「アクション満載の政治サスペンスかと思いきや、中盤以降は顔芸込みの追跡劇になるという落差が面白い一作」ワン・バトル・アフター・アナザー yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
アクション満載の政治サスペンスかと思いきや、中盤以降は顔芸込みの追跡劇になるという落差が面白い一作
美しくも不穏な予告編に心惹かれた人ならば、基本的にはそのまんまの作風なので楽しめること間違いなしの一作。暴力革命を試行する極左テロ集団が跋扈する米国社会という、リアルっぽいんだけど実は荒唐無稽な設定(といっても、本作のテロ組織「フレンチ75」のモデルとなった組織は実在する)なあたり、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024)と同じにおいがするんだけど、実際のところ序盤の襲撃場面の迫力やグループのメンバーの狂いっぷりはかなりのもの。
面白いんだけど一体どこへ行こうとしているのか、と戸惑わせもする物語は、中盤以降はかつてのテロ集団のリーダーが残した一人娘を巡る追跡劇に収斂していき、ようやく筋が見えてきます。そこから先はレオナルド・デュカプリオとショーン・ペンを中心とした癖のある俳優たちの顔芸合戦の様相を呈し始め、特にショーン・ペンは、歩いているだけで笑いがこみあげてくる見事さです。
いかにも連合赤軍な「フレンチ75」が実はどのような思想信条に基づいて、何と戦っているのか、分かりやすいようで実は曖昧だったり(移民排除に反発する割りに政治的主張が抽象的・空想的だったりとか、政府相手に戦っているのは間違いないんだけど、政府そのものに戦いを挑んでいるのか、それとも特定の政府機関を攻撃してるのか、闘争の方向性が分かりにくいない、など)するので、そこで立ち止まっちゃうと作品への緊張感がそがれるかも。政治ドラマ的側面についてはあまり深く考えないことがおすすめ。
アクション場面で緊迫感のある音楽を入れる、という、まあ使い古された手法が随所に登場するんですが、音楽の選択と作劇がかみ合えば、これだけかっこいい映像になるんだということを身をもって証明したポール・トーマス・アンダーソン監督の手腕は見事!
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