「タランティーノ作品を進化させてみたが、無駄な会話だけは入れなかった、という感じ」ワン・バトル・アフター・アナザー 60代の男ですさんの映画レビュー(感想・評価)
タランティーノ作品を進化させてみたが、無駄な会話だけは入れなかった、という感じ
[60代男です]
ディカプリオ主演作と言うこと以外、内容をまったく知らない状態で鑑賞した。
物凄くエネルギッシュな作品だ。
強いて言うならタランティーノ作品に似ている。が、無駄な会話はない。
はじまりが、いきなり銃を手にしたゲリラかギャングか分からない数人の戦闘員が、軍か警察の施設を襲撃している場面なのだが、誰が何の目的で行動しているのか分からない。
タランティーノ作品のような本筋と関係ない登場人物たちの過剰な無駄話などなく、それどころか説明的な会話すらないので、この話がどこへ向かっているのかも、後半になるまで分からなかった。
本作は映画ファン向けで、多くの作品を観てきた人ほど、見惚れさせる。
分かりやすさを心掛けていないので、映画鑑賞初心者には、入り込みにくく感じさせる。
こういう映画の序盤は、普通、主人公や今現在の状況を説明する、面白くもおかしくもない日常生活の描写から始まるのがパターンで、たとえオープニングだけはアクションの見せ場から始まったとしても、そのあとに退屈な日常描写が用意されている。
どうしても序盤はそうなっている。そういうものだ。
しかし本作にはそういった日常描写が、まったくない。
物語の進行に関係ないシーンがないのだ。
強いてあげるなら、時間が16年とんで主人公の娘が成長したのを表す、空手の型の稽古をしているシーンが唯一の例外くらい。
ここまで日常生活の描写がない作品は初めてかもしれない。
サスペンス映画の構成は、基本的にこうだ。
物語が動く、登場人物が落ち着かない、撮影と編集も緊張感と躍動感があるシーンが見せ場としてあり、その間をつなぐように、観客の気持ちを落ち着かせるように、または時間つぶしのように、落ち着いた映像で、登場人物たちがたいして意味もない会話をするシーンがある。
ところが本作には、見せ場をつなぐ、その落ち着かせるシーンがない。
物語が動く、緊張感と躍動感のあるシーンだけを取り出してつなげたような構成なのだ。
2時間半以上あるというのに!
けっこうお金もかかっている。
主人公が必要があって、市街地の、違法な人たちがたむろする場所など、さまざまなところへ行くのだが、どこへ行ってもいろんな人たちがいろんな状況にいるのが背景として描かれているのも凄い。
脇役とすら呼べないモブキャラたちをいちいち配置して動かすのに、どれだけ手間とお金をかけるのだろう。
話の展開に必要なわけでもないのに、この監督の、映画に深みを与えるためのこだわり、その情熱がすごい。
主演のレオナルド・ディカプリオは、良い俳優だとあらためて思った。
ショーン・ペンが、いままで見たことがない彼史上最低の、情けない変態軍人の役で、これが印象に残る。
ベニチオ・デル・トロだけは、いつも通りのベニチオ・デル・トロで、頼りになるいい男の役だ。
主人公の娘役チェイス・インフィニティと、変態革命家の女性役テヤナ・テイラー、2人とも初めて見る役者だったが、しっかり記憶に刻み付けられた。
面白かった。
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