劇場公開日 2025年10月3日

「暗号をど忘れし、ビルの谷間を飛び越えられず落っこちるドジなイーサン・ハント?」ワン・バトル・アフター・アナザー かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 暗号をど忘れし、ビルの谷間を飛び越えられず落っこちるドジなイーサン・ハント?

2025年10月4日
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PTA久々の新作と聞いて喜び勇んで劇場に足を運んだのだが、162分という長尺と冗長な展開に瞬間寝落ちすること3回。正直いって周囲が誉めちぎるほどの面白さをあまり感じなかったのである。アメリカがサブカル色に染まった70年代のハッピーなラブ・ロマンスを、前作『リコリス・ピザ』において思い入れタップリに描いていたPTAだが、今回60年代後半に暗躍した左翼テロリストをモデルにしたキャラクターを主人公にしてどんな物語をこさえたのだろうか。

『インヒアレント・ヴァイス』(2014)と同じく、トマス・ピンチョンの原作小説に着想を得た作品らしい。いかんせん『Vineland』が難解すぎてその映画化を断念、そのエッセンスだけを拝借することに留めたと語っていたPTA。Wikipediaによると、“1960年代に青春時代を送った登場人物達が登場する。物語は彼らのフラッシュバックを通して、1960年代の自由な反逆の精神と、それに衝突するリチャード・ニクソン政権下の全体主義的な抑圧と麻薬戦争”について書かれた小説らしい。

本作には、“フレンチ75 ”という架空の共産主義テロリスト集団が登場するのだが、主演のデカプリオによると、ウェザーアンダーグラウンドという1960年代後半に誕生した同組織がモデルになっているそうだ。ベトナム戦争に反対し数々の公共施設爆破事件を引き起こしているWUの創始者ビル・エアーズは、刑務所出所後に何故かイリノイ大学の教授に就任、あのオバマ元大統領とも親交があったと伝えられる超危険人物なのにである。

そんな要注意人物をまんまモデルにしたわけでもなかろうが、伝説の爆弾男ととしておそれられた元革命家ボブを、デカプリオがかなりのズッコケキャラにデフォルメして演じている。そのデカプリオがいうには「この映画には『スターウォーズ』や『ターミネーター2』で描かれているテーマがある。政治的な話題と、大勢の観客が惹きつけられるテーマを融合させてる」そうなのだ。

革命家と◯◯という相容れない特殊な血を引き継いだ少女が、悪党一味に生命を付け狙われ、その父親(代わり)?が少女の生命を救うべく血眼になって行方を追う。つまり、本来は爆弾テロリストとして忌み嫌われるべき男に、既に市民権を勝ち得ている別映画の革命家キャラクターのイメージをかぶせて、あえてその回復を図っているのだ。おそらくデカプリオ演じるボブは、(せんせい=ジェダイマスターからライフル=ライトセーバーを授かった)ダース・ベイダーでもあり(やっすいターミネーターサングラスを着けた)T2でもあったのだろう。

高市早苗が本日自民党総裁の座につき、リベラルパヨク最後の砦といわれた日本も、保守国家へと急速に方向転換していくことがもはや確実視されている。今後ますます世界的に肩身の狭い想いを強いられそうなリベラルパヨクのためにPTAが一肌脱いだ、そう考えるのは少々勘繰りすぎであろうか。過去自分たちがやらかしたヤンチャのせいでその身を隠さざるをえなくなった活動家の皆さんが、もしも移民狩旋風が吹き荒れる現代のアメリカに蘇ったとしたら…そんなSFチックなストーリーも、世界の潮流に逆行しているせいかあまり刺さらないのである。

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かなり悪いオヤジ
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