配信開始日 2025年7月2日

「社会情勢に触れなくても見せ切る技術の高さ」ヘッド・オブ・ステイト 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 社会情勢に触れなくても見せ切る技術の高さ

2025年7月27日
iPhoneアプリから投稿

米英の大統領と首相を主役に据えながら、
今日の社会情勢や現実の政治問題には、
一切触れないという大胆な設定にもかかわらず、

観客を引き込み、最終的には大いに満足させる。

このアプローチは一見すると無責任にも映るかもしれないが、
その答えは、シナリオと演出のずば抜けた技術に集約される。

政治的な駆け引きや国際関係の複雑さを背景にしつつも、
それらを深刻なものとしてではなく、
むしろ軽妙なユーモアの源として、
エンタメとして昇華させている。

具体的に挙げていこう。

時間経過の端折り方等、
初期のトム・ティクバ、ガイ・リッチーのよう。

トマト祭りのシークエンスは圧巻、
大規模の魅せ方も素晴らしいが、
細かな所にトマトをへばりかせたり、
鎌とハンマー等、

大スケールとセコい設定の、
絶妙なバランスで、
ストーリーやアクションに説得力を持たせる技術も高い。

両首脳のキャラ、
敵の無慈悲さ非道さ、
端的にテンポよく描写するのもいい。

豪華さから一転、
ベラルーシ以降の臭い立つような、
シナリオ、演出のアイデアも豊富、

グダニスクの秘密場所も、
システマティックと、
ゲリラ感が混在、

戦争の犬たち風の、
ガトリング銃?
グレネードランチャー?
もいい、

エンタメ俳優出身米国大統領の、
【本物の映画】のイメージは、
ウェス・アンダーソンと、
ポン・ジュノの作品という設定も笑える。

蛇足軒妖瀬布