「人里離れた村で村人がぐるになっておぞましいことを展開する映画は実は定番 古いなあとは感じる(1990年代を舞台にした2007年製作の映画)」盲山 Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)
人里離れた村で村人がぐるになっておぞましいことを展開する映画は実は定番 古いなあとは感じる(1990年代を舞台にした2007年製作の映画)
有名タレントも参加したことで名を馳せた某宗教団体主催の合同結婚式にて結婚した ある日本人女性のその後についての報道を読んだことがあります。彼女は教祖が選んだ相手と結婚して韓国の農村に移り住んだのですが、その土地になじめず、夫のDVもあって、結局は夫を殺害、韓国にて服役中とのことでした。まあこの人の場合は、厳しい言い方になりますが、自業自得の面もあったように思われます。あと、この宗教団体は韓国農村部の嫁不足という社会問題を利用(悪用)しているように見え(合同結婚式では多数の日本人女性を韓国農村部の男性たちと結婚させたそうな)、そのビジネス感覚の鋭さには呆れ返るばかりです。
さて、1990年代を舞台にしたこの映画では、ある中国人女性(大卒で当時としてはそこそこのインテリ)が詐欺で騙されて人身売買され、山間部の農村に住む冴えない四十男と強制的に結婚させられます。彼女は何回も逃亡しようとしますが、そのたびに連れ戻されます…… 村人の大部分は彼女が逃げ出すのを阻止する方向に動きますから、逃亡に成功するはずがありません。
村には彼女のように騙されて村の男の妻になった女性も何人かいるようで、村長以下、警察を含めた村の組織はこのことには黙認状態を続けています。国は一人っ子政策を進めてきましたが、男尊女卑のこの社会には恐ろしい闇があるようで、彼女に勉強を教えにもらいに来ている小学生は男の子ばかりで、女の子の姿があまり見当たりません。自然の摂理に抗うようなことをした結果、こういった禁断の方法に手を出さざるを得なくなった人間の愚かさには溜め息しか出てきません。
タイトルに挙げましたが、こういった人里離れた村でおぞましいことが起きる映画というのはけっこうありました。でも21世紀の現代を舞台にするのは難しそうです。だって、そんな過去の因習に囚われた村自体が絶滅危惧種になっているからです。
最初に挙げた日本の有名タレントが参加した合同結婚式は1990年代の始めでした。この映画の舞台も1990年代です。主人公の女性に勉強を教えてもらっていた村の小学生の男の子たちは今や働き盛りの40代。彼らは恐らく少なくとも親よりは高い学歴を身につけ、あの村には残らず都市部で生活している者がほとんどだと思います。よって花嫁人身売買ビジネスも需要がないので成り立たなくなっているのではないでしょうか。この映画は2007年製作とのこと。その当時なら10年ほど前にあった事件を告発するということで意味はあったでしょうが、今となってはこれで社会問題を論ずるのはピントがズレてるような気がします。
今の中国の社会問題で大きいのは急速に進む少子高齢化でしょう(一時期、一人っ子政策をとっていたこともあり、急激な速度で進みます)。あと、この2-30年間の急激な経済成長によって生まれた歪みをどうしてゆくか、という問題もあるかもしれません。まあ、このあたりのことは日本人は経験済みですからね。お手並みを拝見させていただきたく存じます。
あ、映画のレビューでしたね。既視感はあったけどそれなりに面白かったし、2007年の時点で1990年代を振り返っているという資料的価値もあるように思えたので合格点でしょうか。