「事件に張られた伏線ガン無視で終わるし、何よりハングルが読めないと面白さは激減する映画」殺人配信 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
事件に張られた伏線ガン無視で終わるし、何よりハングルが読めないと面白さは激減する映画
2025.9.29 字幕 MOVIX京都
2025年の韓国映画(91分、G)
事件解決系の配信者がとある失踪事件解決に向けて動く様子を描いたスリラー映画
監督&脚本はチェ・ジャンホ
原題は『스트리밍』は「ストリーミング」という意味で、ストリーミングは「ダウンロード即時配信システムのネットコンテンツ」のこと
物語の舞台は、韓国のソウル
犯罪分析&追跡系のライブ配信を行なっているウサン(カン・ハヌル)は、難解な事件を独自のプロファイリングで解決する配信者だった
現在のソウルでは、被害者の衣服の一部を切り取るというシグネチャー(サインとか特徴的なもの)を残す犯罪が続いていた
その犯人を名指しで批判をした配信者のメリー(パク・ヨンソン)は、犯人らしき男からの誹謗中傷を受けて自殺し、さらに5人目の被害者ハン・ジウ(イ・サンミ)も出てしまう
ウサンはこの一連の事件に着目し、新人配信者のマチルダ(ハ・ソユン)と組んで、FBIが行なっているとされている「犯行状況を演技で再現する」というコンテンツを作ることになった
ライブ配信で被害者が顔を出していたクラブに向かい、そこでマチルダと合流して犯罪が行われた様子を再現するのだが、ウサンの番組なのにマチルダは自分の推理を展開し始める
困惑するウサンだったが、視聴者の反応は歴然で、ウサンのファンはマチルダの番組へと移ってしまう
そこでウサンはファンに焚き付けられて、マチルダとの再コラボをすることになったのだが、彼女は音信不通の失踪状態になっていたのである
映画は、配信番組を観ているようなテイストで作られていて、ネットコンテンツにありがちな「ハイセンスなアイキャッチ」「謎の企業CM」などが展開されていた
リアルとコンテンツの境界線がほとんどない作品なのだが、事件全般のカラクリはさほどインパクトのあるものではなかった
結局のところ、マチルダの失踪は彼のストーカーとされたジンソン(ハギョン)のチャット仲間「KJ5385(ハ・ヒョンス)と」の自演であることがわかる
そして、この一連の配信に見切りをつけた助手のヒュンシク(リュ・ヨンソク)は途中で去り、ジンソンがピンチヒッターとしてアシスタントを務めていく
さらにこの男が実は、という感じに展開していくのだが、ぶっちゃけ結構早い段階で彼が犯人であることはわかってしまう
投げ銭欲しさに過激なコンテンツを作るというのは今でもあるもので、いわゆる「迷惑系YouTuber」などもこれの代表例のようなものとなっている
映画に登場する配信者は「基本全員が迷惑系」といっても差し支えがなく、その中でも「人間的に最も最低なのがウサン」というふうに印象付けられている
謎解きも「ヒントのオンパレード」となっていて、素人プロファイリングでサクサクと事件が解明されていく
緊張感もさほどなく、謎に関しても幼稚なものばかりだった
自身のコンテンツを成長させるためにインフルエンサーと組むというのはありふれたもので、ウサンはマチルダの一連の騒動に見事に嵌められていて、連続殺人鬼にたどり着くまでが実に長いという印象があった
わずか91分の内容でも、中身がスッカスカだと時間が経つのが遅かったりする
結局のところ、配信番組は音声情報よりも文字情報の方が大切な部分もあるので、そこを工夫して、質の高いものを作った方が良いのだろう
映画館よりは「配信されたらスマホで観る映画」という感覚があるし、映画が展開している間にも様々な文字情報に面白みがあると思うので、ハングルがわかる人向けの映画なのかな、と思った
いずれにせよ、事件には犯人探しに向かう謎解きと、犯行動機などを抉っていく人間ドラマの部分が大事なのだが、本作はその両方があまりにも軽くて脱力してしまう
マチルダとKJ5385のやらせ誘拐もアレだが、唐突に助手が離脱して、マチルダのストーカーが助手になってしまうのもご都合主義以外の何者でもない
服の一部を切り取るのも「ウサンに取り上げられたいから」という意味不明な理由だし、ともかく「有名になりたいので、そのためにはなんでもする人」しか出てこない映画だった
また、絵作りの部分で「配信番組をリアタイで観ている」というテイストで作っていくのだが、悪ノリ(一応は関連性のある企業CM)などが突如入ったり、コンテンツのロゴみたいな映像が意味不明なタイミングで入ったりしていた
このあたりは韓国の配信あるあるだと思うので、それ以外にも文字情報から得られるあるあるなどを拾うためには「ハングルが読めることが前提」の作風になっている
ある程度はセリフで説明するし、無理やり字幕をつけたりするのだが、「画面から発見する」というのが配信の面白みであると思うので、そこに参加できない人ほど評価が厳しくなるのかな、と感じた
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