ワン・バトル・アフター・アナザーのレビュー・感想・評価
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バカバカしい笑いにこそ意味がある。
ダメプリオがハマり役で、驚いた。
イケメン俳優だと古い評価はアップデートしなくてはならないな。
政治メッセージのあるテーマだと少し肩肘はって見ていた。時折バカバカしいシーンがあり、長いんだからカットしろよなんておもっていた。
それは間違っていた、この作品はこのバカバカしさがテーマなのだ。うすっぺらなそのシーンこそがこの映画のテーマなんだと。皮肉の入ったスパイシーな作品である。
正直よくわかんなかったけど、ショーン・ペンはよかった
私の反省は口ばかりのため、結局「また来週でいいか…」を繰り返し、その結果ちょっと気になっていても結局観に行かないまま上映が終了してしまった作品が数本という体たらくなこの2ヶ月間。本作も危うくそうなりかけたのですが一念発起し、最寄りの映画館での上映最終日の最終回、ド平日の21:35~スタートにギリギリ駆け込んでの鑑賞となりました。そしてこの日は仕事の関係でいつもより朝が早かったので、眠気対策のために「眠眠打破」よりさらに不味い「強強打破」を煽り、いつもより気合を入れて本作に臨んだのです。
目にする度にどんどんジャック・ニコルソンに寄っていくレオナルド・ディカプリオですが、実際に動いているのを見ると「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(02年)の頃から何ら変わらない、あのどんな悪さをしても悪態をついても憎み切れない愛嬌は健在でした。
そしてショーン・ペン。覚えやすい名前と顔立ちで印象に残りやすい割に、その出演作に印象深いものは個人的にはあまりないのですが、しばらく見ない間にえらい老けてて軽くショックです。これは「ユニバーサル・ソルジャー2」(99年)を当時劇場で鑑賞した際にジャン=クロード・ヴァン・ダムのもみあげに白髪が混じっているのを見た時のショックに近い物がありました(いま改めて見ると光の加減で白髪に見えていただけの気もしますが…)と、それはともかく本作でのショーン・ペンの怪演。色欲に溺れ、職務柄の能力が高い故により質の悪い粘着気質を見せるその姿に爆笑です。ショーン・ペンに対してはどことなくスカした風で常に格好つけているような鼻持ちならない印象を抱いていたものですから、こんなアホで格好悪い役を全力で演じている姿にとても好感を抱きましたし、そのインパクトは本作においてディカプリオを凌いでいました。私はこれまでのショーン・ペンの演技を把握している訳ではないのですが、本作においてもディカプリオはその魅力を十分に発揮していたと思うのです。ですがその魅力はディカプリオがこれまでの出演作でも魅せてきたものですので、従来とは違った一面を魅せてきたショーン・ペンの方が、私にとってはより印象に残ったのです。
そんな従来通りの魅力満載のディカプリオに頭は排外主義だけど下半身は博愛主義なショーン・ペン。その他にも魅力的なキャラクターが続々と登場し、それを演じる役者の魅力を十二分に引き出している本作…………だが私は眠った。しかも評判のいいクライマックスのカーチェイスで眠った。気付いたら娘が車道の横に突っ伏して追跡者に銃を向けている。車道にはクラッシュしたとわかる車が2台…。どうしてこのような状況になったのかがてんでわからない。これは痛恨である。ウトウトがはじまった頃、ショーン・ペンが雇った有色人種なのが残念な仕事人(クリスマスの会評)が変な武装集団に娘を引き渡した後、踵を返してその武装集団を襲撃した理由もわからないのですが、しかし私にとってこの映画はそもそもよくわからなかったのです。
物語の軸になっているのは父子の絆の物語なのであろう。育ての父であるディカプリオと血縁上の父のショーン・ペンとが娘を巡って争奪戦を繰り広げているのです。ようやく娘に辿りついたディカプリオに娘が言い放つセリフはその構図だけで胸に迫るものがあるのですが、その後に2つ、3つのセリフで父子のハグにつながるのが疑問です。ディカプリオが娘を愛しているのは明白です。それはよくわかります。子供が生まれるとわかるや否や革命ごっこなんかやっている場合じゃないという意識の切り替えの早さは娘の母親が出産後も子供のためにという意識になれなかった事と対比されて明確です。しかし娘の方はどうなのだろうか?娘からしたら人里離れたアバラ小屋での不自由な貧乏暮らしで今時スマフォも持たせてくれない。その代わり変な装置を常に携帯させられて、空手教室には通わせてくれるが、これも娘がやりたがって通いはじめたのかはわからない。世の子供の習い事の大半が親の意思で通わせはじめる様に護身用として最初は無理矢理に通わせはじめただけかもしれない。そして娘の交流関係が広がるのを嫌がり、娘の友達さえも邪険にし、常に葉っぱで軽くラリっているような父親が迎えに来たところで、構えた銃の引き金を引くだけなのでは?…というのはまぁ冗談にしても、父と離れ離れになった娘が父を恋しがっていた印象が全くなく、気に掛けるのは自分の母がどんな人だったのか?という事だけという感じだったので、この父子が無事にハグできた心境がよくわからないのである。
そして今回のディカプリオは元テロリストの爆弾魔である訳ですが、別にテロリズムが肯定的に描かれているわけではないのです。テロ集団のリーダーである娘の母親(ディカプリオの恋人)が『排外主義者、資本家、中絶反対論者どもなんか〇ソ喰らえ』みたいな事をのたまい暴れまわる冒頭ですが、そんなご立派な大義を掲げる割には押し入った銀行の黒人警備員を些細な事で、でも偶発的にではなく明確な意思を持って銃殺し、警察に取り押さえられると、いとも簡単に仲間の居所をゲロるのです。子供の事でディカプリオと言い合いになるシーンで映る彼女の実家らしき家の立派さを見るに結構裕福な家庭の出身のようですが、中絶反対論者の施設だかに爆弾を仕掛け、犯行予告の電話までしているのですから彼女の思想的には子供をおろすのも全然アリなのだと思うのです。しかし子供が出来たら自分たちの活動がどうなるのかなんて1ミリも考えていない様子で、お腹に子供を宿しても仲間とハイになってマシンガンを乱射する姿が描かれます。そうして生むだけ生んだ後で子供より私を見てほしいとかいうモノローグが入るあたり、彼女ののたまう大義に対する信念がいかに薄っぺらいかがよくわかる作りなのです。そしてそれはディカプリオの役にしてもそうです。彼が爆弾を作って彼女の活動に協力するのも単純に意中の女性と一緒にいて、彼女の気を惹くことだけが目的だったのです。なので子供が出来たと知るや否やテロ活動(大義)からなんてさっさと足を洗って子供のために暮らそうと言い出すのです。さらに彼は一応排外主義に反旗を翻して活動していたわけですが、娘の友達に対しては「怪物ども」と吐き捨て、排他的な態度を見せます。まぁ肌の色の問題と学校でなんとなく浮いてそうなグループという問題は別物なので、もしかしたら矛盾はないのかも知れませんが、どちらにしろ私にはこれらの描写を見るに「先進国に生まれたくせにご立派な大義を掲げて暴力革命だとか言ってる連中なんてこんなもんだよ」という監督の皮肉にしか見えなかったのです。しかしそれならばこの映画のオチで娘が嬉々としてテロ活動に出かけ、ディカプリオもそれを微笑んで見送るというラストは一体何なのか?母親は甘ったれのお嬢さんが承認欲求と破壊衝動を満たすために活動してただけだけど、娘は貧乏暮らしで純粋に活動している“立派”なテロリストっていう事なのでしょうか?
そして一方で彼らと対峙する白人至上主義者たちも「未だに白人至上主義なんて信奉できるおめでたい奴らなんてこんなもんだよ」といわんばかりにステレオタイプ的な滑稽さに溢れています。こういう物語に登場する思想信条や各種組織のいずれにも肩入れせずに俯瞰して見せていくという表現があるのはわかるのですが、それを俯瞰して見せられてこちらは何を汲み取ればいいのかはいまいち私にはわかりませんでした。それに“俯瞰”と言ってもディカプリオが可愛すぎなので、どうしてもディカプリオに視線を合わせようとしてしまうのですが、しかしディカプリオ自身が自分の過去のテロ活動をどう思っているのかがよくわからないのです。16年間娘に不自由を強いながら人目を忍ぶような生活をし、いつ自分たちの正体がバレるのかヒヤヒヤしながら常に葉っぱでラリっているのも自分の過去の活動に起因するのですが、そこら辺への心情がよくわかりません。ただ先に記したように娘が活動をはじめた事に対して反対の様子もないので、あまり過去については後悔はないのかな?と、結局ディカプリオにも肩入れしきれないまま、この映画の何を見て楽しめばいいのかよくわからなかったのです……まぁ眠ったんですけどね!
特に何を言わんとする作品でなくても“ありのまま”を表現されると何故か感動するという感覚があります。ですのでもしかしたら現在のアメリカという国に漂う雰囲気を理解している人から見るとこの作品は「そうそう、これこれ」という感動に溢れているのかもしれません。しかし残念ながら私には今のアメリカに対する理解はいくつかの創作物と報道の切れ端から垣間見た程度のものですので、その手の楽しみ方も見出せませんでした。まぁ一つそれらしい事といえば、女性は命がけで子供を出産するのだから生めば“母親”になれるけど男は一生懸命子供に尽くさないと“父親”とは認めてもらえないよ!って事だったのかもしれませんね!「男はつらいよ」なんて時代錯誤なフレーズが頭をよぎり、それにしても強強打破は不味かったのに効かなかったなぁ~と苦い思いで鑑賞終了です。
予算200億円の超大作
❶相性:上。
➋時代:特定されないが、16年前:2004年前後と、現在:トランプ政権下の2020年前後と推定。
❸舞台:カリフォルニア:聖域都市バクタン・クロス(Baktan Cross、架空)、サンデェゴ、テキサス、メキシコ国境。
❹主な登場人物
①“ゲットー”・パット・カルフーン / “ロケット・マン” / ボブ・ファーガソン(レオナルド・ディカプリオ、50歳):
主人公。極左革命グループ「フレンチ75」のメンバー。爆発物の専門家“ロケット・マン”として権力との闘争に挑む。グループのリーダー的存在で過激なパーフィディアと親しくなり、ひとり娘シャーリーンをもうけるが、パーフィディアが逮捕され仲間を裏切ったため、グループは壊滅する。16年後、夢破れたパットはボブに、シャーリーンはウィラに改名し、共にバクタン・クロスで暮らしていた。ボブはアルコールと薬物依存で精神的にも脆くなっていた。そんな親子にロックジョーの魔の手が迫る。ボブは昔の仲間たちに協力を求め、奔走する。
★薬で気が抜けていたり、パスワードを思い出せない等のダメ要素がある一方、娘を助けるためには、命がけになる。そんな父親を演じたレオナルド・ディカプリオに親近感が沸く。
②スティーブン・J・ロックジョー大佐(ショーン・ペン、64歳):
カリフォルニアの移民収容所の指揮官。フレンチ75の活動を粛清するため追跡・逮捕・殺害を指示する。パーフィリアと関係を持つ。16年後、革命組織を検挙した功により表彰され大佐に昇進し、米国安全保障機関の大立者となる。白人至上主義の秘密結社「クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ」に入会するが、クラブでは異人種間の肉体関係を厳しく禁じているため、混血の娘ウィラがDNAテストで実子であることが分かり消そうとするが失敗し、クラブ側に処分される。
★変態軍人を怪演するショーン・ペンが天晴れ。
③セルヒオ・セント・カルロス(センセイ)(ベニチオ・デル・トロ、57歳):
ウィラに空手を教える先生で、移民コミュニティの支援者。フレンチ75の元メンバー。ボブとウィラを守るためリーダーシップを発揮する。
★いかなる危機にも冷静に対処し信頼を勝ち取るベニチオ・デル・トロが儲け役。
④ウィラ・ファーガソン / シャーリーン(チェイス・インフィニティ、24歳):
パットとパーフィディアの娘。16 歳になり、父親が作った“危険から守るためのルール”の中で成長している。近所の道場でセンセイから空手を習い中級者レベルになっている。その後、実の父がロックジョーと判明し、ロックジョーに襲撃されるがデアンドラに救われ、修道院に匿われる。その中で母パーフィリアの裏切りなどの真実を知り、自分のアイデンティティと向き合う。
⑤パーフィディア・ビバリーヒルズ(テヤナ・テイラー、34歳)
「フレンチ75」のメンバーの有色人女性。ボブの同志で妻となる。グループのリーダー的存在。「武力革命が唯一の方法」と信じて実行部隊として果敢に行動する。ロックジョーを性的・政治的・心理的に挑発し、それがロックジョーの執着と復讐心を煽る。娘シャーリーンを産むが、革命の道を優先させ、ボブとシャーリーンを捨てる。銀行強盗の失敗で逮捕されるが、ロックジョーに情報を与えることで刑務所行きを回避する。その後メキシコへ逃亡。終盤には娘への手紙を残すなど、かつての行動を反省し、自分なりの希望を見せる。
⑥デアンドラ(レジーナ・ホール、54歳)
「フレンチ75」のメンバー。ボブとパーフィリアの古くからの同志であり、ウィラを守ろうとする革命活動の中で情に厚い“母性的/支え役”的な存在として機能する。ウィラが襲撃を受けた際救出し修道院へ送り届ける。
⑦ティム・スミス(ジョン・フーゲナッカー):白人至上主義の秘密結社「クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ」に暗殺者として雇われる。ウィラとロックジョーを追い詰める。
⑧その他
ⓐ「フレンチ75」のメンバー:メイ・ウエスト(アラナ・ハイム)、ラレド(ウッド・ハリス)、ジャングル・プッシー(シェイナ・マクヘイル)、コムラッド・ジョシュ(ダン・カリトン)、タリーランド(ディジョン・ドゥエナス)、ハワード・サマーヴィル / “ビリー・ゴート” / “グリンゴ・コヨーテ”(ポール・グリムスタッド)。
ⓑ白人至上主義の秘密結社「クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ」のメンバー:ヴァージル・スロックモートン(トニー・ゴールドウィン)、サンディ・アーヴァイン(ジム・ダウニー)、ロイ・ムーア(ケヴィン・タイ)、ビル・デズモンド(D・W・モフェット)。
ⓒアヴァンティQ(エリック・シュヴァイク):ウィラの処分”を命じられるが、ウィラの人間性に触れて心が揺れ、命を賭してウィラを守る方向に動く。
ⓓダンヴァース(ジェームズ・レターマン):スティーブンの副官。
ⓔミニー(スターレッタ・デュポア):パーフィディアの祖母。
❺要旨
①16年前の極左革命グループ「フレンチ75」の活動から幕が開く。アメリカとメキシコの国境でフレンチ75は、捕えられた難民や移民を解放する、政治家を脅迫する、銀行を襲撃する等々の反権力闘争を繰り広げていた。その中にペルフィディアとパットがいた。
②ペルフィディアが、彼女に性的関心を持つロックジョーに逮捕される。ロックジョーは、仲間の情報を教えれば保護すると提案し、乗ったパーフィディアは情報を明かしてロックジョーと性的関係を結んだ後、メキシコに逃亡する。
③ロックジョーは情報を基にメンバーを次々と射殺や逮捕や逃亡に追い込む。
④パットはパーフィディアとの間に生まれた赤ん坊シャーリーンと共に身を隠す。
④16年後、カリフォルニアの聖域都市バクタン・クロスで暮らすパットは、ボブ・ファーガソンと名乗り、アルコールと薬物依存の情けない中年親父になっている。娘のウィラは聡明で快活な高校生に育っている。
⑤ロックジョーは、革命組織を検挙した功により表彰され大佐に昇進し、米国安全保障機関の大立者となっていた。
⑥ロックジョーは、白人至上主義の秘密結社「クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ」に入会するが、クラブでは異人種間の肉体関係を厳しく禁じている。
⑦ボブとウィラの居所を突き止めたロックジョーは2人を逮捕しようとする。ウィラの空手の師センセイの尽力によ
り、ウィラは、かっての同志デアンドラによって修道院に匿われるが、ボブは逮捕される。
⑧センセイはボブを脱獄させ、ウィラのいる修道院に運ぶ。
⑨ロックジョーは、ウィラのDNをテスト結果、自分の子であることが分かる。そのことが秘密結社に知られるとやばいので、彼女を消そうとする。
⑩ボブとウィラは協力してロックジョーを倒す。実際にロックジョーを倒したのはウィラであり、ボブの行動は空回りに終わった。
★見せ場がなかったレオ(笑)。
⑪死んだかに見えたロックジョーは瀕死ながら生還して秘密結社に迎えられる。しかし、彼は毒ガスで殺され、焼却される。
⑫帰宅したボブとウィラ。ボブはウィラにパーフィディアからの希望の手紙を渡す。もはや娘の将来を案じることのないボブは、オークランドの抗議運動に参加しに行くウィラを快く見送る。
★映画一巻の終わりでございます。まずはお楽しみ様でした(笑)。
❻考察
①26歳の若さで長編監督デビューをした1970年生れのポール・トーマス・アンダーソン(PTA)の作風は、
ⓐ初期(20歳代)は、ダイナミックなカメラワークと、ロバート・アルトマン式群像劇による混沌とした人間模様。
ⓑ中期(30歳代以降)は、人物を内省的なアプローチで掘り下げ、テーマを追求する。
ⓒ共通的には、登場人物の不器用性と、セリフ・映像・音楽を組み合わせた感情の追求、そして権威的は男性像、等に特徴があった。
ⓓ奇想天外で度肝を抜かれるものもあり、『マグノリア(1999)』で、カエルの大群が空から降ってくるシーンは今でも記憶に新しい。
②『リコリス・ピザ(2021)』から3年振りとなる本作は、原題の「戦いに次ぐ戦い」の通り、スピーディで、ハイテンションで、クレイジーで、荒唐無稽な出来事が次々と展開する。
③描かれるのは、白人至上主義の秘密結社「クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ」が陰で支配するアメリカ政府と、それに反対してレジスタンス活動を行う過激派革命組織「フレンチ75」との闘い。「暴力には暴力を」の世界である。
❼まとめ
①予算200億円の超大作なので、ヴィジュアル面での迫力ある見所が満載である。
②荒っぽい話だが、文句なしに楽しめる。多くの人が死ぬのは頂けないが、反面教師となっている。
③トランプ政権下の今のアメリカを批判する政治的メッセージが読み取れた。描かれた世界には同意出来ないが、観客に対し、「こんな世界にならないように皆さんが責任を持って行動して欲しい」との期待が込められていると感じた。
❽トリビア1:『アルジェの戦い(1966伊・アルジェリア)』
①ボブが自宅で『アルジェの戦い』を観ているシーンがある。彼のお気に入りの作品のようだ。
②『アルジェの戦い』は、フランスの支配下にあったアルジェリアで1954年から1957年にかけて首都アルジェで起きた事件を、脚本フランコ・ソリナス、監督ジロ・ポンテコルヴォにより、アルジェリア市民8万人の協力を得てドキュメンタリータッチで描いたもので、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞している。当時現地入りしていたフランス代表団が反発し、フランソワ・トリュフォーを除く全員が会場を退席したという逸話が残されている。
③フランス政府はベテランのマシュー将軍の指揮する空挺部隊をアルジェに送って鎮圧しようとする。その方法は、市内に数多くの検問所を設け厳しく取締まり、抜き打ち的に民家やアパートを襲って強制逮捕し、拷問で情報を吐き出させるというもの。口を割らない者は容赦なく殺された。その結果、レジスタンス組織は壊滅する。
④マシュー将軍の方法が、本作のロックジョーの方法と酷似している。成果をあげたロックジョーは表彰され大佐に昇進し、米国安全保障機関の大立者となるのだ。
⑤『アルジェの戦い』では、「フランスはアルジェの戦いには勝ったが、アルジェリア戦争には負けた」ことを示唆して終わる。
➒トリビア2:メキシコとアメリカの壁(出典:Wikipedia、globe.asahi.com)
①本作には、頑丈で長く高い壁が登場する。「メキシコとアメリカの壁」である。
②アメリカとメキシコの国境は、全長3,145kmに及ぶが、その内、1,100㎞以上に高さ4~9mの壁が設置されている。
★有名な「ベルリンの壁」は全長155Km、高さ約3〜4m。この壁は1989年11月に崩壊し、大部分が取り壊されたが、一部が保存され観光名所になっている。私は1996年に見学した。
③メキシコからアメリカへの密輸や密入国を防ぐことを目的としたこの壁は、トランプ氏以前の1990年に建設が始まり、今なお増強が続いている。
④トランプ氏は2016年の大統領選で、不法移民対策としてメキシコ国境に壁を建設することを公約したが、予算や議会の反対等で計画通りは進んでいない。
★その後も壁は世界で増え続けている。
❿トリビア3:アダム・ソムナー(出典:Wikipedia英語版)
①クレジットの最後に「For Adam」と出る。2024/11ガンのため57歳で亡くなったアダム・ソムナーへの献辞である。
②アダムはイギリス系アメリカ人の助監督兼映画プロデューサーで、ポール・トーマス・アンダーソの盟友であり長年にわたる協力者だった。他にもマーティン・スコセッシ、スティーヴン・スピルバーグ、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、ポール・トーマス・アンダーソン、リドリー・スコット等と仕事をしたことで知られている。
ひっさびさの濃厚な映画体験。
攫われた娘を取り返すだけなんだけど、3時間弱はあっという間。
すっかりジャックニコルソンの面影を感じさせる冴えないレオをはじめセンセイっぽいことを言うデルトロ、歪んだ性癖に目覚めるショーンペンが繰り広げる体当たり感満載のカーチェイス、スラング、思い出せない暗号など面白さは枚挙にいとまがない。あの当時のマッチョでホットなハリウッドを彷彿とさせる作品。
この作品のメッセージはラストのラストに。決してエビローグとしての蛇足感を感じさせないエンディングだった。
自由とは何か。
革命とは何か。
戦いとは何か。
エンディングロールでポエトリーリーディングの名曲「Revolution Will Not Be Televised」がかかることに、グッとくる。
うるさくておもろい
PTAPTAってレビューに書いてるから、めちゃくちゃポリコレ意識されたほのぼの系かな?と思ったら全然違いました
初PTA作品、とにかくうるさくて良かったです
劇伴が主役みたいに響くシーンが印象的で、キャラクターも変な奴ばっかで、各所に飽きさせない主張の強さがある。
特に最初は音楽のノリに合わせて、とんでもないスピードで話が進むので飽きずに見られました
移民問題、革命組織のテロ、白人秘密結社など時代性を捉えたモチーフを多く扱う割に、家族愛主題で誤魔化しているようにも思えましたが、その分笑えたのでやむなし🍐🫧🦀
長いのにずーっと面白かった。
ゼアウィルビーブラッドの印象が強くて、難しい内容が長く続くのかと思ったら全く違った。
162分、全く飽きずに楽しんで観ることができた。軽快なトーンの劇伴が作品のテンポを良くしている。
さまざまな立場な人の視点に移って常に何かが起こっているし、主人公とその娘を軍が追う緊張感があるし、ずーっと絶え間なく展開が変わって、すごく良かった。
革命から足を洗い、堕落してしまったレオ様を待ち受けたのは、あの長ったらしい暗号や迷宮みたいな通路など、クソ面倒くさいやり取り。この辺、視聴者と立場を同じくしているから「なんでこんな面倒くさいことを俺はやってたんだ!!」と感じることができて笑えてくる。
実のところレオ様は迎えに行っただけでほぼなんにもやってないんだよな。色んな人間が色んな思いで世界が動いてるんだろうなぁと思わされる出来事だった。
いや本当面白い。
タヤナ・テイラーの美尻🍑
中年でもカッコいいディカプリオ
次から次へ、世代から世代へ
何が面白いのか、言語化するのが難しい作品だけどかなり面白かった。系統としてはパルプフィクションに似て、なんかよくわかんねぇけどめちゃくちゃ面白いぞという感じ。ただ、黒人差別とその是正のために立ち上がる人々(あるいはその渦中で生きている人々)という大きな主題があって、一辺倒にエンターテイメントな映画で収まっていない。
面白かった一番の要因を考えると、まずテンポの良さが上がった。大きく2章に分けられる映画だと思うが、タイトルが示すように次へ、さらに次へ展開がポンポン進んでいく。密度濃く、飽きはない。大きな事件から大きな事件へ、運命が終息していきながら予想を裏切る展開も織り込み、気づいたら映画が終わっていたという感じだった。
それらの物語を引き立てる登場人物もまた魅力的だった。人間味、野性味溢れる登場人物たちがそれぞれの信条やら欲望やらではちゃめちゃに物語を掻き回していくのだが、破綻せず映画を通して一つの核があった。なにより主人公であるお父さんのキャラクターが素晴らしい。ダメ親父で、彼がいることで話の筋が進んだりするわけでもないのだけど、この主観だからこそ生まれた面白さで主題を重苦しくもさせない。ほとんど失敗ばかりで肝心なところでも役に立たない。お調子者で酒浸りの中年親父。だが、それでいい。ジェットコースターのような展開のめまぐるしさを先頭に座って全ての風を受けきっている感じがした。
そしてまた次の戦いへ。でも、その世代は次へ渡されているというのもいい終わりだった。
自分だと速攻で退場するキャラだろうなI’d probably be the kind of character who gets taken out immediately.
この映画を観るまで
「聖域都市」なる言葉を知らなかった。
不法移民、不法な状態になった外国人などを
保護する都市のことを指すらしい。
北米などに実在する。
レオナルドディカプリオ演じる主人公たちは
若かりし頃
革命家を名乗り、これら不法移民を助けたり、
気に入らない政治家に対して爆弾を爆発させたりする。
普通に暮らす人々は、この映画にとっては
ただの背景、NPCにすぎない。
物語を彩るのは
イカレタ革命家同士から娘が出来て
今は元革命家になった父親とその娘や
今なお、革命家を名乗る現役のメンバー、
元革命家のせいで目覚めてしまった変態の警察官、
KKKを思わせる白人至上主義のイカレタ連中
など、多くの普通の人からはかけ離れた人たち。
ただ、これがフィクションかと言われると、
全くの荒唐無稽な話とは言えないんだろうな
という迫力はある。
一般市民風になった娘と暮らす元革命家だったが
イカレタ革命家だった過去が追いかけてくる。
法を破って「イェーイ!」なんてことをしたことない身からすると
全く理解できないし、1mmも共感できないが
現実世界のある意味断片なのは理解した。
地続きの国境がある国の実態としては
なかなかの地獄だなと感じた。
Until I watched this film, I’d never heard the term “sanctuary city.”
Apparently, it refers to a city that protects undocumented immigrants or foreigners living in illegal circumstances — and such cities actually exist in North America.
The characters led by Leonardo DiCaprio were once self-proclaimed revolutionaries who helped illegal immigrants and bombed politicians they didn’t like.
Ordinary people in this movie are nothing more than background — mere NPCs.
The story is colored by an eccentric mix of people:
a former revolutionary and his daughter, born from two insane radicals;
current members still clinging to the revolutionary cause;
a deranged cop awakened by the former revolutionary’s past;
and a group of white supremacists reminiscent of the KKK —
all far removed from anything resembling normal society.
Yet despite how fictional it seems, there’s a certain intensity that makes it feel not entirely implausible.
The ex-revolutionary now lives quietly with his daughter, who appears to be an ordinary citizen — but his deranged past comes back to haunt him.
As someone who’s never once broken the law and shouted “Yeah!” about it, I couldn’t relate in the slightest — not even a millimeter.
But I could still understand that this film reflects a fragment of the real world.
It made me realize just how hellish life can be in countries with continuous land borders.
秩序と血をめぐる闘いを目撃せよ
ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、単なるアクション大作ではない。
革命家の娘ウィラと、体制の守護者ロックジョー警視(ショーン・ペン)という二人を軸に、「血」「秩序」「信仰」「科学」――四つの力が交錯する巨大な寓話として立ち上がる。
ロックジョーは原語ではColonel=大佐だが、日本語版では「警視」と訳される。
それは彼が軍人ではなく、制度そのものの化身だからだ。
彼の所属する「連邦安定軍団」は軍と警察の境界にある治安機構であり、彼は“秩序を信じる者”として、反体制組織French 75を追い詰める。
だがDNA鑑定によって、ウィラが自分の娘だと判明した瞬間、その秩序は崩壊を始める。
修道院の聖堂で、祈りの光の中で行われる私的なDNA検査――科学が真実を暴き、信仰が沈黙する。
この短い場面に、PTA監督の倫理的主題が凝縮されている。
一方、日本公開版では、最後の「55号室」での死が象徴的に処理されている。
ロックジョーは査問で許され、「純化室55」に導かれ、安堵の笑みを浮かべたまま毒ガスで息絶える。
ガスと焼却という冷徹な手順は、ナチのホロコーストを想起させる。
一方、米欧版では処刑の全工程が官僚的に描かれ、“国家による暴力のルーチン化”がさらに明確になる。
つまり、日本版は「寓話としての死」、国際版は「制度の現実」としての死を描く。
どちらも共通しているのは、「純血の神話」が自らを焼き尽くすという構図だ。
本作の見どころは、この二重構造の精緻さにある。
表面上はスリラーや逃亡劇として楽しめるが、底流には「真実を知ることは救いになるのか」という問いが流れている。
科学が信仰を置き換え、DNAという“神”が人間を選別する――
その不気味な未来像を、監督は現代の映像言語で冷ややかに提示する。
さらに、レオナルド・ディカプリオ演じるボブ(ウィラの育ての父)の存在が、“血ではなく行為で父となる”というもう一つの倫理を示す。
戦いは一度きりでは終わらない。
タイトル “One Battle After Another” が示すように、制度と個人、血と選択、暴力と救済の戦いは、形を変えて繰り返される。
ウィラが最後に発する共通のコールサイン――それは「旧体制の言語」を継承しながら、新しい戦いを始める合図だ。
観るべきは、ガス室や銃撃ではなく、制度に取り込まれる人間のまなざしである。
PTAはそこに、21世紀のホロコースト=“情報と遺伝の時代の粛清”を映し出した。
重厚で、痛ましく、しかしどこか静謐な映画。
観終えたあと、あなたの中にも一つの問いが残るだろう。
――私たちは、どちらの側の扉を開けているのか。
面白かった
革命家の善、悪
色んなシチュエーション入り混じり飽きないアクション!
いやーよかった!時間が短く感じた。
まさかの渋滞で冒頭10分見逃し、革命家時代の話がすっ飛んだけど、ディカプリオに尻揉まれたあとショーンペンといたすところくらいからみれたので話は大体繋がった。
ザザコルダで気になったベニチオ続けてみられてすっかりファンに。冷静に珍妙な行動取るセンセイ役がピッタリ!かっこよかったー
レオ様も思えば最近全て当たり役、フラワームーンやハリウッドすごくよかったし私が一番好きなインセプションもよく考えたらレオ様だ。ダメ男役が最近すっかり定着してしまったがそんな中では元英雄としてそこそこカッコ良さも披露するシーンが。。なかったな。
生まれて16年間ずっと謎の機械を持たされ携帯を禁止されパラノイドな父に耐えてきた娘が漸く状況を知り、本当の父かもしれない人に命を狙われ、母が裏切り者だと暴露され、でも持ち前の空手精神と技で悪に立ち向かい逃走する、かっこよすぎ!
そして悪の組織がKKKならぬ白人至上主義団体、そこに入ろうとする軍曹が黒人女性好きで証拠隠滅をはかる、革命軍のフレンチなんとか、は過去の英雄を讃えながらずっと大昔からのマニュアルの暗号を頑なに守り続けて活動している。変えなくていいの?笑
最後、逆転で娘が暗号に頼ってそれを(ラリって覚えられない)パパプリオがもういいんだ、と投げ捨てるのがついにこの日々も終わり。。な感じで良かった、が本当に終わるのかな?少なくとも親娘はロックジョーは車の中で死んだと思っているはずだけど、母と再会する第二弾とか面白そう。
よくわからなかったのが、DNA結果。親子なら線が出る、その線がわからなかったけどでたことになってたの。。??ハテナ。
あとカーチェイスは、逃げてるのは娘だけでクリスマス会のおっさんは別に追っかけてる訳ではなかったのかな?それともみんな消せというオーダーだったっけ?パパも前の2台に娘がいるかわからないながらとりあえず追っかけていただけ?いずれにせよ娘ちゃんの車の止め方すごかった!
感動(T ^ T)✨
面白かった〜♡♡長いけど見れる!
途中でお手洗い行っちゃって予告の車から飛び降りるシーン見れなかったのは残念でした!💦私が悪い笑笑
パパとウィラが会うのは感動しましたあ😭😭✨
本当のパパが警官だったのは最後の最後まで信じたくなかったです、、でもそんなの関係ないですもんね!
洋画はあまり見ないのですがすごいハラハラしてでも時々クスッと笑っちゃって最後は涙が、、楽しかったなあ♡
是非見てくださいね〜!!!
現代社会への静かな反抗
『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、革命運動と現代社会の対立を軸に、個人と国家、理想と現実の狭間で揺れる人間の姿を鋭く描いた社会派ドラマである。かつて革命に身を投じた男が、成長した娘との断絶を埋めるために再び闘争の只中へと戻る。その物語は、政治的闘争の外側にある、父と娘という家族の絆の再生のドラマとしても深い余韻を残す。
本作が興味深いのは、革命の精神が世代を超えて受け継がれる過程を通じて、理想主義の限界と現代社会のシステム的暴力を対比している点だ。監視社会の中で薄れていく“個”の意志、そして体制に組み込まれることで失われる“闘う理由”を、登場人物たちの葛藤を通じて浮き彫りにする。
さらに、舞台となる現代アメリカの政治的現実(中絶法や社会的分断といった問題群)が、物語全体に風刺的な陰影を与えている。理想と暴力、親子の愛と政治的信念が交錯するその構造は、単なる社会派映画の枠を超え、「革命とは何か」「家族とは何か」という根源的な問いを観る者に突きつける。
トランプ政権の妄想を挫く痛快作
観賞してからレビューまで随分と経ってしまったので思い出せる限り脳内で再生。
トマスピンチョンの作品がベースになっているとのこと。
古き良きWASPというか何だったらKKKの様なハイパー右派と爆弾を使った極左活動を各地で行うフレンチ75という団体の抗争を描いたエンタメ作品
登場人物はいずれもアクが強すぎて好みが分かれそう
ディカプリオはダイエットにも成功したようで前半は久々に格好いい登場だが、中盤以降はウルフ・オブ・ウォールストリートの様なダメ中年爆裂状態
だが本作では娘を救うためだけにあらゆる格好悪さを超越して奮闘しており、とても共感できる
テーマとしては白人対有色人種、男性対女性という二項対立がわかりやすく、特に白人男性側の異常さが際立っていて、形勢不利なマイノリティ側による勧善懲悪なるかという話の展開である
ストーリーに加えて画面の色彩や構図、アクションの観せ方がこれまでに観たことのない驚きに満ちており、映画ファンならぜひ観賞をおすすめしたい
特に終盤のカーチェイスは前評判通り見ものである
この作品が今公開されるということは、一期目のトランプ政権を皮肉るために脚本が練られバイデン政権下で撮影、編集になっていると思われるが、予想外に二期目が始まってしまいフィクションが現実に追い抜かれている様なところもありそうである
タイトルの意味は最後に判明
現在のアメリカ政権はこんな極左を頭の中に勝手にイメージして毎日妄言を振り撒き世界から苦笑を買っているのだろう
早く真っ当な世界に戻して欲しい
ビミョーだな
割と好意的な評の人がいるけど、何か話がとっ散らかっていて、単なるアクションものでも無いしかと言って余韻が残る考えさせられる話とも言い難い。
アメリカに密入国したいメキシコ人たちとそれを食い物にする連中…白人至上主義者達の醜さ、おぞましさ。ベニチオ・デル・トロ扮する空手(忍術?)の道場主は「センセイ」と日本語で呼ばれているのが可笑しかった(道場に貼られているポスターが、何故かカタカナで表記された日本版のスーパーマンとか)。トランプ政権下でのあるある話が随所に感じられて、如何に現状のアメリカが混沌としているのかが垣間見られる。
とは言え映画的には160分!も必要だったかなぁ?最近やたら長い作品が多いけど、もう少し絞り込めた気がするけどね。
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