オール・オブ・ユーのレビュー・感想・評価
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久々に日本で観られるイモージェン・プーツ主演の新作
英国出身36歳のイモージェン・プーツ、大好きな女優だが日本ではあまり人気がないのだろうか。キャスト陣のトップか2番手、3番手にクレジットされた近年の映画のうち相当数が、本邦では劇場未公開で円盤か配信のみ、あるいは配信すらされないまま。今年になりようやく本作「オール・オブ・ユー」がApple TV+で、そして来月には「ヘッダ」がAmazon Prime Videoでサブスク視聴可能になる。
「オール・オブ・ユー」はSF設定を添えた大人の恋愛ドラマと言えるだろうか。科学的なテストで真のソウルメイト(運命の相手)を見つける民間企業のサービスが普及した近未来のロンドン。大学時代から親友の2人、サイモン(ブレット・ゴールドスタイン)がテスト否定派なのに対しローラ(プーツ)は肯定派で、たくわえのないローラはサイモンに費用を出してもらって受診し、マッチングされた別の男性ルーカスと結婚する。サイモンはローラへの秘めた愛情をくすぶらせたまま別の女性と付き合ったりするも、うまくいかない。その後もサイモンは臨月のローラを車で病院に運ぶなど折に触れ彼女を支えるが、ある日の出来事をきっかけに2人の関係は大きく変わる。
ソウルメイトを見つけるテストは、昨今のマッチングアプリの延長上にありそうなハイテクだ。プライバシーや倫理の問題はいったん置いて空想すると、個人のDNA分析がこの先カジュアルになれば、膨大な数のパートナーたちをサンプルにして、交際/結婚が続いた期間や幸福度などと両者のDNAの相関関係をビッグデータ化したうえで、世界中の候補者からDNAの相性が最も良い(=幸福になる確率が最も高い)相手をAIが特定して紹介するようなサービスが実現するかもしれない。
とはいえ、本作におけるSF要素はこのテストのみで、それを除けば過去の恋愛ストーリーで無数に描かれたであろう、「男女間の友情は長続きするか」「家族への愛があるのに別の誰かにも愛情を抱いたらどうするか」といった永遠の難問をめぐり、主人公2人は幸福と不幸の時間を行き来する。
俳優陣も製作陣もほぼ英国人で固めたイギリス映画で、ジョークのセンスや恋愛観、倫理観がやはり日本人とは違うなと感じる部分もあるが、メイン2人の繊細な演技は見応えがあって退屈させない。つらい片想いであったり、別れた相手への想いを長くひきずった経験がある人なら、どこかしら共感できるポイントがあるのではないかと思う。
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