「期待度○鑑賞後の満足度○ 「核だらけの世界」答えは我々一人一人が考えるシュミレーション映画」ハウス・オブ・ダイナマイト モーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
期待度○鑑賞後の満足度○ 「核だらけの世界」答えは我々一人一人が考えるシュミレーション映画
①原因(どこの国から、どういう意図で)は明かにせず、と結果(果たしてシカゴに着弾したのか不発弾にはならなかったのか)は明確に描かず、その間の数十分間のアメリカ国防に携わるトップから実務者らの対応と苦悩・恐怖、それぞれの家族愛等とを視点を変えて描いているのが構成として面白い。
一方、視点を分散して描いていることでやや散漫な印象を与えていることは否めない。
②或る意味、日本の『沈黙の艦隊』と対極にあるような作品で両国の違いが面白い。
③ロシアの大統領が『信用か…』と吐き捨てるように言う台詞があったが、世界(のリーダーや国民)にお互いへの不信・恐怖がある間は「核抑止力」の名義は無くならないのだろうか。
④核抑止論の矛盾 : 抑止力が機能するためには、相手国が核兵器の使用を信じることが不可欠ですが、「実際に核が使われないだろう」という考えもまた「フィクション」であるという、論理的な矛盾。
⑤アメリカにあれほど安全保障機構・対核攻撃予想予防機構があり、それがどう機能・対応していくか克明に描かれているところは本作の魅力(表現が妥当ではないかもしれない)である。
勿論、他の核保有国も同じような組織・対策があるのだろう。
日本は本当にアメリカの「核の傘」に守られているのか、そうであれば核戦争が始まれば日本も核攻撃の対象になるのか、そうでなければ日本も核保有すべきなのか、等思索したいことは日本人として種々あれど、これは映画の評価なのでこれぐらいにしておいて:
問題定義型の映画ではあるがアメリカのみの視点で描かれているのが長所でもあるし欠点でもある。長所なのはそれで焦点が絞れて緊迫感のあるものが出来たと言えるし、短所としては“核抑止論“は本当に人類にとって正しい選択なのかどうかという今まで何作も作られている問題提起作の枠に留まっていて、時代を越えて残る作品になるかどうか。
⑥キャサリン・ビグローの演出は安定して上手い。女性監督であることからイメージされる(これもバイアスが掛かっているというかジェンダー偏見と見られるかな?)柔らかいタッチではなくてあくまでも冷徹な視点がこの人の演出カラーだろう。
⑦自分がイドリス・エルバ(好演)ら演ずる大統領の立場になったらどういう選択をするかを考えてみるのもある意味本作鑑賞の意味があるかも知れない。
⑧ジョナ・ハウアー=キングは『リトルマーメイド』の後どこ行ったのかしら、と思っていたら結構大きな役で本作に出演していて驚いたというか嬉しかったね。もうちょいふっくらしていた方がハンサムに見えるけど。アウシュヴィッツで囚人番号を彫る囚人を演じたTVドラマも観てみたいな。
グレタ・リーはヒロイン役よりもこういう役の方が良いようだ。
