劇場公開日 2025年9月12日

「文化庁推薦の啓発映画かな?」LIBERTY DANCE おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5 文化庁推薦の啓発映画かな?

2025年9月14日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

■ 作品情報
小田憲和監督作。城所岩生原作の漫画「音楽を取りもどせ!コミック版 ユーザーvsJASRAC」の実写化。森もり子が脚本を手掛けた。主演は松田実桜、共演に柳美舞、りんかなど。

■ ストーリー
福岡・旭女子高校のダンス同好会に所属する3年生の富沢花奈、水木晴子、宮島文は、卒業公演に向けて日々練習に励んでいた。彼女たちが卒業公演で披露する特別な一曲は、世界的アーティストRINAOの楽曲「Euphoria」。しかし、公演当日、楽曲の使用料が未払いであることが発覚し、まさかの公演中止を告げられる。著作権という、これまで遠い存在に感じていた壁に直面した彼女たちは、戸惑いながらも、自分たちにとっての“本当の音楽”と自由を取り戻すため、著作権の現実と向き合い、困難を乗り越えようと奮闘する。

■ 感想
著作権という普段意識することの少ないテーマを、若い世代にもわかりやすく、そして身近に感じてもらえるよう工夫して描いている点は、好感がもてます。ダンスと音楽が大好きな女子高生たちが、著作権の壁にぶつかることで、その重要性を自分ごととして認識していくストーリーは、啓発作品として大いに意義があると感じます。

それぞれの家庭の事情が著作権の問題と絡められているのも巧みで、例えば音楽教室を営む親、経済的に厳しくダンス発表会の入場料すら負担になりそうな親、経営する店で自由に音楽を流せないと嘆く親など、多角的な視点から著作権がもたらす影響が描かれています。これにより、単なる法律の説明に終わらず、登場人物たちへの感情移入を促し、物語に深みを与えようとする意図が伝わってきます。

しかしながら、正直なところ、作品全体から感じられるのは「学校で鑑賞する教材ビデオ」のような印象です。尺の短さも相まって、登場人物たちの内面が深く掘り下げられることはなく、青春映画特有のきらめきや葛藤などの熱量も物足りなく感じられます。キャストの方々も、まだ演技経験が浅いのか、熱演というよりは素朴さが際立っている印象です。ただ、そのビジュアルも含めて「普通っぽさ」が、かえって親近感を生んでいる点は好感がもてます。

劇場で見るほどの作品かと言われると、個人的には「そこまでではない」というのが本音です。ネット上のレビュー評価が極めて高いのは、もしかしたらキャストのコアなファンによる布教活動の賜物かもしれません。著作権教育の一環として鑑賞するにはいいですが、映画としての感動や興奮を求めるには、少し物足りなさを感じてしまうのが正直なところです。

おじゃる