「作家としてのチャレンジと、娯楽性を両立させた作品」ワン・バトル・アフター・アナザー moviebuffさんの映画レビュー(感想・評価)
作家としてのチャレンジと、娯楽性を両立させた作品
1.43:1IMAXで鑑賞。結論を言うと、万人向けとまでは言わないが、コーエン兄弟の映画、70年代のフレンチコネクションのようなアクション、ニューシネマを楽しめる人なら面白いだろう。つまりストーリーはユニークなのだが、要素はとても伝統的なアメリカ映画だと言える。
あと、タランティーノのデスプルーフ(あれもカーアクションだったな)やイングロリアスバスターズのように、ファンとしてその作家を追いかけ続けていると、作家の大きな飛躍の瞬間に立ち会える事がたまにあるが、ポール・トーマス・アンダーソンにとっても、ゼアウィルビーブラッド、マスター以来の大きな飛躍と言える作品。正確に言えば、リコリスピザ後半の本筋に関係ない謎にスリリングなトラックの運転アクションシーンは今作への伏線だったとも言える。
いや、相変わらずちゃんとPTA印の変な登場人物達と笑い(わかりやすいのは全然暗号わからなくて相手罵りだすところとか、ほとんどパンチドランクラブのサンドラーとホフマンのノリだしw)も挟み込まれてるんだけど、ストーリーのスケールがでかい。ほとんど初めてなのに、普通にアクションも上手い。ぎこちない所もない。あと、後半のカーチェイスのアイデアもなんだか見た事無いw展開で面白い。またフルサイズのIMAXでしか味わえない、あのアスペクト比ならではの面白い絵がかなりあった。
正直途中から物語にのめり込んで演出を分析してる暇もなかったが、彼の過去作と撮影がかなり違う印象。初期作品でのスコセッシ的なスムーズなカメラ移動、「ゼアウィルビーブラッド、マスター」期のキューブリックを思わせるような引きの絵などがあまり使われていないように思った。客観性より登場人物の感情を優先したカメラになっている(クローズアップが多い)気がした。つまり、明らかにいままでのPTA印と感じるような絵を避けているように思った。
ひょっとしたら、これはノーランがダークナイト以降IMAXカメラにしてからの変化と同じく、ビスタビジョンの為に特別なカメラを使っていたことも関係しているのかもしれない。ここらへん、もう一度見て確かめたいな。
また、ストーリーのほうだが、なんでこの作品の脚本を数年前に書けたんだという預言的内容。アメリカ人にはこの現在進行形な世界観は、よりささるだろう。
個人的には、昔のロバートアルトマンでスコセッシなPTAを懐かしくも思うが、彼はもう作家として自分の映画文法を確立したということなのだろう。
ストーリーや演技、撮影、音楽、相変わらず彼らしいこだわりを感じる見どころの多い作品で、また見直したいなと思う。ひょっとしたら次作はまたこじんまりとしたいつものPTA作品かもしれないが、実はスピルバーグファンでもある彼の事だし、私はもう一作ぐらい娯楽大作を彼の作風で見て見たいなと思った。是非またチャレンジしてほしい。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。
