ハウス・オブ・ダイナマイトのレビュー・感想・評価
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核抑止論の欺瞞と、薄氷上の平和に麻痺した人間の無力さ
ある日突然、どこの国からかもわからない核ミサイルが今から20分後に着弾すると言われたら、アメリカの防衛の中枢はどうなるか。そのシミュレーションのような映画だ。いつも通りの穏やかな朝を迎えたアラスカの軍事基地やホワイトハウスが、謎の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を検知したことから緊張と混乱のるつぼと化す。
本作では、ICBMの検知から着弾間際までの小一時間ほどの関係者の奮闘とパニックが、視点を変えつつ3回繰り返して描かれる。最初がアラスカの軍事基地とホワイトハウス、次が国防長官とその周辺(ペンタゴン?)、最後は出張中の大統領。1周目でリモート会議の画面の向こうにいた人間、声だけ聞こえていた大統領がその時何をしていたかを、2周目3周目で明らかにするといった構成だ。リモートの向こうから断片的に聞こえていた言葉が発された状況が、視点が変わるにつれ徐々に分かってくる仕掛けになっている。
この3周の全て、つまり映画のラストも、ミサイル着弾直前で物語は終わる。最後までICBMを発射した国はわからないし、実際に着弾し爆発したのかどうかも描かれない(物語の中では、何らかのレーダーの誤認である可能性、湖に着弾し不発となる可能性などにも言及がある)。
こうした終わり方は賛否あるかもしれないが、ラストがこの締め方だったからこそ、監督のメッセージがより鮮明に浮かび上がったと思う。
「世界は爆弾の詰まった家だ」苦悶する大統領の言葉は、現在の社会情勢を端的に表している。それは存在する核弾頭の数の多さ(2025年6月時点で、廃棄予定のものを除いて9,615発。長崎大学核兵器廃絶研究センター公式サイトより)のことを指すと同時に、どういうきっかけで核ミサイルの発射ボタンが押されるかわからない、国家間の緊張感の高まりのことを指すようにも聞こえる。
核抑止という理屈がある。だがこれは、核保有国の指導者が皆核の脅威と影響を正しく理解し、本当に核を使ってしまうようなおかしな者が出てこないという、互いの国の良識に依存したものだとも言える。
この物語のように、ひとたびどこかの国が核を使えば、抑止などというお題目は瞬時に吹き飛ぶ。抑止のたがが外れ、報復から全面核戦争にでもなれば、人類文明はあっという間に壊滅するだろう。日本が経験した広島の原子爆弾がTNT換算で15キロトン。現代の戦略核の主流は水素爆弾で、100キロトンから1メガトン級のものまであるというのだから。
そうした危険をはらんだ大量の核兵器を背景にした、抑止力という薄氷の上にかろうじて成り立つ「平穏な日常」を、私たちは無自覚に享受している。
また本作は、国防の最前線で最悪の事態に対応する組織もまた、弱い人間から成り立つものに過ぎないということも描いている。
着弾のカウントダウン開始後、寸暇を惜しんで知恵をしぼるべき立場の人間たちが事態の深刻さをなかなか認識できなかったり、認識したらしたで家族に電話したりするのは正直見ていて苛立った反面、まあ人間とはこんなものだろうとも思った。いくら国防を仕事としていても、何の前触れもなく敵国がどこかさえわからないまま、突然20分後に大都市が壊滅する攻撃を受けると言われたら、一国の防衛を担うエリートたちにもメンタルの限界が訪れるのかもしれない。
核抑止という危うい均衡がひとたび崩れたら、その崩壊を確実に押し留める仕組みや手段など結局ないに等しい。コイントスのような確率の迎撃ミサイルが外れたら、着弾までに間に合うことを願いながらシェルターに逃げ込むしかない。その後地上は、絵本「風が吹いたら」のような運命を辿るだろう。
核抑止論の欺瞞と、その危ういバランスが崩れたときの人間の無力さ、それをビグロー監督は3回のリフレインで描き尽くした。結果的にミサイルが爆発したか否か、それがどこの国からのものだったかは、この主題にとっては蛇足だから省いた。潔い判断だ。
最後に、ビグロー監督のインタビューでの言葉を引用する。
「複数の国々が、文明社会を数分で終わらせられるほどの核兵器を保有しているにもかかわらず、一種の集団的な麻痺状態、つまり”想像もできない事態の静かな正常化”が起きているのです。 破滅という結末が待っているというのに、どうしてこれを”防衛”と呼べるのでしょうか。 私はこの矛盾に正面から切り込む映画を作りたかったのです。絶滅の影の下で生きながら、それについてほとんど語らない世界の狂気に深く迫るために。」(2025.10.5 BANGER!!! 記事より)
タイトルなし(ネタバレ)
相手の国がどこであれ、撃ち落とす余裕をその国はアメリカに与える。つまり、LA以外ない。内陸のシカゴを狙うのは最終目標地。ニューヨークやシカゴ、ボストンはたとえあの国でなくとも狙えない。
で、今後どうしたら良いのだ。
物凄く疲れた映画だと感じた。つまり、正味1時間くらいの内容を引っ張って結末は?もう
語るまい。
日米安全保障条約がありますから、ホワイトハウスですったもんだするのは絶対におかしい。自衛隊が出撃して、迎撃ミサイルを乱発するし、ハワイだってある。沖縄はアメリカから発射地を見逃した責任を取らされているはずだ。
太平洋上で迎撃するのが当たり前。内陸、東海岸を彼の国やあの国さ狙う訳が無い。
まさに変則的『羅生門』?ではない!超リアリズム作劇!!
同一の出来事を3種の角度から描写するという、、、視点変換が、、まさに変則的「羅生門」?ではない超リアリズム?作劇です💦💦💦
キャスリン・ビグロー本領発揮の極緊迫型サスペンス、、、緊張感がスゴイ!! ノンストップでした。約2時間が一瞬という凍りつくような体感!でした。 賛否両論あるようですが、僕は角度が異なる同一突発事件への対応方法?のリサーチの徹底ぶりに感嘆しました😊
同じシチュエーションが3度くり返されますが、一体どうなるのか、だいたいは分かっていても「最後の大統領の決断」及び「シカゴへの着弾の有無」が、、、映画のラストまで分かりません。そこを分からなくして、作品は観客をグイグイと引っ張っていきます!!
ここからは予想ですが、、、
果たして大統領は全面報復したのか
シカゴは核ミサイルで壊滅したのか
これらは観客に全て委ねられます💦
しかし、ここまで緻密な事実を積み重ねた(リサーチの結果の)作品は、まさに見事です。
いきなりネフレで観れるなんて!
見逃したなあって思いきやネットフレックスで観れるやん。恐怖のカウントダウン どこから発射されたか?対撃ミサイルが失敗 最悪やないか。都市が一つなくなる?
なんかリアルだ。まあ単品だけど怖かった。
さすがに3回は飽きる
面白くはあったが同じ20分の出来事を場所を変えて3回繰り返すのはくどい。
初っ端のオリビア大佐がメインの話は緊迫感があった。
全ては司令室同士のやり取りで実際のミサイルの飛行シーンなどは一切なく、
各セクションでの人々の緊張感だけで事態の重大さを伝えるなどは演出の技だと思う。
これってすごいなあって思うんだよね。普通なら敵国の緊張感や兵器の映像を見せることで、これから恐ろしいことが起こるよってことを描くわけだけど、そう言うのを一切削除して、ことの重大さを伝えるわけだからね。
各シーンで各々のスポットを当てた人々の国防への忠誠と家族への想いなど他のアクション映画などでは見られない家族や恋人への思いの片鱗を見せたり、弱さを見せたり人間らしさを描かれている。
あの状況でパニックを起こさず半分諦めの中での任務と祖国を守らなければという思いが複雑に混じり、実際あんな空気感になるんじゃないかなとは思った。しかし大統領の決断一つで人類の運命が決まるわけであのような重大な場面を大統領とはいえだたの個人が全人類の運命を背負うとか、人間って実に愚かな生き物だなとつくづく思った。
所詮猿に毛が生えた程度で進化の終着点みたいな驕りがあるから、持て余したパワーを制御しきれはしないのだなとよくわかる。人間がこのような巨大なパワーを持つのはまだまだ早いのだなと思った。
とにかく緊張感はすごかったんだけど、やっぱり同じシーンを角度を変えて3回見せると言うのは飽きがくるよね。それにあのエンドは全く評価できないね。未消化で残念だった。
何十年も前から既視感のある内容だった💤
ミサイル迎撃にあたふたする司令部や、家族に避難を指示する様子が描かれますが、何十年も前から既視感のある進歩の無い内容だと思います。ビグロー監督が題材にすべきなのは、今現在まさに行われている戦争なのではと思います。ロシア外相との電話が何か間抜けですし、タイトルが言いたかっただけなのか最後も投げっぱなしでした。
人類の“最後の十数分”と、決断の向こう側
『ハウス・オブ・ダイナマイト』は、シカゴに向かって発射されたミサイルが止められないまま、爆発までの十数分間を多視点で描く戦争ドラマだ。
だがこの作品に、派手な戦闘や爆破の映像はない。
描かれるのは、その瞬間を迎える前に人間たちが何を思い、どんな選択をするのか――滅びの直前に残された心の記録である。
司令室では、迎撃の可能性を探る指揮官たちが焦燥と責任に押しつぶされそうになりながら、決断を迫られる。
彼らの沈黙や短い視線のやり取りには、「自分も家族も死ぬかもしれない」という恐怖が潜んでいる。
特に印象的なのが、ロシア大統領へのミサイル発射確認のシーンだ。
アメリカは真実を知ろうとするが、ロシアは「情報を渡すこと自体が罠かもしれない」と疑う。
そしてアメリカも、ロシアの否定を完全には信じられない。
わずかな通信の間に、国家間の信頼の崩壊と、人間の理性の限界が凝縮されている。
全編を通して、ミサイル着弾の時間が繰り返し映し出され、DEFCON 1 の表示も突き刺さる。
そのたびに緊張が高まり、観客の呼吸まで支配していく。
時間が減るごとに、登場人物たちの表情も少しずつ変わっていき、
観る側もまた、自分自身がそのカウントダウンに巻き込まれているかのような錯覚を覚える。
この“見せ方”こそが、本作最大の演出だ。
そしてラスト。
爆発の瞬間は描かれない。
代わりに、アメリカ大統領が報復攻撃を行うか否かの判断を迫られる場面で幕を閉じる。奥さんに答えを求めたが、彼女はアフリカ?のサファリ中で、「核はダメ」というニュアンスの返答をする。しかし通信は不安定で、彼女の声はノイズにかき消される。
彼が下すかもしれない“報復”は、罪のない人々、そして動物たちの命まで奪う。
映画は戦争を人間の悲劇として描くだけでなく、地球そのものへの暴力として提示している。最後は画面は暗転し、答えは示されない。
『ハウス・オブ・ダイナマイト』は、戦争の開始も終結も描かず、
その“狭間”に立つ人間たちの揺らぎを描いた異色の戦争映画だ。
銃弾ではなく沈黙で、爆発ではなく判断で、戦争の本質を語る。
時間が減っていくというシンプルな演出が、これほどまでに恐ろしく美しい映画は滅多にない。
決断
核兵器着弾までの18分が思わず息を呑む。
冒頭から独特の緊張感を漂わせ重低音で
ガシガシ攻め込んでくる。
映像もBGMも良く追体験的没入観。
ミサイル一つで当たり前の日常の平穏が
崩れていく。
普通に住んでいる私達は、弾薬庫のような
世界で生活しているんだよという
キャスリン・ビグロー監督の
痛烈な訴えを感じた。
核保有は抑止力なのか、それとも
平和のシンボルなのか………。
日本に置き換えてもと考えさせられる
恐ろしい映画でした。
“その時”は突然いつ起きても絵空事ではない
北朝鮮から日本近辺に向けて初めて長距離弾道ミサイルが発射されたのはいつだったか。
あの時は恥ずかしいくらいパニックになったが、以後もしつこいくらいミサイル発射は続き、今ではニュース速報は流れるが、誰も騒がなくなった。
何だ、またか。どうせまた日本近海に落ちる。…
北朝鮮がどんなに油断ならぬ国とは言え、確かに今日本を攻撃する意味は無い。何のメリットも無く、ただ世界中を(特にアメリカを)敵に回すデメリットでしかないからだ。
“そんな事”は現実的にあり得ない。
しかし、そうだと誰が決めた…?
いつ突然、その時が来るか、それは誰にも分からない。
本作は日本にとっても通じるものがあるシミュレーション・ムービーなのである。
突如アメリカ本土に向けて核ミサイルが発射…!
何処の国か不明。着弾まで20分も無い。着弾したら被害は甚大。
未曾有の危機に追われるホワイトハウス、軍、大統領…。
骨太なポリティカル・サスペンス。監督を務めるのはこの女性(ひと)。
『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』『デトロイト』…。キャスリン・ビグローが期待に応えるカムバック!
何か予兆があって緊迫状態が続き、遂に発射されたミサイル。スリルとカタルシス盛り上がるクライマックス!…というのではなく、
開幕して早々。いつもと同じ変わらぬ一日が始まった…筈だった。
“それ”を突然レーダーが感知。
最初は何かの間違い…? 演習…?
誰だって普通はそう思う。
しかし、“いつもと同じ変わらぬ一日”でも“普通”でもなかった。
“それ”は間違いないものだった。
幾つか思い当たるが、何処の国か不明。
目的も不明。誤射…? 威嚇…? 攻撃…? 戦争…?
見えざる/分からぬ脅威。
着弾まで20分も無い。そんな猶予も無いものなのか…?
そうなのかもしれない。ミサイルは超速で飛ぶ。何処から発射されたか分からず、気付いた時はもう狙われている。いや、手遅れ。
発射ボタンが押されれば時間など無い。あっという間に…。
これがリアル。我々が知らぬミサイル攻撃の世界。
ウクライナの人々は絶えずこの脅威に晒されている。
見る者を突然脅威とスリルに落とし込む。
キャスリン・ビグローの演出は8年ぶりでも微塵も柔らかくなっていない。さすがは硬派な姐さん!
突然のミサイル発射、危機と着弾まで。
リアルタイム群像劇にはもってこいだが、これを一本の流れとして描かないのが思わぬ変化球。
ホワイトハウス対策部、軍関係者及び専門家、そして大統領。時をそれぞれ遡り3つの視点から描く。
ホワイトハウスの地下にある“シチュエーション・ルーム”。
有事に対し危機管理や対策を行う施設だが、そんな所があるとは…!
ここで指揮を執る海軍大佐のオリヴィア。指示は的確で部下ともコミュニケーション取れ、家庭では良妻賢母。体調芳しくない息子が気掛かり。
突然の脅威。対処、対応、対策を担う。
脅威に直面しながらも冷静さを失わず、でも内心は家族の事を心配し、この脅威に尽力する…。レベッカ・ファーガソンがタフに熱演。
シチュエーション・ルームから連絡を受けた国防長官。各所からの報告を受け、こちらも対応に追われる。
一方、国家安全保障問題担当大統領副補佐官。暴挙をしでかした国を推測。ロシア…? 北朝鮮…?
韓国系の北朝鮮担当官と連絡を取る。ロシア外相と応対する。攻撃出来る装備は持ち、疑わしき点もあるが、決定的攻撃の理由は無い。
オリヴィア視点ではシチュエーション・ルーム内での情報収集や状況変化。長官や副補佐官視点ではさらに前線の対応や各国との駆け引き。大統領視点では、ある決断迫られる…。
バスケ強豪校の子供たちの試合中に報告を受けた大統領。SPに誘導されすぐさま移動。電話などを介し各所とやり取り。
ミサイル着弾地はシカゴ。被害はもう免れない。
大統領に求められるのはその後。“敵国”の様子を窺うか、“敵国”を特定し報復か。
アメリカや国民が攻撃された。反撃しなければ国民は納得しない。しかし、こちらが報復すれば“敵国”もまた…。核による終末戦争が現実のものになる…。
担当官から連絡受けた北朝鮮の動向やロシア外相との話から、副補佐官は大統領に報復しないよう訴える。
こんな決断迫られるとは…。大統領は…。イドリス・エルバが熱演と共に苦悩を体現。
某独裁者なら迷わず報復するんだろうけど。
着弾直前まで話が進んだ所で、時間を遡って別エピソードに。
当初は戸惑うが、各々の視点で描く事によって緊迫した状況やスリリングな対応や苦悩を畳み掛ける。
ミサイルで迎撃。だが…。ミサイルにミサイルで迎撃するのは、弾丸を弾丸で打ち返すのと等しい。大金で備えた防衛策の成功率は61%…! そんなに低いのかと驚くが、その難しさを何かで聞いた事がある。
オリヴィアと話している途中、長官と連絡が途絶え…。長官視点でまさかあんな事になっていたとは…! 各やり取りも繋がり、伏線回収も見事。脚本と編集の妙。
怪しきは北朝鮮…? ロシア…? 現実感たっぷりのリアリティーも追及。
人によっては期待外れもあるかもしれない。
別視点とは言え同じシチュエーションの繰り返し。
着弾したその後は…? そもそも着弾シーンは描かれない。
ラストシーン。決断やその後は描かれず、急に終わる尻切れトンボ感も否めない。
本作が単純なエンターテイメントだったら物足りないだろう。見せ場となる爆発シーンやパニックは欲しいし、敵国の正体や目的、大統領の決断や各々の動向など最後まで見せて欲しい所。
だけど本作はそんな単純な作品ではない。
その時、あなたならどうするか…? 世界はどうなるか…?
明確な答えや結果は無いに等しい。
我々は核ミサイル一発で崩壊する危うい世界に住んでいる。タイトル通りの“ハウス・オブ・ダイナマイト(ダイナマイトの家)”。
見る者に、我々に、世界に、問う。
“その時”…。
遠い未来かもしれない。
近い将来かもしれない。
明日かもしれない。
今かもしれない。
“その時”は突然いつ起きても絵空事ではない。
配信開始をかなり期待してました・・
これは期待した通り面白そうとだと思ったのは、先どうなるのかとハラハラした最初の20〜30分くらい。その後は何だこの構成は?みたいな繰り返しがダラダラ続き終わり。は?結局どうなったの?私的にはこれは観て損したとも思えるほどガッカリな駄作。
明日にも起こりそうな“有事“
シナリオ段階での忖度なのか、配慮なのか、敵国は特定されず、ICBMの発射地点も不明、大統領は金髪の白人ではなく黒人。もちろん個人主義国家なので“お国のため”になんてお題目は軽視しても赦されるし、どの映画でも同じだけれど、アメリカの有事とは国に降りかかる危機ではなく、家族の大事なんですね。自分の家族が最優先。すぐ別れてしまうくせに夫が、妻が、子供が、と言ってオタオタする。日本だったら大変だけど、欧米諸国では国のトップが身びいきであってもあまり非難されない。イギリスのサッチャー首相の息子がパリダカールラリーに出て砂漠で行方不明になった時、フランス軍が捜索してましたね。
核ミサイル着弾のカウントダウンの最中に 、実は迎撃出来る確率は61%なんて事実を知らされたり、街中の能天気でゆる~い日常生活風景を挿んだりとコントラストの妙で恐怖を煽ってコワガラセル。監督お上手。
それにしても、政権の高位にいないと避難者リストの優先順位にもれてしまうんですね。さしずめ現実なら、“トランプ周辺”が救われてシェルター行き。生き残っても嫌なメンツだなー。
問題は報復のアリナシ。映画では無い方に振られているが、現実は? 大統領就任時にほぼ“覚悟”は出来ているし、様々なインタビューを受けるのでシミュレーション済み。お勧めは?なんて迷いはない。北朝鮮/中国国境あるいは北朝鮮/ロシア国境に向けて打つとおもわれる。どちらも後の“言い訳”がしやすいので。あっ、そうそうロシアは自動報復システムなので、会議無し、大統領の意思決定無し、ミサイルが飛んできた方向に躊躇なく撃ち返します。
『宝島』の レビューにも書きましたが日本だと六本木の米軍基地が全国の中枢指令部なので、ここはアブナイですね。アメリカ大使館も近いし。
では何処が安全か? 基地も無い、原発も無い、災害も無い、熊も出ない………う~ん難問ですね。
限られた時間、情報のもとでなされる究極の判断、行動、意思決定
その昔、モノの本で、人の判断や行動の規範になっているのは、おおよそ理性3割、感情7割である旨、読んだことがあります。この割合の妥当性はともかくとして、ビジネス上の意思決定で、トップが部下それぞれをすべて人件費に換算して冷徹な判断でプロジェクトにゴーサインを出したりすると、「うちの社長、安月給でこき使いやがって」と部下から感情的な反発が返ってくるかもしれません。もっともビジネス上の意思決定なんぞ、ここ日本では稟議書とか決裁書とか呼ばれる書類を社内でぐるぐる回して、スタンプラリーよろしく何人かの部門長がハンコを押して、ラリー完了後プロジェクト開始なんてことをやってるわけですから、甘いと言えば甘いです。企業体質にもよるとは思いますが、大手企業ともなれば、スタンプラリーの旅程(?)はより長くなり、その意思決定によって始めたプロジェクトが失敗したところで「みんなでそれなりに時間かけて決定したことだから、俺っち、責任ないもんねーっ」と責任の所在はうやむや、失敗の根本原因もまともに分析できないなんてテイタラクが待っているかもしれません。
まあそれでも、せいぜいがカネをドブに捨てるようなマネをした、場合によっては倒産ぐらいまでのお話ですから、たかが知れたものです。状況が深刻になって社内で皆が眉間に皺を寄せて会議していると、誰からともなく「まあまあ、命まで取られるわけじゃないから」という話が出てきて、まあ皆さん、それなりのレベルでハラをくくるわけです。
ところが、この映画では意思決定の如何によっては億単位の生命が失われる可能性があるわけです。もう既に1千万程度の人命が失われる可能性が高い事態には追い込まれています。その先をどうするかについて、非常に限られた情報と時間の中で意思決定をしなければなりません。
始まりは日本海のどこかの海中から発射されたミサイルでした。潜水艦からの発射と推定されますが、アメリカはどこの国のものか特定できませんでした(この物語の重要なポイント)。そして、なんとそのミサイルはアメリカ大陸に向かって飛行しているのです。このままじゃ、シカゴのあたりに着弾してしまう。ええぃ、迎撃ミサイルで宇宙の藻屑にしてくれるわ、ズドーン。あれれ、ハズレちゃった。なにぃ、成功確率が61%とな、コイントスとあまり変わらないんじゃ…… そして、運命の時が刻一刻と近づいてくるのです。
ここで現在のこの状況を知り得る政府や軍の関係者の中には「感情7割」のほうを発動させ、緊張の続く職務の合間を縫って愛する人たちに連絡する者たちも出てきます。あの人とはもう二度と会えないとハラをくくったのでしょうか。国防長官はシカゴにいる娘に電話し、娘に最近付き合い始めた相手がいることを知り、感無量となります。とりあえず娘は幸せ感じている状態で死ねるとでも感じたのでしょうか。彼は終盤に緊張状態から一気に解放される手段を取ってしまうのですが。
そして、アメリカ合衆国大統領。彼は予想爆心地からできるだけ遠い安全な場所に移動する飛行機の中で、特殊な訓練を受けた軍人から、こういった場合での対応マニュアルの説明を受けます。ここで問題となってくるのがミサイル発射国が未だに不明であることです。今やシカゴ付近を目がけて一直線のミサイルを放った国は、二の矢、三の矢を放ってくるのが予想されますので叩いておかねばならぬ、でも、叩く相手がわからないときています。ロシアか中国か北朝鮮か、はたまた、イラン、ここはまだ核兵器の開発はできていないと思うけどなあ…… 大統領は説明してくれている軍人に年齢を訊いたり、家族状況を訊いたりもします。分かりやすい説明を求められた軍人は「レア、ミディアム、ウェルダンの3コースがあります」と答えたりもします……
話かわって、これ、Netflix の作品なんですね。なんか公開規模が小さいなあと感じつつ、劇場で観ていたら、見慣れた N のマークが出てきて気づきました。作劇がなかなか巧みで演出もよく、映画館で観てよかったと感じた作品でした。あまりリアルでは考えたくない話ですが、北朝鮮あたりがアメリカを狙うなら、距離の近い西海岸を狙うでしょうし、そもそも、発射してきた国がまったく特定できないなんてことは現在の偵察衛星の状況を考えるとあり得ないことだと思います。でも、そこはそれフィクション、まずは多少リアルからずらしながら大きな嘘を一発かましておいて、その中で遊びつつ、いくばくかのフィクション内リアリティを見せる、ということでNマークなかなかやるなと思いました。旧来型のハリウッド映画でこんなテーマをやると、なぜか状況に気づいてしまった一般市民の男女が出てきて「この先、どんなことが起きようとも私たちの愛は永遠よ」なんて、あまりにもエモーショナルな方向に進むかもしれませんし。
え、お前がアメリカ合衆国大統領なら、どんな決断をするかって……
ミディアムレアでお願いします。
「今永、逃げろ」と祈ってました
9回裏、ツーアウト満塁で突然テレビ中継が終わった感じ(笑)。でも、むちゃくちゃ面白かったです。よくよく考えると、あの終わらせ方しかないですよね。ビグロー女史の評価は「ハートロッカー」が基準なので減点1。次回作も楽しみにしてます!
期待度○鑑賞後の満足度○ 「核だらけの世界」答えは我々一人一人が考えるシュミレーション映画
①原因(どこの国から、どういう意図で)は明かにせず、と結果(果たしてシカゴに着弾したのか不発弾にはならなかったのか)は明確に描かず、その間の数十分間のアメリカ国防に携わるトップから実務者らの対応と苦悩・恐怖、それぞれの家族愛等とを視点を変えて描いているのが構成として面白い。
一方、視点を分散して描いていることでやや散漫な印象を与えていることは否めない。
②或る意味、日本の『沈黙の艦隊』と対極にあるような作品で両国の違いが面白い。
③ロシアの大統領が『信用か…』と吐き捨てるように言う台詞があったが、世界(のリーダーや国民)にお互いへの不信・恐怖がある間は「核抑止力」の名義は無くならないのだろうか。
④核抑止論の矛盾 : 抑止力が機能するためには、相手国が核兵器の使用を信じることが不可欠ですが、「実際に核が使われないだろう」という考えもまた「フィクション」であるという、論理的な矛盾。
⑤アメリカにあれほど安全保障機構・対核攻撃予想予防機構があり、それがどう機能・対応していくか克明に描かれているところは本作の魅力(表現が妥当ではないかもしれない)である。
勿論、他の核保有国も同じような組織・対策があるのだろう。
日本は本当にアメリカの「核の傘」に守られているのか、そうであれば核戦争が始まれば日本も核攻撃の対象になるのか、そうでなければ日本も核保有すべきなのか、等思索したいことは日本人として種々あれど、これは映画の評価なのでこれぐらいにしておいて:
問題定義型の映画ではあるがアメリカのみの視点で描かれているのが長所でもあるし欠点でもある。長所なのはそれで焦点が絞れて緊迫感のあるものが出来たと言えるし、短所としては“核抑止論“は本当に人類にとって正しい選択なのかどうかという今まで何作も作られている問題提起作の枠に留まっていて、時代を越えて残る作品になるかどうか。
⑥キャサリン・ビグローの演出は安定して上手い。女性監督であることからイメージされる(これもバイアスが掛かっているというかジェンダー偏見と見られるかな?)柔らかいタッチではなくてあくまでも冷徹な視点がこの人の演出カラーだろう。
⑦自分がイドリス・エルバ(好演)ら演ずる大統領の立場になったらどういう選択をするかを考えてみるのもある意味本作鑑賞の意味があるかも知れない。
⑧ジョナ・ハウアー=キングは『リトルマーメイド』の後どこ行ったのかしら、と思っていたら結構大きな役で本作に出演していて驚いたというか嬉しかったね。もうちょいふっくらしていた方がハンサムに見えるけど。アウシュヴィッツで囚人番号を彫る囚人を演じたTVドラマも観てみたいな。
グレタ・リーはヒロイン役よりもこういう役の方が良いようだ。
色々とおかしいと思えることが多くて、「核抑止」に関する問題提起が心に響かない
極東から米本土に向けて発射された弾道ミサイルに、米国政府と米軍がどのように対応するのかが、ほぼリアルタイムで描かれる。弾道ミサイルが米本土に到達するまでの時間が約20分なので、上映時間を考えると、当然、弾着後の状況も描かれるのだろうと思っていると、同じ出来事が、それぞれ主観を変えて、繰り返して3回描かれるので、結局、シカゴで核爆発があったのか、米国が核兵器による報復攻撃を行ったのかは、最後まで分からないようになっている。
それでは、この「同じ状況の繰り返し」に、効果があったのかと言えば、あまりそうとは思えなかった。
1回目の状況では、ホワイトハウスの危機管理室の直長とミサイル迎撃部隊の直員に、2回目の状況では、米軍の核兵器を統合運用する戦略軍の司令官と大統領副補佐官に、3回目の状況では、大統領と国防長官に、それぞれスポットライトが当たるのだが、最初こそ、手に汗握る緊迫感に引き込まれたものの、観ているうちに慣れてきて、緊張感が薄れたように感じてしまった。確かに、あの時、聞こえていた声は、こういうことだったのかという発見はあるものの、国防長官が投身自殺をする以外は、特に驚くべき展開がある訳ではなく、これだったら、それぞれに焦点を当てた1回の描写で十分だったように思えてならない。
こうした構成で描きたかったことは、冒頭で示されるように、「核抑止が機能しない世界の恐怖」なのだろうが、色々と気になるところが多いせいで、そうした危機感が実感として伝わってこなかった。
まず、弾道ミサイルに対しては、何段階にも渡って縦深的な防御態勢が構築されているはずなのに、陸上発射型の迎撃ミサイルを2発撃っただけで対処を諦めてしまうのは、余りにもお粗末なのではないだろうか?特に、シカゴのような大都市の周辺には、終末段階の弾道ミサイルにも対処可能なTHAADやPAC−3の部隊が、間違いなく配備されているのに、そのことを完全に無視しているのは、故意に、弾道ミサイル防衛を「無用の長物」と決め付けているとしか思えない。
次に、大統領は、核兵器による報復攻撃を行うかどうかで悩み苦しむのだが、どの国が弾道ミサイルを発射したのかが分からず、自国が核攻撃を受けたのかどうかも分からないような段階で、核による報復を行うなど、あり得ないことだろう。弾道ミサイルが飛来していることは事実だとしても、通常弾頭や不発弾の可能性もあるのだし、万が一、関係のない国に核攻撃を行ったりしたら、それこそ取り返しのつかない大問題となるに違いない。ここは、悩むようなところではなく、シカゴで核爆発が起きたのか、弾道ミサイルを発射したのはどの国なのか、あるいは、第2弾や第3弾の攻撃はないのかといったことを確認することが、政府の職員や軍人がやるべきことだろう。報復するかどうかということは、その結果によって自ずと決まるものであって、弾道ミサイルが到達する前に、慌てて判断する必要性などないと考えられるのである。
ここで、さらに、腑に落ちないのは、極東から飛来する弾道ミサイルの発射地点を、どうして韓国や日本に確認しないのかということである。仮に、早期警戒衛星で発射地点を見落としたとしても、韓国や日本に配備されているレーダーならば探知できていた可能性は高いので、実際には、「発射地点が不明」ということはあり得ないのではないだろうか?
と、このように、おかしいと思えることが多過ぎて、折角の問題提起が「絵空事」のように思えてしまったのは、残念としか言いようがない。
むしろ、核抑止は、核による報復を前提として成り立っている理論なので、米国が核攻撃を受けた(例えば、ロシアがシカゴに核ミサイルを撃ち込んだ)ことが明らかな場合に、米国はロシアに対して、世界が全面核戦争に突入するリスクを犯してまで、本当に核兵器による報復攻撃を行うのかという局面を描いた方が、よほどリアリティのある問題提起になったのではないかと思えるのである。
いやクライマックス考えろって
正体不明のミサイルが米国に向けて発射されてからの緊迫した18分間をリアルに描くドキュメンタリータッチの作品。序盤は凄く面白かった。なのに緊迫した18分間を様々な担当部署の視点から描く上で同じ台詞を繰り返し聞かされていくうちに段々ストレスが溜まっていった。
私生活の会話だけがフレッシュに感じられたが別にいらないし。大統領までたどり着く頃にはうんざりしていてもう良い加減終わってくれと思った。終いにはミサイル着弾するのか?犯人は誰なのか?も全くわからないままオチが付かずに終わってめちゃくちゃイラついた。ある程度見応えはあったが同じ台詞を繰り返し見せるのは大失敗でしょ。面白くないよそんな映画。映画は現実と違うんだから。考えさせられる話しでもいいがオチは付けろ。笑
ネットフリックス規模の作品だったけど映画館で見れたのはまぁよかった。
あと「ストレンジ・ダーリング」で映画好きを楽しませてくれたウィラ・フィッツジェラルドがチョイ役で出てくるが可愛い。
いつ人類が滅亡してもおかしくない、そんな現実の上に我々は生きている。
Netflix制作、キャスリン・ビグロー監督の新作。10月24日から世界配信予定だが、映画館で先行上映をしていた。
好みの監督なので、配信を待たずに見てきた。
ちょっと小粒な感じはするが、面白かった。核の均衡で平和が保たれているというパワーバランスは本当に機能するのか?
シミュレーションドラマで、ラストには映画が描く怖い現実を見る側に突きつける。
去年の「シビル・ウォー」と同じような怖さがある。
映像は、まさしくこの監督の映像と言える、ガクブルで急なズームがあったりする映像。それでリアル感と臨場感を醸し出す。ただ、キャスリン・ビグローものでも、今回は全くドンパチがない。でもずっと緊張感が途切れない面白さがある。
話は、群像劇で、様々な場所が唐突に出てくる。何が起こっているか理解がなかなか追いつかない。で、見る側に緊張を強いる。
話の構造でも、途中、時間が戻るところが3度ぐらいあるが、説明なしで普通に繋ぐ。ちょっと混乱するが、見ているとすぐに理解できる。
(どこか不明の、北朝鮮らしい、核弾頭が米国本土に向けて発射されてから18分間の話をそれぞれの立場で繰り返し描く。)
シミュレーションは、リアルで怖い。
大統領も含め、普通の人々の営みの上に日常が成り立っているのが感じられて、それが崩壊に近づく怖さ。結局どこにもスーパーマンはいない。普通の人しかいないという現実。
それで最後に大統領ですら、核を前にして滅亡につながる判断ができるのか、と突きつけてくる。
いつ人類が滅亡してもおかしくない、そんな現実の上に我々は生きている。
途中で、つまらなくなりました。
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緊迫感のあるシーンが多くあるのは評価しますが、時折挟まれるつまらないシーンでどっと引いてしまいます。
① 通勤途中のバタバタと走り歩く 40前後の若者がアメリカ合衆国大統領・国務長官・軍の最高幹部達が出席している最高会議に参加して大統領から意見を求められるシーンや、② ゲッティスバーグの模擬南北戦争の見世物に休暇で来ている一中国人女性に「北朝鮮は核原子力潜水艦を保有しているか」否か大統領が尋ねたり、③ 情報局の高度な幹部職員やなんと国務長官までが国家的危機の真っ最中に家族に私的に「避難して、逃げて」だとか携帯電話で伝えるとか、、、こういうシーンで映画全体の緊張感やリアリティが大きく損なわれていると思います。
3回ループの意味も、わかったようでよくわかりません。また、映画の結論があるようで無い点もすっきりとしません。
画面を三分割にして、3つの章を同時に再生させてみたいですね(著作権侵害になるからしたらダメよ)
2025.10.16 字幕 アップリンク京都
2025年のアメリカ映画(112分、G)
ある地点から発射されたICBMに対応するアメリカを3つの視点で描いたスリラー映画
監督はキャスリン・ビグロー
脚本はノア・オッペンハイマー
物語は、3つの章によって構成されている
第1章は「INCLINATION IS FLAT」で、第49ミサイル防衛基地にて、ダニエル・ゴンザレス(アンソニー・ラモス)率いる部隊が「日本海付近から発射された飛翔体」に対して、迎撃体制に入る様子が描かれていく
その情報は、WHSR(ホワイトハウス・シミュレーションルーム)に届き、オリヴィア少佐(レベッカ・ファーガソン)を中心としたチームが情報収集を行なっていく
第2章は「HITTING A BULLET WITH BULETT」で、南北戦争の再現イベントに参加していたNSA職員アリ・パーク(グレタ・リー)のもとに、同僚のジェイク(ガブリエル・パッソ)から連絡が入り、北朝鮮が撃った可能性についての確認などが入る様子が描かれていく
さらに、迎撃失敗を受けて、ブレイディ将軍(トレイシー・レッツ)率いる戦略軍の「次の一手」というものが進言されていく
第3章は「A HOUSE FILLED WITH DYNAMAITE」で、大統領(イドリス・エルバ)のもとに情報が集まり、着弾阻止失敗を受けての「報復に対する決断」というものが描かれていた
ほぼ同じ尺を使って、3つの視点をリアルタイムで描いている作品となっていて、「画面を三分割にして同時に観たい」と思ってしまう作品だった
多少のズレが出るのでアレだと思うけど、それができそうなほどに緻密なシナリオになっていたと思う
うとうとしてしまうと「第2章」が「二発目のミサイル」と誤認してしまいそうで、「CHAPTER」表記がないので3章立てになっているかどうかも分かりにくい
個々の役職の字幕表記はないものの、どの部署や組織が絡んでくるのかは描かれているので、そこまで混乱することはないと思う
情報収集を行うWHSR、政府存続のために動くFEMA、報復に対するアドバイスをするNSA、報復を辞さないSTRATOMが中心となっていて、そこに最前線である「第49ミサイル迎撃基地」が登場し、そこのコントロールによって、GBIがSBX PRDARから発射されている
ビデオ会議には、大統領とベイカー国防長官(ジャレッド・ハリス)が不在で、その他にはSTRATOMのブレイディ将軍(トレイシー・レッツ)やINDOPACM(インド洋)、USFK(在韓米軍)、NORTHCOM(北太平洋)、CJCS
統合幕僚長)などが登場していた
大統領と連絡が繋がらない間には、NORTHCOMの権限で第49ミサイル防衛基地に指令が送られてGBIが発射されていたが、大統領が捕まった頃には迎撃が失敗している状態だったりする
そこから、報復と冷静の応酬になっていて、大統領が板挟みになっていて、夫人に助けを求めていたりした
映画では、最終的にどうしたかまでは描かないのだが、音を聞いていると「何かしらの音」というものがエンドロールで流れているのが聞こえる
その音は「シカゴに着弾した音」にも聞こえるし、「報復攻撃のミサイルが発射された音」にも聞こえてくる
映画は、アメリカに有事が起こった時にどのような対応をするのか、を描いていて、実際との乖離に関してはわからない
だが、迎撃に時間を要するとか、2発目を撃たずに諦めるとか、報復の決断に至るまでの時間も「悠長なことをしているな」と思えてしまう
このあたりの演出に意図があるとするならば、「トランプ大統領、まさかこんなグダグダなことにはならないですよね?」と訊いているように思える
戦争映画だと「間違ってもいいからとりあえず北朝鮮を滅亡させる」ように思うし、わからないので「可能性のあるところに全部撃つ」みたいなことをしそうに思う
だが、実際には「報復相手が不明瞭な中で、メンツだけで報復するのはいかがなものか」というスタンスになっていた
それをアメリカ国民がどう感じるかはわからないが、映画の中に登場する米軍というのはかなり印象操作されているように見えてくる
なので、実際に起こると、ほとんど何もできないまま終わってしまうのかな、と思った
いずれにせよ、かなり人間関係と職域に関する知識が必要な作品で、一応第1章で全体像が説明されるので飲み込みやすいと思う
それよりも「実は3章構成で、同じ時間を別視点で描いています」とわかることの方が難しく、第2章の途中くらいまでは「あれ? いつの間に着弾して、2発目が来ているの?」みたいに混乱してしまうかもしれない
なので、ぼうっと観ていると混乱してしまうので、集中して鑑賞できる環境の方が良いのではないか、と思った
ネトフリ映画なのでパンフレットもなく、ネトフリの先行上映なので本国のレビュー情報もほとんどない
配信が始まれば一気に情報は加速度的に増えるので理解は進むと思うが、劇場鑑賞だけで理解するのはかなりハードルが高い映画だった
ある程度まとめてみたものの、間違っていたらごめんなさいレベルなので、鵜呑みにして拡散するのだけはやめてほしいとだけは付け加えておく
超細分化された詳細なマニュアル
映画館で観る予告編以外に予備知識なく、地元の小さい映画館で観ました。(全然混んでません。)
「ハートロッカー」といい、この映画といい、タイトルが個性的。タイトルからは内容がわかりません。
観るまで隕石が激突するとか、宇宙人が襲来するとかそんな事態に際しての地球人の対策対応をリアルに描いたのかと思ってました。
とにかく、ドキュメンタリーのようなリアリティーと緊迫感、緊張感がすごい。
当初は北の将軍様の国にありがちな「かまってちゃん発射」だろうと思い込む人々、そこから安全バイアスもあっての楽観論をぶち破って進展する事態に従い緊迫感が高まっていくのがリアルタイムに近い感覚で迫ってくる。
どこまでリアルなのかはわかりませんが、世界最高の米軍の迎撃システムが成功率60数パーセント、まさに「コイントス」なのが意外だった。
同じ場面が数回繰り返され、場面を共有している人々のそれぞれの視点からの対応が描かれるが、どのシーンなのか、印象的な言葉から分かるようになっているのが上手い。
各人が懸命に役割を果たすなかで、精いっぱいの大事な人たちへ思いがある。焼け石に水かもだけど、それぞれの、人間性むき出しの切羽詰まった行動が切ない。何も知らない相手に電話をかけて、それぞれのお別れをする。小さい規則違反なんかどうでも良いから部屋の外の携帯を取り出して愛する人と最後の会話をする。国防長官の最期には驚いたが、このような事態を許してしまった自分を責めてのこと、または、今後起きうる世間からのバッシングの嵐を予想して悲観した、からなのだろうが、重大な局面での職務への責任を回避したか、もうどうでも良くなったのか、とも思ったりする。
多くの機関と膨大な従事者がいながらパニックにならず、カオス化しないのは、あらゆる機関と部署全体で共有する、細分化された詳細なマニュアルがあるから。
まず、フローチャート式で誰でも使いやすい。人々は当てはまるところに書かれた指示に従って専門家が指定した最適な仕事をするのみ、個人がどうすべきか迷ったり決断を求められる余白がないので極めて効率が良い。
葛藤はほぼ皆無、無駄な争いも起きず、力関係で決まることもない。
その中で、唯一、自らの意思で決断を下さなければいけないのが、アメリカ大統領。
(決定するのはただ一人だけというのも大変理にかなっている。)
声だけでなかなか登場しなかったので、「どう見てもとらんぷ」な人なんだろうと思っていたら違った。
人類史上、最も重い決断を迫られる大統領は、自分の不運を呪っているが職務を果たそうとする。でもおろおろと迷うばかり。
常に重そうな黒バッグを持って大統領の側で控えている軍人は、こういう事態になった場合、大統領に事態とマニュアルの説明をするためだけの特別任務だとは。こんな人まで配置するアメリカの国防組織の緻密さに恐れ入った。カバンの中にはあの有名な核発射ボタンとキーも入っているんでしょう。
しかしこれだと大統領より落ち着いている黒カバン氏の意思が全世界の行く末を決めてしまうことになりかねませんね。
てかむしろ、新聞読むだけマシ、な大統領一般なので、大統領の決定の体にして黒カバン氏のアドバイス=軍のスペシャリストの意思を通す仕様な気もする。
ラストは賛否あるでしょうが、私はあれで良かったと思う。
単に尺の問題はあるが、結果まで描くとしたらどこまでやればいいかということになるし、SFチックになってしまって、そこまで着々と築いてきた、ドキュメンタリーのようなリアリティで描かれた緊張感張り詰める世界が、テイストが一変して崩れてしまいそうなので。
そもそもキャスリン・ビグロー監督は、起承転結のあるストーリーを撮ったわけではなく、人類の危機の始まりから着弾までの20分にも足りない時間を切り取って、危機が刻々と迫るシチュエーションそのものと、その場その時にうごめく人々のありさまを見せたかったのではと思う。飛び抜けた主役がいない群像劇なのも、多分そこからきていると思う。
アメリカの国防組織の厚みと緻密さを目の当たりにして驚きの連続だった。
あのようなマニュアルがあることだけでなく、最先端の武器、装備、機材などのモノはいうまでもなく、ソフト面でも、あらゆる事態を想定し計算し、人の生理や心理、行動様式も考慮に入れて最短最善の効果が上がるように幾重にも手当てが施されているのが驚異的。
さすが世界一の軍事大国
その様を多くの人に見せることが、実はこの映画の裏テーマだったかも。
核は一発撃たれたら世界は終わりだと実感しました。
我々、まさに「ダイナマイト🧨の家」で辛うじて生きている、いつ突然終わるか分からない危機に、ずっと直面し続けているわけです。
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