劇場公開日 2025年9月5日

「ゴダールの死の前日」シナリオ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 ゴダールの死の前日

2025年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ゴダール最後の映画であり、彼の死の前日の様子も映されている貴重な作品だ。前半は自身の過去作などを引用しながらの難しいことを描く内容と、後半のゴダールが最後の映画の構想をカメラの前で説明するドキュメンタリーのような場面(これが死の前日)で構成されている。
死ぬ
前日まで映画の構想を考えているということに驚く。本当にこの人の人生は映画なのだ。その後半、自分の人生の反芻みたいなものはなくて、ひたすらに映画の構想の話しかしていない。
前半にはゴダールの過去作『はなればなれに』から、拳銃で撃ち合うシーンが引用されているのだが、ゴダール監督の長年の制作パートナーだったファブリス・アラーニョ氏と黒沢清のトークショーで、このシーンはゴダールの死の前日に挿入するようにという指示があったらしい。この映画でアンナ・カリーナが演じた「オディール」はゴダール監督の母親の名前だという言及もあった。
自らの人生と死をも作品にしてしまうこの異様な手つき。正体不明の迫力を持った作品だった。

杉本穂高