「闘争そして闘争、あるいは逃亡のち希望」ワン・バトル・アフター・アナザー たまさんの映画レビュー(感想・評価)
闘争そして闘争、あるいは逃亡のち希望
世界三大映画祭受賞者、ポール・トーマス・アンダーソン。
初期作「ハードエイト」で注目、「ブギーナイツ」でオスカーノミネート、「マグノリア」でベルリン金熊賞、「ゼアウィルビーブラッド」でベルリン銀熊賞、その後も精力的に映画を創り続ける。
今作10作目。圧巻の大作。
私は学生時代に「ブギーナイツ」を観て、衝撃を受けた。まだPTAが20代で撮った作品。70年代〜80年代におけるポルノ映画界の栄枯盛衰を背景に、血の繋がりのない家族的人間模様、彼の作品に通底する親子、とりわけ父子関係を軸に描く青年の成長物語。若き才能が現れたと思った。マグノリアではロバート・アルトマンばりの群像劇を描く。ゼア・ウィルビー・ブラッドはアメリカ資本主義の源流、マチズモ、宗教、カルト、またそこに表される親子の物語、破壊破滅衝動。彼の代表作だといえるだろう。
今作は、PTAのアクション映画の傑作。映像の引き出しの多さに驚嘆する。スクリューボールアクション。アメリカポストモダン文学者のトマス・ピンチョン、「ヴァインランド」からインスパイアされたという作品。
体幹強度の高いシナリオ、緩急自在の濃密な演出、一流キャストの演技、IMAX含むフィルムへのこだわりを感じる撮影。
サントラの効果的な使用、などが伝わる。
この作品はPTA作品中、最も映画、映像的に面白いといえるのではないだろうか。作家性が前面にでるPTA監督作の中、エンタメ映画として面白い。
かつて、極左グループの革命家として活動していたボブとカリスマ革命家デアンドラとの娘、と思われていたウィラ
映画はボブ含む極左グループ、フレンチ75が移民収容所を襲撃するアクションシーンから派手にスタートする。
軍人ロックジョーが執拗に追う。陰謀論的極右グループ「クリスマスの冒険者」、三つ巴の闘争劇、逃亡劇が最後まで観るものを掴んで離さない。
落ちぶれた自称革命家ボブ演じるはレオナルド・ディカプリオ。激しいスタントとコミカルな演技を混合させ、秀逸。
必死に闘争、逃亡する演技は時に笑いを誘う。名優になった。
彼と娘を異常な変態的執念で追うショーン・ペン。圧巻の存在感。さすがである。若かりし頃から、すでに演技派であり監督作もある。
ボブを助ける”センセイ"演じるは、これまたオスカー俳優ベニチオ・デル・トロ。飄々とした神出鬼没的な演技に拍手。
セリフも面白い。
革命家たちを演じるレジーナ・ホール、テヤナ・テイラー、
娘のウィラ役チェイス・インフィニティ…鋭い眼差し、力のこもった熱を感じる。テヤナ・テイラーが身籠ったお腹を露わにしながら、銃を打つシーンはインパクトあり。
センセイが「自由とは、恐れないこと、…トム・クルーズみたいに」と車からレオを逃すシーン。面白く自然と笑みがこぼれる。
ラストのカーアクションスタント。見所だろう。
頭にはスティーブ・マックィーンの「ブリット」がよぎった。
こうくるのか、とあっと驚く。チェイス・インフィニティが熱演。
当然賛否はあるだろう。
しかしながら、今作には映画の本当の面白さ、特に今、
以前より弱くなりつつあるとも言われる、ハリウッド映画の
醍醐味がある。
追うもの、追われるもの、闘争、逃亡…
ラストシーンも良い。
来年のオスカーにも絡みそうな印象。
必見作だと思っている。
共感ありがとうございます。
ディカプリオの演技に笑い、ペンにも笑わされ、デルトロにやられました。
確かに、タランティーノ入ってますね。みなさんのおっしゃるよう
チェイスインフィニティ、なかなか可愛らしい俳優さんですね。
エンタメと社会批評的着眼点が絶妙でした。面白かったです。
共感ありがとうございます。
エンタメ全振りって感じでしたね、皆さん御指摘のタランティーノ味も。分断のテーマが重いのでこうやって、また親子ネタを入れたのかな?とちょっと思いました。
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