「そつなく、なぜか心に残らない物騒なホームドラマ」ワン・バトル・アフター・アナザー かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
そつなく、なぜか心に残らない物騒なホームドラマ
ボブが娘を取り戻すためにいくつものバトルを繰り返すような解説あるが、違うじゃん。
ストーリーが多層になっていて、元革命家で今は冴えない親父ボブの、最愛の娘ウィラが狙われ連れ去られる。狙っているのは高名で、実は変態警察官のロック・ジョー、彼女を狙う理由は、実の娘なら消す必要があるから。常に持ち歩いているケースは何だろうと思ったらDNA鑑定キットで笑ってしまった。なぜそんなことをするかと言えば、「クリスマスの冒険者たち」という白人至上主義者の秘密結社のメンバーになりたいから。お尻のセクシーなカリスマ黒人女性革命家に恋して執着しているクセに。入会資格のひとつに「黒人と交わったことがない」というのがあって、もちろんない、と答えたがもしウィラが実の娘なら露見したら入会できなくなる。そして、ボブ親子が、革命家時代のボブたちがメキシコからの不法移民の受け皿にしていた北の町に潜伏しているのを突き止める。なぜそんな町の存在が黙認されているかと言えば、例の秘密結社の重鎮のビジネスには大量の安い労働力が必要だから。そんな事情を知らないロック・ジョーは、件の重鎮の工場を「不法移民を使って麻薬製造している疑いがあるので摘発する」とボブ親子の狩りに警察を投入するための口実に使って秘密結社の怒りを買う。ついでにロック・ジョーが黒人との間に子供がいることも分かってしまい、刺客が放たれる。
ボブは何故娘が狙われたのか全然わからないがとにかく娘を取り戻すのに躍起になり、ロック・ジョーも自分が刺客に追われているなど夢にも思っていないのでひたすらウィラを狙う。加えて、なぞの武道家のセンセイも、とばっちりで地下でやってる移民支援組織絡みの別のバトルに参戦。
狙うものと狙われるもの助けるものが輪唱のように幾重にも錯綜し、別のバトルが突然こっちに乱入して混然一体となるカオスなシチュエーション。当事者はほぼ全員なんでこんなことになっているのかワケも分からずとりあえずその場を乗り切ったものの勝ち。
多重バトルの交点にいるのは、一人のカリスマ女性革命家、ウィラの母であるベルフィデイア。
仲間を売って生き延びて、行方知れず。
もしかしたら地球のどこかでまた多重バトルの始祖になっているかも。
結局のところこの映画は、元革命家一家の、物騒なホームドラマだったよう。
ロック・ジョーがなぜ自分を狙うのか知ったウィラ、その上実の父は自分を消そうとする。ショックは計り知れないが、ひたすら自分を愛してがむしゃらに取り戻そうとした今のパパがいれば、すべてはどうでもいいよう。ママからの手紙に自分の出自が書かれていなくてほっとしたのでは。愛するパパが傷つかずにすんだから。
それはもしかすると、闘争の権化のような母からの、父娘への小さい思いやりだったかも。
ウィラの、修羅場での冷静な判断力、キレの良い頭脳、高い身体能力など、明らかに母の血ですね。
革命家が国内に10数年も潜伏できるほど組織化された「革命組織」が新人スタッフを採用したりして存続できることや、警察を私物化できてしまうこと、いまだ白人至上主義者の秘密結社が闇の力を持っていること、移民の管理が意外と適当にできること(金と権力次第)、など、アメリカ社会の闇がたっぷり。この国は、根っこは今だ前近代的なままのよう。
あのような現職大統領がいる国であることに、大変納得がいきました。
元革命家は今やヤクでラリッて合言葉を思い出せない落ちぶれよう、泣きながら焦りながらイラつきながら、なりふり構わず必死に食い下がる父親、1ミリもかっこ良くないポンコツ親父なレオくんの演技力が素晴らしい。
ベニシオ・デル・トロは、相変わらず目が死んでいて(誉めてます)何考えているのか分からないけどめっちゃ頼りになる「センセイ」がこの人にしかできないハマりよう。涼しい顔で助けに現れる、サイコー! 死んだ目が魅力で美点な俳優って他にいません。
そして、ショーン・ペン、本作は、実はこの人の映画だったのでは。
権力欲と性欲が異様に強い変態警察官が大変似合っており、もはや地なのでは、とすら思わせる。妙にムキムキなのがストイックそうでさらに不気味。
ベルフィディアへの執着半端ないにもかかわらず白人至上主義秘密結社に入りたいのは権力者の一角に食い込みたい野心ゆえ。結局、権力者たちに手のひらで転がされていただけなのが哀れ。
これといった欠点なく、出演者も豪華で適材適所、ストーリーも盛り沢山、3時間をダレずに飽きずに観たのになぜか心に残らない。面白かったかと言えば、はて??と思ってしまう。
感性の相性の問題なんでしょうか。
ピアノの不協和音が画面にマッチして、音楽もとても良かったのに。
そつがないんですよね。
共感&コメントありがとうございます。
後半のストーリーキルビルまんまですからねー。センセイが技を発揮しないのもそれっぽい、身体検査される時の動きに噴き出しそうでした。
素晴らしいご回答ありがとうございます😊
マジ 誰も 空白の1分 教えてくれないので 大変助かりましたGOOD👍 サンキューベリマッチでございます。たったの1分程度なので 戦闘してるわけないし
そういう理屈 描写ですね 頭がスッキリしました。🤩🤩🤩組織力がすごいとはいえ
私のオシッコより レオ様の脱獄的なのが早いとはビックリ‼️でした。席に戻ったら デルトロさんと再会してるし・・・えっ さっきまで レオ様這いつくばってボコボコじゃ・・・
白人の極悪な秘密結社に入りたいのに 女性の好みが違う というのも 歪んだ愛で❤️ビックリ‼️です。
誠にありがとうございます。頭の雲☁️が晴れました☀️。
アンダーソン監督も「映画の神様が味方してくれた」って言ってました😆あのシーンがなかったら…映画としての格は下がってしまったかも知れません。それほど重要なシーンでしたよね。
目が死んでるデル・トロwわかるwww
改めて、よろしくお願いします🙏
嬉しかったのは、じゃじゃ馬億万長者!子供の頃だったけど覚えてる。
♪わしら代々山育ち鉄砲担いで山歩き、オメェの鉄砲があたるかよ!あんれま当たった石油が湧いた驚いたなぁこりゃ、わしら億万長者だ!
共感ありがとうごさいます。確かにそつのない作りではあるもののこれだけのモチーフをぬけぬけと提示できるとは!
それもA24ではなく5大スタジオですからね。攻めてます。ハリウッド恐るべし。
レビュータイトルも、レビューも本当にそう!と言いたくなるような内容で共感です。
>狙うものと狙われるもの助けるものが輪唱のように幾重にも錯綜し、別のバトルが突然こっちに乱入して混然一体となるカオスなシチュエーション。当事者はほぼ全員なんでこんなことになっているのかワケも分からずとりあえずその場を乗り切ったものの勝ち。
特に↑の表現、上手いです。
精緻なレビューですね。素晴らしい👍イイねありがとうございました。😊
白人至上主義の結社に入りたいのに 他人種に興味は 大いなる矛盾かと思いました。
普通は他人種に興味は 結社に入りたいとは思わない気がします。性欲は誰も立ち入れない根源なので。
屁理屈です。失礼します。
こんばんは〜。共感コメントありがとうございます。
まさしく、「これといった欠点もなく、出演者も豪華で適材適所、スト ーリーも盛り沢山、3時間をダレずに飽きずに観たのに なぜか心に残らない。面白かったかと言えば、はて?? と思ってしまう」
その通りです。
結局相性なんでしょうか。
でも、つまらなくはなかったです
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