劇場公開日 2025年10月3日

「「極上のエンターテインメントとテーマ性の見事な融合」」ワン・バトル・アフター・アナザー かなさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 「極上のエンターテインメントとテーマ性の見事な融合」

2025年11月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

興奮

ドキドキ

 戦いが次々続く。まさに冒頭から「ワン・バトル・アフター・アナザー」である。
移民排斥で抑留されている人々を「フレンチ75」という革命家集団が救出するところからバトルとチェイスが始まる。ただこの映画の根底におかれている移民排斥と異人種差別のテーマは揺るぎなくラストに続く核心となっていて単なるアクション映画ではない、

 冒頭「フレンチ75」のバトルシーンで、ボブ(レオナルド・ディカプリオ)が「俺は何をやればいいの」と戸惑っている姿がコミカルであり、ベルフィディア(テヤナ・テイラー)が抑留所の責任者ロックジョー(ショーン・ペン)に屈辱的な仕打ちをするシーンは変態的でエロチックでありコミカルでもある。しかしロックジョーの復讐心をかきたててしまう。

 ベルフィディアとボブは恋に落ちベルフィディアは妊娠する。ただベルフィディアは黒人で、ボブは白人という設定が重要なポイントになる。ベルフィディアがほぼ臨月でお腹がパンパンなのにマシンガンをぶっ放す姿はまさに革命家だ。娘が産まれてもベルフィディアの生き様からボブと娘を捨て革命家の道に進む。しかしベルフィディアはロックジョーに捕らえられ仲間を売ることになる。

 ボブと娘ウィラ(チェイス・インフィニティ)は名前と土地も変え隠れるように暮らしていく。ボブは過保護的にウィラを溺愛している。ウィラが高校生になったときロックジョーはあることから再度執着心たぎらせ、ボブとウィラを探し出し捕えようとする。ここから逃げる、逃げる、逃げるシーンの連続。ボブは家が襲われ逃げ惑う、追う警察、このチェイスがすごいスピードで撮られている。車で逃げる途中、ウィラの空手の先生(ベニチオ・デル・トロ)が別の顔を持っていて、ボブの逃走を助ける。中年のさえないオヤジになっているボブは走って逃げても仲間の最後尾、段差に足をかけて飛び越える、ビルの間を飛ぶが飛び越えられず警察に捕まるという、レオナルド・ディカプリオのコミカルな演技が絶妙だ。ウィラも逃げたが結局ロックジョーに捕らえられる。そこであることが判明する。捕まったボブは仲間に救われウィラ救出に向かう。

 ボブはひたすらウィラを探す。先生も協力してくれ二人でウィラを探す。ここから二転三転するアクションとカーチェースと効果音の入れ方が絶妙で見ごたえ充分。捕らえられたウィラの戦いはさすがに革命家の母の血を受ついでいる勇敢さを見せつける。ボブの懸命な追っかけ。ウィラとボブとロックジョー、そして謎の会の車の起伏ある坂を利用したカーチェースはぞくぞくするほど興奮度MAXだ。そしてラストは・・・ウィラがラストシーンで見せる行動はさすが革命家女性戦士の血がたぎっている姿にうなずくだけだ。

 登場人物のキャラクターの設定のうまさ、バトル、チェイス、変態チック、エロチック、コミカル、スピード、音、スリリングなカーチェース、血、家族愛。一本の映画にこれらの要素がてんこ盛りになっていた。しかもレオナルド・ディカプリオ、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロ、オスカー俳優3人の共演もさすがに魅力的で、他の俳優の演技も見事であり、エンターテインメントとして見る者を酔わせた。

 さすがのポール・トーマス・アンダーソン。脚本を書き、製作も担当し撮影し監督している。彼の頭の中にあることをストーリーにし、彼が望むカメラのフレームに映像をしっかりと収め、俳優に効果的な演出をして、迫力と魅力を兼ね備え、しかも移民排斥、異人種差別が現在アメリカにも存在するというテーマ性を最後まで訴求し続けた映画作家に讃歌を送りたい。まさに映画とともに戦いに次ぐ戦いに圧倒された2時間42分であった。

かな
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