこれらのカップルに困難を強いているというのも、ほのかに伝わる内容となっている。
大変に感動的な作品なので、ぜひ多くの方に見てほしいと思う。

杉本穂高